Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ドラフトデイ」

2015年02月22日 05時19分36秒 | 映画(2015)
クリーブランドが輝く日を夢見て。


大接戦の末に衝撃の結末で終わった第49回スーパーボウル。

いまだに、あのときああしていればと思うこともあるが、とにかくシーズンは終了。一喜一憂できない寂しさが募る。

そんな中で、たまたまタイミングが合って本作を観ることができた。半ば諦めていたのでとてもうれしかった。

実在するチームや選手と架空の人物が混在する舞台設定は、往年の水島新司の野球漫画を思い起こさせる。

K.コスナー演じるサニーはクリーブランド・ブラウンズのGM。低迷するチームを飛躍させるためにドラフトでいい選手を獲りたいと切望している。

米国のスポーツは、選手の抜きん出た実力でファンを魅了するのは当然だが、いかにリーグを盛り上げるかというサービス精神、言葉を換えればビジネス戦略に長けている点が大きな特徴である。

その究極に位置するのがドラフト制度であり、完全ウェーバー制という基礎の上に繰り広げられる様々な駆け引きは、時折ゲーム以上のドラマを生み出す。

本作の架空のストーリーで全体第1位の指名権利を持つのはシアトル・シーホークス。現実のシーホークスは2年連続スーパーボウル進出しているのだから、随分思いっ切りなフィクションになってしまったものだ。

ブラウンズとシーホークスが指名権トレードの交渉を始めるところから物語が動き出す。

本ドラフト最大の目玉とされるのがQBボー・キャラハンであり、前年度下位に終わった(という設定の)シーホークスは当然指名するだろうというのが大方の予想とされている。

評論家曰く「A.ラック以来の大物」らしいが、ラックと同期のシーホークスの現エースQB R.ウィルソンは存在しないことになっており思わず苦笑する。

そもそも現在の強豪シーホークスは下位順位やドラフト外で隠れた有望選手を獲得して丹念に育て上げたチームなので、もう何から何まで180度方向性が違うのである。

そんなパラレルワールドのシーホークスに巧く言いくるめられてハイリスクな取引を実行してしまうサニー。そうまでして得た全体1位の使い道も、オーナーやヘッドコーチとの意見の不一致でチームの雰囲気は最悪に。

そこからThis is USA的な逆転劇が開始するのだが、おもしろいのは最後までいってもサニーが優秀なGMかどうか判別がつかないところである。

最後の判断はベストだった。しかし、そこに流れや運といった要素が加担した故の結果であることに疑いはない。

これはまさにフットボール選手と同じで、実力だけではスーパーボウルリングは手にできないのである。

モメンタムを読む判断力、判断を実行に移す冷静さ、そして実力のうちとされる運気、これらを「持っている」者のみが勝者の称号を得られる世界なのだ。

そうした意味においては、思い切ったフィクションでありながらリアリティもきちんと兼ね備えている話と言える。

そして本作最大の皮肉な点は、この話の終わりはあくまでドラフトのピックが成功したというだけであり、選手が期待外れだったり、ケガに泣くことになったりしてしまえば、このハッピーエンドはまったく意味のないものになるということにある。

壮大な世界の一部を切り取ってこれだけのドラマになるのだから、集大成のスーパーボウルとなればそれは盛り上がるはずである。

K.コスナー、「アンタッチャブル」から30年近くが経ってもまだまだスーツがよく似合う。監督のI.ライトマンも80年代から一線級で健在ぶりを発揮。

さらに現役の選手、コミッショナーが出演するなどNFLの支援を最大限に受けて作られたぜいたくな作品となっている。

とはいえ、この題材の映画をわが国でよく劇場公開してくれたもので、配給会社に一番にお礼を言いたい。パンフレットまで作ってくれるなんて感動でいっぱいである。

(80点)
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「ANNIE/アニー」

2015年02月22日 05時17分20秒 | 映画(2015)
幸福を呼ぶ歌声と微笑み。


もう30年以上前になるだろうか。前の映画版「アニー」を映画館で観た。

記憶はあいまいだがとても楽しかったことを憶えている。あのときにミュージカル映画との相性が固まったといっても過言ではない。

今回主役を務めたのはQ.ウォレスJ.フォックス。いくら記憶がないといっても、前作のアニーと富豪が白人だったことは憶えている。基本の設定を変えてきたわけだ。

J.フォックス演じる富豪は携帯電話会社のオーナー。また随分現代に寄せてきたものだが、IT技術を小道具として生かす場面を絡めるなど巧くアレンジしている。

お世辞にも幸せな環境とはいえない中でとことんポジティブなアニーは健在。

というよりも、前半のいじわるな里親の下での共同生活の場面も、ほとんどわいわい賑やかにしゃべって歌っているうちに過ぎてしまうから、不幸だったのかどうかも分からない。

毎週金曜日に通りのレストランの前で来るあてのない両親を待つなんて、日本なら演歌の世界だが、寂しさを外には出さず歌うことで明日への希望に変えていく。まさにこのミュージカルの真骨頂。

Q.ウォレスはオスカーにノミネートされただけあって余裕綽々。もちろんJ.フォックスもミュージシャンだから問題なし。C.ディアスの配役に苦言を呈している批評もあったが、多少のオーバーアクト含めて特に気にならず。ミュージカルは勢いがあった方がいい。

J.フォックスといえば、マイケル・J.フォックスのカメオ出演には驚き。対抗陣営の応援に彼が出てきたら勝てないよ・・・って、そういう立場になってるんだ。ほかにRihannaも発見。こちらも画面のひと。

上述のとおり展開が速いため、一見感情の深掘りはあまりされていないように映る。この話の肝である子供嫌いだった富豪の心が溶けるのも短時間のできごとである。

しかしこれも本作の特徴であるが、アニーの前向きな勢いに観客を含めた周りのみんなが元気づけられる構図なので、こうした展開に大きく違和感を抱くことはない。

幸せになれるミュージカルとして十分に満足感を得られる仕上がりになっていると言える。

(85点)
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