暖冬と言われながらもそれなりに気温が低い日はある。朝第1回の上映に間に合うために7時台に出発した車の外気表示が-17度を記録。イオンシネマ北見は、日本一寒い場所にある映画館と言っていいだろう(旭川もいい勝負ではあるが)。
そうした厳しい環境の割りに昨年を上回る本数を観ることができた。洋画は超大型のシリーズものが次々に公開され、話題的には久しぶりに活況を呈したように映った。
特に「ジュラシックワールド」は、新しい映画の観方である4DXを広めるのに大いに貢献した。年間興行収入の上位を見ると、ど派手なエンターテインメントとアニメ作品で埋め尽くされている状態だ。
果たして、自分の所感と世間の空気はどの程度合っているのか。それとも致命的に外れているのか。それが分かったからといって、自分の感性を変えることはできないし、変えたいとも思わないが、今年も年に一度のおたのしみを記録する。
1.
「セッション」(5月2日)
厳しさの一線を越えた先の狂気を演じた
J.K.シモンズがオスカーを獲得。寸分のピッチのズレ、テンポの乱れを巡って繰り広げられるスリリングなバトル。鬼教官の猛烈な怒号がスクリーンを飛び出して圧迫してきて息が苦しくなるほどだった。
2.
「キングスマン」(9月20日)
教会での大殺戮に要人たちの打ち上げ花火。想像のはるか斜め上を行く不謹慎を、お堅いイメージの
C.ファースにさせてしまう発想には脱帽するしかない。
3.
「マイインターン」(10月24日)
大作でもない、アニメでもない。しっとりとした秋興行の隙間にうまくはまり込んで、おそらく今年一番のサプライズヒットだったのではないか。R.デ・ニーロがおとぎ話のような完璧高齢者をさわやかに演じた。
4.
「イミテーションゲーム エニグマと天才数学者の秘密」(5月24日)
今年のアカデミー賞レースを争った、天才を描いた2本の作品の一つ。どちらも素晴らしい演技だったが、驚きの事実と報われない晩年という物語の深みの分だけこちらが上回った。
5.
「ミッションインポッシブル ローグネイション」(8月8日)
様々なスパイが駆け巡ったこの1年。他のスパイは俳優の替えが効くかもしれないが、イーサン・ハントを演じられるのは
T.クルーズをおいてほかにない。固定してきたチームの連携も更に充実。
6.
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(4月11日)
よくよく思い返せばけったいな映画ではある。ただ、全篇長回し風の映像や、絶えず鳴り続けるドラムの音など、徹底的に粗削りに挑んだ意欲と勢いは買いだと感じた。
7.
「アントマン」(9月24日)
普通の人間が何かのきっかけでヒーローになる話は多いが、運命ではなく、極めて家庭的な事情からスーツを着る決断をする主人公が興味深い。もちろん極小化したときの、これまでにない目線におけるアクションも素晴らしかった。
8.
「俺物語!!」(11月1日)
鈴木亮平のキャリアに燦然と輝く30kgの増量。能年玲奈以来の要注目株と勝手に認定した
永野芽郁と仙台を舞台にラブコメする。今年いちばん幸せな気分になれた映画だった。
9.
「ピッチパーフェクト」(6月21日)
PENTATONIXの大ブレイクで注目度が増しているアカペラ。そのブームの先鞭を付けたのはおそらく3年前に公開され大ヒットした本作。ちっとも理由が分からないが今頃になって突然の劇場公開。でも映画館で観られてよかった。凸凹キャラが集まるチームのサクセスストーリーは王道である。
10.
「スターウォーズ フォースの覚醒」(12月19日)
そごう横浜に「スターウォーズ展」を観に行ってきた。細かいところに目を向けるほどおもしろみが増してくる。シリーズが再始動し、新しい世界が始まるということで世界中がお祭り騒ぎになってしまう存在の大きさにただただ敬服する。
11.
「博士と彼女のセオリー」(3月14日)
E.レッドメインがホーキング博士を演じてアカデミー主演男優賞を受賞。こちらの天才も波瀾万丈な生涯を送っているが、存命中に然るべき評価を受け、比較的自由に生きていられる分幸せに映る。
12.
「フォックスキャッチャー」(3月2日)
もう代表作が童貞男だとは言わせない。いや、この大富豪も精神が大人に成りきっていない点では通じるところがあるかも。「マネーショート」で豪華俳優陣との競演が控える
S.カレル、やがて転機になった作品と言われることだろう。
13.
「海街diary」(6月13日)
性格が違う美人4姉妹はそれぞれに魅力十分。特に、天然イメージが強い
綾瀬はるかが長女役をしっかりこなしていたのには感心した。ただ、ひとりだけ賞レースで置いてけぼり感のある
夏帆は少しかわいそう。
14.
「ANNIE/アニー」(2月1日)
前向きミュージカルの決定版がリブート。富豪が黒人の
J.フォックスになっていたり、携帯電話会社のオーナーだったり、背景は現代風にアレンジしているものの、基本線は変えようがないから、致命的な失点をしないかぎり楽しめる作品に仕上がるのは必然。
15.
「寄生獣 完結編」(4月29日)
前編に比べるとGW公開ながら地味な興行に終始した印象。最強の敵・後藤との闘いを筆頭に特殊映像技術には目を見張ったが、原作の壁が高過ぎたのだろうか。
16.
「アリスのままで」(9月26日)
必死に抵抗しても老化はやって来る。どう出迎え、付き合っていくかで、本人にも家族にも安寧が訪れる可能性はある。時間とともに進行する病状を演じ切った
J.ムーアが貫録の演技で全体を引き締める。
17.
「イニシエーションラブ」(5月30日)
ラストのどんでん返しといえば「シックスセンス」が真っ先に思い浮かぶが、この手の作品は騙されれば騙されるほど気持ちがいい。各所の感想を見る限り、
堤幸彦監督はかなりの人たちを騙すことに成功したようである。
18.
「アメリカンスナイパー」(3月1日)
ISに代表される中東発のテロの脅威や紛争は、米国が世界の警察という役割を放棄したことに端を発すると評する声がある。しかし、欧米の正義を貫き通そうとする度に、別のところから新しい勢力が台頭してくるのも事実。
C.イーストウッド監督が描く伝説のスナイパーから見えるのは、光と影と、終わらない混沌。
19.
「映画クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃」(4月18日)
シリーズ20年を超えて、これまでで最高の興行収入記録を叩き出した。これは007シリーズにも劣らない勢いだゾ。早くも来年の最新作の話題として、脚本に劇団ひとりが名前を連ねることが発表された。まだまだ攻める。
20.
「ドラフトデイ」(2月13日)
目の前にぶら下がっていたスーパー連覇のチャンスを一瞬で逃してしまった失意の中で鑑賞した架空の物語。シーホークスはもっとドラフトを上手く使って選手を育成しているよ。ただケガ人がなぁ・・・。
21.
「オンザハイウエイ その夜、86分」(7月3日)
道路をひた走る車ということではアウトドアだが、構図としては密室劇。会話だけで物語を進行させる一点アイデア勝負。それにしても、電話で入ってくる情報ってたいてい悪い話と相場が決まっている。携帯の着信音が鳴るとどきっとするね。
22.
「アベンジャーズ/エイジオブウルトロン」(7月4日)
再びのヒーロー集結。2度めだから最初よりは打ち解けるというか、それぞれの個性を理解している感じ。メンバーの描写の質や量に関し偏りなく描いているように受け取れた。でもこのお祭りは、あったとしてあと1回かな。
23.
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(7月25日)
少しでも採掘できるものがある鉱脈は何度でも掘り返される。思うような成果が得られなければ少し違う場所から掘ってみる。
A.シュワルツェネッガーが大復活した最新作は「2」の正当な続篇と言われているらしい。
24.
「プリデスティネーション」(3月7日)
E.ホークはSFに合うよなーと思うのは、いまだに「ガタカ」の印象が強いからか。映画としては小粒であるが、タイムトラベルを精巧に練った脚本で最後まで一気に引っ張る。
25.
「007 スペクター」(12月23日)
D.クレイグで新たな頂点を極めたボンドも一つの区切りを迎える。それにしても、最近はダブルオー部隊が毎回存続の危機に晒される設定となっており、情報戦を制する争いこそが世界の最先端だということを実感する。
26.
「ナイトクローラー」(9月22日)
もともと濃ゆい顔の
J.ギレンホールの眼が窪んで狂気を増している。多かれ少なかれ、境界を踏み越えたりあいまいにしたりする誘惑は誰の近くにも存在する。
27.
「暗殺教室」(3月29日)
日本テレビ土曜21時のノリに近いものを感じるが、対象層を的確に見極めた娯楽作品に仕上がっている。来年3月には続篇公開、
二宮和也は実写でも登場するようだ。
28.
「コードネームU.N.C.L.E.」(12月15日)
米ソ代表どちらも頼りになるし、おしゃれでかっこいい。間に挟まれたら女性冥利に尽きるというもの。選べない、というより選ばないことが懸命であろう。
29.
「脳内ポイズンベリー」(5月17日)
気が強いイメージの
真木よう子を主役に起用した意図は、冒頭の階段を駆け下りる場面ですべて説明され尽くしている。脳内被りの「インサイドヘッド」の前に公開できてよかった。
30.
「ピクセル」(9月25日)
かつてのアーケードゲームに馴染みのある世代にとっては夢のような映画ができたと歓喜したが、世の中的には意外と盛り上がらず。興行でも特筆すべき点はなく、続篇制作についても聞くかぎりは未定。