Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「映画と恋とウディアレン」

2012年11月25日 21時02分49秒 | 映画(2012)
お仕事集。


音楽にはベスト盤があるけど映画にはない。

毎年コンスタントに作品を世に送り続けているW.アレンの軌跡がよく分かる本作は、彼のベスト盤みたいなものかもしれない。

それも、「映画と恋と」という邦題が表すように、彼が関わって、そしてそれが明らかに作品の中に生かされている女性との関係についても掘り下げられる。

アレン作品を初めて映画館で彼の作品を観たのは「カイロの紫のバラ」あたりだったと思う。「アニーホール」や「マンハッタン」の頃は子供過ぎた。

彼の作品は大作じゃないから、仙台ではなかなか上映してくれなかった記憶がある。就職して東京に出て「誘惑のアフロディーテ」を観て、そこから定期的に観るようになった。

この時点で結構恋愛ものには無理が出始めていたけど、そこから更に20年、さすがに出演はしないまでも、今も大人の懲りない恋愛を描き続けるバイタリティーには敬服せざるを得ない。

この映画で改めて知ったが、彼にとって作品の「数量」はそれなりに重要らしい。たくさん作ってれば何か当たるかもとうそぶいていたが、作り続けること自体が彼の才能の成せる業であり、故に多くのトップスターがこぞって出演を希望するのだろう。

彼のことだから大丈夫だとは思うが、これからも周りの評価に惑わされることなく、彼のペースで「らしい」作品を次々に発表してもらいたいと思う。

(70点)
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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」

2012年11月25日 20時38分45秒 | 映画(2012)
国民的「世界の終わり」。


テレビ放映された2作品が初めてという超初心者としては、あーだこーだと語るのはちょっとはばかられる気がしている。

それにしても、同時上映の「巨神兵」にしても、何故に壮大に絶望を語るのかなと思ってしまう。

実際の世の中は、閉塞感には覆われているが、危機感は乏しいと言わざるを得ない。自分ですら、何が起きたとしても生きていれば何とかなるような根拠のない楽観論を唱えがちだ。

しかし、この物語の中にあるのは終末に次ぐ終末。「序」「破」にあった若干弛緩する場面は、シンジとカヲルが心を通わせるくらいで、それも荒涼とした中にかすかに灯った明かりのように儚いものであった。

この作品が今年No.1の観客動員でスタートを切ったという。何しろうちの子が観るくらいだから、もはや物語の世界観とは完全にかけ離れた存在に覚醒してしまったとしか言いようがない。

初心者は、描かれる世界をどう理解してよいものか迷っているところだが、庵野秀明氏はこの現象をどう受け取っているのだろう。

そもそも、彼は細かい設定を頭の中に持っているはずだけど、観客がそれぞれに解釈することについてはどう思うのだろう。

まあ、別にいーか。

(75点)
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「人生の特等席」

2012年11月25日 01時06分26秒 | 映画(2012)
保守本流。


来る総選挙は、いまのところ保守回帰を掲げる勢力の方が優位に立っている印象がある。

野球というスポーツは、日米問わずこれまた保守のイメージが強い。

単に歴史が長いということもあるだろう。わが国では昭和のお茶の間の中心に野球中継があった。

しかし世の中が流動化、多様化するに連れて、野球の地位は相対的に下がった。

そんな変わりつつある世界にかろうじて生き残っているアナログ人間にスポットを当てたのが本作である。

C.イーストウッド演じるガスは往年の名スカウトであるが、寄る年波には勝てず、スカウトの命である視力に支障を来たしている。一方で、同じ職場では、データ一辺倒のデジタル族が幅を利かせ始めており、ガスは引退を勧告される身に。

アナログや現場主義の大切さはよく理解できるので、そこを取り立てて言うつもりはないが、両スカウトがアナログ100%対デジタル100%という極端な設定は、まさに「保守」だと思わされる。

2人の能力見極めのキーマンとなる高校生スラッガーもまた極端な人物設定である。

ドラフト1位選手でも大成する人と芽が出ない人がいるけど、それは能力の問題だけでなく運気も含めた様々な要素が重なって、大抵は数年経った後にもたらされる結果のはず。

でも本作は、飛び道具を持ってきてすぐに結果を分からせてくれちゃう。感情はすっきりするけど、どこかになんだかなーという気分も残る。

親子関係、仕事関係、いろいろ大変苦労があるけど、ご都合交えて整理を施し最後はまとめて大団円という感じ。いい悪い、好き嫌いは抜きにして、とにかく「保守」なのである。

イーストウッドは久しぶりの出演復帰だけど、がんこじいさん以外はちょっと難しいかな。

(65点)
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「ドリームハウス」

2012年11月25日 00時19分17秒 | 映画(2012)
その先の生還と再生。


「ドリームハウス」という題名や女の子2人の後ろ姿のポスターからは、家が呪われているとかそちらの方のジャンルと想像していた。

実際始まってからしばらくの展開は家系ホラーそのものである。

人生の大きな決断を持って購入した新しい家。希望に満ち溢れていた家族に少しずつ不協和音が忍び寄る。

怪しい人影。微妙な態度の隣人や警察。そしてとどめは、住んでいる家がかつて凄惨な殺人事件の現場だったという衝撃の事実。

主人公ウィルは、家族を守るために身を投げ打って闘う・・・となりそうなところで、物語は意外な方向へと舵を切る。

この手の急転回は、物語の最後のどんでん返しで使われて、そういえばあの場面はああだったこうだったと思い返して、はい、おしまいというのが通常だと思うが、本作のおもしろいところは、これをあくまで話の中間点に置いたところにある。

もちろん隣人や警察の態度、勝手に地下室に入り込んでいた若者たち、印象に残る主人公の変わった苗字なんていう不自然な謎が解けるすっきり感も味わえるのだが、それが分かったところで新たに輪郭が表に出る謎を探る物語が始まるのである。

このウィルはどんな男なのか、いいもんかわるいもんかがぎりぎりまで分からない。それは劇中で描かれてきた家族への愛が本物なのかと同義であり、全ての謎が明らかになったときに切なくも温かいラストへとつながる。

D.クレイグは、ジェームズボンドという巨大なキャラクターの現役でありながら、結構他の作品にも出ている印象がある。

特に本作は、善か悪かの境界というヒーローらしからぬ役柄ながら、違和感なく務め上げているのには驚いた。

あとは女の子2人がかわいかったかな。家に帰ってきて一緒の時間が増えると言われてあれだけ喜んでもらえたら、それは父親冥利に尽きるってやつで。まあ、あれも不自然な謎の一つだったわけだけど。

(80点)
コメント (2)
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「アルゴ」

2012年11月15日 02時44分18秒 | 映画(2012)
胆力、そして使命感。


冒頭のワーナーのマーク。あれ?間違った場所に入ったかなと一瞬思う。

時代は70年代から80年代へ移ろうという頃。記憶がフラッシュバックする。

そう、あの時代のアンチヒーローは、国家ではソ連であり、個人では間違いなくホメイニ師だった。

熱心にニュースを見ていなくても、パーレビ国王といった名前は耳に馴染んでいたし、何となくイランが怖いということも感じていた。

しかし歳月が過ぎ、曲がりなりにも外国で暮らす経験を持った身として、異国の地で煽動された群衆に囲まれることの底知れぬ恐ろしさを、改めてまざまざと見せ付けられた。

古いワーナーのロゴは、説明抜きに観る側をあの時代の緊張感へと運び、見事に再現された70年代の風景が作る空気とともに、6人の救出が完了するまで決して途切れることはない。

もちろん印象に深く刻まれるのは物語である。

特に、米国を感じ、中東を感じ、それを通じてわが国を思う。

外国で窮地に陥っている自国民は全力で救う。それが今も昔も変わらないアメリカの美学であり、そのためには、突拍子もない考えでも一度決めれば団結してそれに当たる。

作戦が成功しても決して手柄の奪い合いはしない。大局に立ったときに何を優先すべきかをそれぞれが心得ている。

その信念に呼応するのか、本作では隣人のカナダがしっかりとサポートする。他の国際舞台でも、盟友の英国を筆頭として巧みに戦略的互恵関係を築き上げる。

かたや中東は常に資源と宗教に明け暮れる。資源は財力を生み、宗教は感情の暴発を引き起こす。

静かなる協力者はイランを脱出してイラクへ入国するが、歴史としてそこに待っているのは、イラン・イラク戦争であり、フセイン体制と米国の侵略なのだから皮肉である。

翻ってわが国といえば、北朝鮮に残された拉致被害者を救うことができない。隣人は言わずと知れたあの面々である。

国の柱が頼りないのか、そもそも地理的・歴史的に不幸な立場にあるのか、それともひょっとして我々がうかがい知らないところでしたたかな外交が繰り広げられているのか。

繰り返しになるが、表向きの評価が得られない中で命を賭して闘う人たちの姿が何よりも輝いている。

もちろん"Based on"であり、演出の部分も多々あるだろうけれど、実際の緊張感は劣るどころか遥かに過酷なものであったろうし、救出側の対応も映画ができ過ぎなどでは決してなかったものと想像できる。

それがこの作品の力強さであり、実は現代の世界が求めて止まない理想なのだと思う。

(95点)
コメント (4)
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