Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ハートロッカー」

2010年03月22日 00時24分33秒 | 映画(2010)
24時間緊張を保てるとしたら、それは中毒でしかあり得ない。


この映画の上映時間は131分。その間、生命を削る兵士たちの闘いが切れ目なく描かれる。

正直言って疲労が溜まる。2時間ちょっとでこれなのだから、前線に派遣された者が味わう戦慄はもはや想像の域を遥かに超える。

映画だから多かれ少なかれ脚色が加わっていると思う。有名ではない俳優が演じているとはいえ、配役にこれから何が起こるか予兆を感じるし。

たぶん本当の戦場は、もっと地味で更に過酷なのではないだろうか。誰もが1秒後の運命が分からない中で歩を進めて行くのだ。

冷静に考えれば、こんな割に合わない任務を何故好き好んで引き受けるのかと思うのだが、そこが「戦争は麻薬」なのである。

任務を終えた軍曹が家族とスーパーで買い物をし、ベッドで子供を寝かしつける。しかしそこで気付くのは、いるべき場所にもはや馴染めない自分だ。

彼のように「何か違う」と感じる場合もあれば、戦場のトラウマに押し潰される場合もあるだろう。それは皮肉にも現地で全力を尽くすほど傷が深い。

理不尽な争いの連鎖はどうすれば止めることができるのか。常に考え続けなければいけない問題であるが、一方で、戦争を知らない我々が軽々しく語るべきではないとも思う。

そういった意味では、本作でアカデミー監督賞を獲得したK.ビグローの姿勢には感服する。

個人的な主張は極力抑えて、過酷な前線で生存するということを生々しく描いた姿は、まさしく作品賞の風格が備わっている。

冒頭で脚色について批判的とも取れる書き方をしたが、映画としてみた場合それぞれのエピソードは非常に骨太で、観る側に強烈な印象を与えることに成功している。

多くの傷が早く癒えますように、そして新たに生まれる傷ができるだけ少なくなりますようにと祈るばかりである。

(90点)
コメント (6)
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「マイレージ、マイライフ」

2010年03月21日 01時23分53秒 | 映画(2010)
苦い矛盾の空間を漂う。


主人公・ライアンの仕事は、面倒を怖れる管理職に代わって解雇する従業員に最後通告を行うリストラ宣告人。

彼は、人間関係を重い荷物に例え、バックパックはもっと身軽にしていいとうそぶく。

そんな理念があるからこそ業績は優秀、常に効率を重視した行動に穴はない。・・・ように見えた。

しかし実は彼の周りは矛盾に満ちていた。

そもそも他人の失職で成り立つ職業そのものが矛盾の産物であるし、AAdvantageの特別優遇措置を受けながらステイタスを上げる趣味はチープだと自覚している。

そして何より、手荷物を最小限に抑え手続きの時間をできるだけ短縮して快適で効率的な出張をしていたつもりが、新入社員のナタリーにわざわざ出張すること自体が非効率だと言われてしまうのだ。

解雇通告はネットで。仕事の手段でもあり人生の趣味でも合った飛行機旅行を奪われれば、それはライアンにとってまさにリストラ同然。この映画は、こんな皮肉めいた演出がところどころで小気味良く効いている。

時をほぼ同じくしてライアンは、ほとんど音信不通状態の実の姉から妹の結婚式に手を貸すよう頼まれる。手荷物からはみ出る妹と婚約者のパネル写真は、彼が言うところの重い荷物状態だ。

独りで生きるには限界がある。妹の婚約者を慰める自分の言葉、ナタリーからの叱責、恋人アレックスのもう一つの顔。立て続けに降りかかる出来事に彼は自分の行き方を見直さざるを得なくなる。

そんな彼がたどり着く着地点なのだが、これがまた何とも苦いのだ。

「なんだ、もっと喜ぶと思ったのに」。

上司に言われ再び「マイホーム」の空港に着く彼の前に現れるのは巨大な行き先表示ボード。見上げるライアンの表情がこの映画のすべてを語る。

愛があるけど甘いだけでは終わらない。矛盾や皮肉に満ちた世界をさらっと語ってしまうあたり、やっぱりJ.ライトマンって巧いなと感じる。

配役も良かった。スマートなビジネスマンと来たらG.クルーニーほど適役はいない。解雇される側をほだす説得力に満ちた眼力も完璧だ。

大人の関係を愉しむアレックスと賢いながら青臭さ全開のナタリーもうまくハマっている。

ミスキャストといえば、ライアンが忠誠を誓っていたのがAmerican Airlinesだったことくらいだろうか。一時期プラチナ会員までいったけど、アテンダントに太ったおばちゃんが多いなどあまりいい印象はないからね。

(85点)
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「スパイアニマル Gフォース」

2010年03月21日 01時03分19秒 | 映画(2010)
作るにも観るにも手堅い路線。


動物モノは手堅い。それをディズニーとJ.ブラッカイマーが作るのだから、石橋を叩いて渡るようなものだ。

事前情報である程度知っている部分について、楽しそうなところが予想通りにほどほどに楽しい。そんな感じ。

唯一意外だったのは敵の黒幕の存在かな。彼が作り上げた化け物はトランスフォーマーだったね。

あと、Gフォースを作り上げた科学者の博士が、この後観た「マイレージ、マイライフ」の冒頭でリストラされたのには笑えた。G.クルーニーにも必死で成果を見せないと。

今回もまたまた3D公開だったが、感想としてはこれも3Dである必要性は感じなかった。

観る映画館をワーナーマイカルにしたので、メガネが薄くてかけやすい形になり、何とか眠りこけずに最後まで観ることができたが。

(60点)
コメント (2)
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「映画プリキュアオールスターズDX2 希望の光レインボージュエルを守れ!」

2010年03月21日 00時37分26秒 | 映画(2010)
正しいオールスター感謝祭。


また来てしまいました。プリキュアの劇場版。

今回はあいさつやら説明やらもなく、いきなり物語に突入。とはいえ特に凝った設定もなく、いきなり妖精たちのテーマパークが現れて、悪者たちが乗っ取って、プリキュアたちが希望の光でそれを打ち砕いて、「はい、おしまい」である。

単純といえば単純で、言ってみれば遊園地の上映型のアトラクションに近い。1,000円払わされてそれでいいの?って意見も出るかもしれないが、妥当な値段かどうかは別として、作り方はこれで正しいんじゃないかと正直思った。

オールスターと付けた以上は顔見せが第一。そして違うシリーズのキャラたちが融合することによる化学反応を楽しむのだ。

そういう意味では、つぼみとえりかがミップル、メップルと一緒に行動するなんて場面は、ならでは感があっておもしろかった。

更に、今回はプリキュアや妖精たちに加えてかつての敵たちがオールスターで集結したのも見どころの一つだ。

ここ2年はまったく見なくなったが、その前は子供と一緒に真面目に話を追って見ていたから、そのころ(「スプラッシュスター」や「5」のあたり)のキャラが出てくると「おおっ」と思ってしまう。

スプラッシュスターのキントレスキーなんてもっと心のある敵だったはずで、ちょっと扱いが気に入らない部分もあったが、まあお祭りとしては上出来ではないかということなのである。

最後はゲームセンターのゲーム機に出てくるようなデザインキャラで主題歌メドレー。これも豪華だった。

秋は「ハートキャッチ」の単独興行のようだから、次のオールスターはまた春かな。高学年を迎えようとするうちの子は観たいと言うのだろうか。

(60点)
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「プリンセスと魔法のキス」

2010年03月19日 01時29分32秒 | 映画(2010)
古典的なようで新しい。がんばろう!N.O.


呪いをかけられてカエルになってしまった王子様をキスで助けるお姫様。と来れば、まさに童話の古典的世界。

3-D隆盛期を迎えようとしているこの時期に敢えてレトロを売りに勝負する作品と単純に考えて観に行ったのだが、この映画の設定はもうひとひねり、ふたひねり。

まず王子が決して白馬に乗ったMr.パーフェクトではない。苦労を知らないお気楽お坊ちゃまは、両親に勘当され逆玉を目指してやって来たという、おおよそ童話ではあり得ないキャラクター。

一方のヒロインはといえば、経済的不遇に負けずに努力を続けるという点ではステレオタイプだが、なんと言っても黒人だ。

おまけに彼女も人生の大切な何かを見失っているという設定。ヴードゥーの魔女は、彼女の方が重症だと言う。

そんな2人がカエルの姿で、仲間と出会い、冒険を経て成長し、やがて何が大切なのかを発見する。これはもはや童話ではなくロードムービーの王道だ。

そして忘れちゃいけないのが、舞台となるニューオーリンズ。

カトリーナからの復興を目指して全米がエールを送るとともに、今年はSaintsがSuper Bowlを制覇して最高潮の盛り上がりを見せている都市である。

愉快な音楽に囲まれた街。N.O.に来ればみんな笑顔になれるよと画面が語りかけてくる。これはご当地映画でもあるのだ。

前向きで明るくて楽しい。これは我々が持つディズニーのイメージとぴったり重なる。

最近は商売っ気が目立つところの多いディズニーだけど、ちゃんと自分たちの本来の使命も心得ているところがうれしい。

もちろん3-Dと無縁でも十二分に楽しい。こんな作品が観られる限り、まだまだ映画生活を続けていけると安心する。

(95点)
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「ライアーゲーム The Final Stage」

2010年03月06日 23時59分42秒 | 映画(2010)
オチは凡庸も、シリーズ全体として突出した演出とキャラを評価。


TOHO海老名の1番スクリーンで観て、これって映画館向きの作品だったと初めて気が付いた。

独特の大げさな映像割り、トリッキーな音声、テンションが乱高下するプレイヤーたち。そして何より、話の展開に直結するゲームのルールを理解するためには、ながらで見るテレビより映画館で集中する方がいいに決まっている。

これまで毎度あまりゲームの中身は深く追求せずに見ていたが、今回決勝戦の「エデンの園ゲーム」をしっかり観察してみると、やっぱりよくできている。

りんごの設定や駆け引きの材料となるルールの肝の置き方なんてうまいもんだ。考えた人って頭いいよなーって素直に脱帽する。

で、このルールに沿って参加者が心理戦や裏切りを始める。強烈な敵キャラクターが仕掛ける攻勢を、アキヤマとナオが鮮やかに打ち破るという、言ってみれば水戸黄門的なお決まりパターンなのであるが、これが快感なのだ。

特に敵が憎たらしいほど、逆転の仕掛けが巧妙であるほど満足度は高くなる。決勝戦進出者はアキヤマとナオを入れて11名いたが、全員とはいかないまでも、何人かにスポットを当て裏切りと打ち負かしが繰り返される。連続ドラマでぶつ切りにしてもできるけれど、1つのゲームの中の話であり、通しで観るほうがやはり楽しい。

アキヤマとナオの見せ場も当然多い。特に、これまで何度も予告篇を見て気になっていたアキヤマの退場と敗北宣言や二人が急接近?なーんて意味深な場面も、「あー、こういうことだったのか」と納得しながら楽しめた。

ただ難を言えば、今回の最大の敵Xはイマイチだったかもしれない。配役で想像がついたし、正体が分かってからの狼狽ぶりを見るかぎり史上最強とは呼べない。かつて第1シリーズで立ちはだかったヨコヤの方がふてぶてしさでも上を行っていたと思う(菊池凛子は・・・まあ置いておこう)。

あとは、ゲーム自体のおもしろさに比べて、終了後の大団円がちょっと急速に丸く治め過ぎだった感じがする。福永やヨコヤまでもあんなになっちゃって。そう簡単に性格変わらないってね、本当は。

ゲームの背後にあるものやエンドロールの後の場面なんてのもほとんど付録的で、まあ可もなく不可もなくといったところ。

とにかく、松田翔太戸田恵梨香はじめとした個性豊かで魅力あるキャラクターに大いに楽しませてもらったシリーズだった。これで終わってしまうのは少しさびしい。

(80点)
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「しあわせの隠れ場所」

2010年03月03日 23時48分48秒 | 映画(2010)
隅っこにも幸せの光が降り注ぐ。


全米で大ヒットを記録し、知名度もあるS.ブロックが主演でオスカーにノミネートされているにも拘らず本作が限定公開なのは、フットボール(アメリカン)が馴染みのないスポーツだからというのは間違いない。

「ロンゲストヤード」は結局観られなかったし、今回も都内のどこで観るか終業と上映と終電の時刻をにらめっこしながら、ようやく渋谷東急に駆けつけた。

確かにマイケルが実戦の中で覚醒する場面は、アメフトがある程度分かっていないと何がどうやらとはなるかもしれない。でも本質は心温まる、いわゆる深イイ話なわけだから、もう少し努力して営業してもいいんじゃない?と思う。

映画はこれでもかというくらい甘いおはなしのオンパレード。

そもそも、ギャングスタに囲まれながらも平和を愛する好青年に育ったマイケルが何よりの奇跡だけど、そのマイケルに手を差し伸べるテューイ一家も相当なものだ。

美化し過ぎで虫酸が走る可能性すらあったけれど、そこは演じる役者たちに嫌みがなかったせいか何とかセーフ。

末弟SJとのやりとりが何より楽しい。時にはフットボールのコーチ、時にはエージェントさながらの活躍。

姉コリンズは複雑な思いを決して口には出さず、図書館で所在無くしてるマイケルにそっと近寄るやさしさを見せる。

そんな家族にマイケルは穏やかな微笑みと力強いパフォーマンスで応える。エアバッグからSJを守ったエピソードは感動的だ。

そんなマイケルのルーツは実の母親の一つの行動に帰結している。

「いやなことには目をつぶる」

これで彼は不遇の中でも幸せの種を持ち続けることができたというわけだ。

原題の"Blind Side"は、アメフトでマイケルのポジションであるOTが花形であるQBを相手のサックから守るためのキーワードであるとともに、才能がありながら居場所がない多くの人たちの境遇を重ねたものだが、邦題はやはり相当迷ったのだろう。

完璧ないいお話の中で唯一気になるのは、マイケルがNFLではまだ実績のほとんどない新人だという点。言ってみりゃ、今度西武ライオンズに入った雄星くんを主役に映画を作るようなものだから、これからの彼のキャリアはより大きなプレッシャーとの戦いになりそうだ。

(85点)
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「コララインとボタンの魔女3D」

2010年03月01日 22時56分37秒 | 映画(2010)
選べない不幸とは闘いようがない。


「ナイトメアビフォアクリスマス」の監督によるダークファンタジーの最新作。

「ナイトメア~」の3D版を大分のT-JOYで観たのは1年半くらい前だろうか。あのときはかなり短い上映時間にも拘らず寝てしまった。

今回の上映時間は100分。結果はといえば・・・、中盤から後半にかけての見どころはしっかり観ることができました!やったね。

なーんて喜ぶわけないじゃん。コララインが初めて魔女の世界に入った後に垣間見る楽しい世界の記憶がほとんどないから、いつの間にか黒ネコがいるし、風変わりな隣人の整理がつかないまま観る羽目になってしまった。

加えて言えば、メガネがいずくて(仙台ことば)鼻にハンカチを挟んでいたのを、眠りこけているうちに落として失くしてしまった。もったいない。

それでも意識が復活してからの展開はおもしろかった。微力であることを知りながら魔女との闘いに覚悟して臨むコララインの姿に観る側のテンションは高まり、アイデアを凝らした攻防に目は釘付けになる。

魔女の世界の住人が持つボタンの目は、微笑んでいるときは無表情の不気味さを、怒りを露わにするとドクロの目のように恐怖を感じさせ、効果的だった。

完全な手作りながらも時にはデジタルっぽくも見えるストップモーションアニメもおもしろい。魔法が解けると世界が石化あるいは白化したモノクロへと早変わりする様子は鮮やかだった。

それだけに3Dだったのはもったいなかった。ときどきメガネを外してみてもあまり問題なかったし、今さら3Dでお客が呼べるってものでもないと思うんだけど。

(70点)
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