Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「アベンジャーズ/エンドゲーム」

2019年05月26日 23時01分21秒 | 映画(2019)
史上最大のマネジメントがコンプリート。


わが街・海老名のイオンシネマはこの度ワーナーマイカルシネマ時代から数えて開業26周年を迎えた。

平成の映画の歴史はまさにシネコンの歴史。それぞれの映画館が持つ地域色はほぼなくなったものの、音響や清潔感といった環境面、番組編成や座席指定のような利便性については格段に向上が見られ、映画は引き続き国民的な娯楽として君臨している。

他方、同じ平成時代の映画業界を一つの大きなジャンルとしてけん引してきたのがアメコミヒーローである。DCコミックスの「バットマン」をT.バートン監督が送り出したのが1989年、平成元年の出来事である。

遅れること約10年、マーベルがB.シンガー監督による「X-MEN」、S.ライミ監督による「スパイダーマン」を製作し興行的な成功を収める。それから数年を経てスタートしたのがMCU(マーベルシネマティックユニバース)である。

アベンジャーズが終わる。11年、22作品が紡いできたMCUが大きな区切りを迎える。

1本1本を観ているうちにいつの間にか世界観の虜になっていた。はじめは観ていなかった「ソー」も「キャプテンアメリカ」も見逃さずにはいられなくなった。そしてあの「アベンジャーズ/インフィニティウォー」である。この結末を見届けるまでは死ねないという思いで1年を過ごした。

(ここからネタバレあり!)

それほどまでにして首を長くして待った作品ではあったが、拍子抜けするほどに意外性はなかった。予告篇での登場にうるっとさせられたアントマンにしても活躍の仕方が量子世界を経由したタイムトラベル(時間泥棒?)という想定内のものだったり、直前に救世主として現れたキャプテンマーベルが反則級の強さだったり。

「新作は日本が舞台になるよ!」なんて事前に宣伝していた媒体があったけれど、真田広之も含めてあの使われ方はどうなの?というレベルで、「ソー」の浅野忠信から退化している感じがしたり。

タイムトラベルの演出が「バックトゥザフューチャー2」的になっていたのが個人的にはかなりツボではあったけれど、基本的には全篇を通して11年間の回収作業という印象が強かった。

ただ、改めて考えてみればそれ自体がものすごいことに気付かされる。今回エンドロールはこれまでの功績を讃えるかのごとく一人一人を豪華にフィーチャーしているが、その俳優陣に対して偏りなく活躍の場を作り出演交渉を管理し続けることがどれほど大変なことだったろうか。

アベンジャーズのメンバーだけじゃない。N.ポートマンT.スウィントンM.ダグラスR.レッドフォードといった脇を固める出演者たちも大御所揃いであり、それが今回少しのシーンながら再登場を果たす。

アベンジャーズを冠した作品なのに、生みの親であるニックフューリーが最後の場面にしか出てこないのもすごい。このエンドゲームの展開や結末がどうなるのかは、撮影に参加した俳優たちもわからないという徹底した秘密主義も貫かれた。

そこまで見せつけられては、もうこの大団円には素直に感動するしかない。本来の映画の観方とは異なるのかもしれないけれど。

アイアンマン、キャプテンアメリカ、ソーの初期アベンジャーズの中心メンバーは3人がそれぞれの旅立ちを迎え、エンドロールは一切のおまけ映像を排していた。

ああ、本当にアベンジャーズが終わったんだ。余韻を味わいながらイオンシネマ海老名の7番スクリーンを後にした。

(85点)→ 修正

公開からちょうど1か月の5月26日に2度めの鑑賞。

流れがわかっている分余裕ができて画面の細かいところまで目が届いたこと。公開後にテレビで放映された「インフィニティウォー」「アベンジャーズ」「エイジオブウルトロン」を改めて観たり、ネタバレや裏話が掲載された記事を読み込んだりしたことで得たことによって、新しい発見が盛りだくさんであった。

上で苦言を呈したタイムトラベルの設定も真田広之の場面もすんなり受け入れられたし、何よりも全篇を通してそれぞれのキャラクターへのきめ細やかな配慮がビシビシと伝わってきて、おもしろさも感動も数倍に膨れ上がった。

この複層的な世界を一度だけで理解するのは難しい。ネタバレ回避として公開初日に観たのは当然だから、本作の楽しみ方としてこれが正解だったのだろう。いや、むしろまだまだ旧作まで含めて繰り返し観ればもっと思いが深まるのかもしれない。

いずれにしても映画史に強く刻まれる偉業を目の前にして、エンドロールでは体の震えが止まらなくなっていた。

(98点)
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「名探偵ピカチュウ」

2019年05月19日 15時18分03秒 | 映画(2019)
安心と信頼の東宝クオリティ。


初めてこの映画の企画を聞いたときは正直なところキワモノ企画だと思った。実写はともかくピカチュウがしゃべるってどういうこと?と。

しかしゲームの素材として既に存在していること、長らく劇場版ポケットモンスターを製作してきた東宝がしっかりバックアップしていることを知り、むしろこれはどう仕上げているのかと俄然興味が湧いた。

子供はとうにポケモン映画からは卒業しており(ポケGOはやっているらしいが)、僕自身キャラクターの名前が分かる程度となっていたが、画面に映し出されるポケモンたちの質の高さは感じ取ることができた。

何よりピカチュウが無敵のかわいさである。中身はおっさんでカフェイン中毒なのに、2次元より明らかに破壊力が増している。探偵帽子がものの見事にハマっているし、毛並み等の質感や細やかな表情が無条件に心を射抜いてくる。

人間とポケモンが共存する街・ライムシティの設定もおもしろい。オリジナルのポケモンが描く育成と冒険というある種ワンパターンな流れをやや社会的な次元に持ち上げて、幅広い年齢層の鑑賞に堪える作りとなっている。それぞれのポケモンの特性が生かされて共生している状況は画的にも楽しい。

同様に人間側のキャラクターもおざなりではなく、主人公のティムとピカチュウの相棒だった父親との関係をはじめ、真の敵が誰なのかということも含めて十分に楽しませてくれる。

ピカチュウの声を当てているのがR.レイノルズという点にも本作への並々ならぬ意欲を感じる。何しろ先ごろハリウッドの最新ギャラ事情でNo.1と報道された売れっ子だ。ラストの驚きと感動の余韻もこの配役があってこそである。

興行成績も今のところ世界的に好調らしい。マーベル級とはいかないまでも、今後とも日本発のワールドワイドなキャラクターとして様々な展開を期待したい。次に東宝が世界的に押し出すゴジラはどうなるかな?

(80点)
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「シャザム!」

2019年05月05日 13時25分29秒 | 映画(2019)
跡継ぎにふさわしい純粋な心があったのかどうかはやや疑問。


アベンジャーズが一段落した転換点ということでアメコミヒーロー映画の歴史を振り返ったばかりだが、市場の盛り上がりとともに最近顕著に見られるのがヒーローの多様化である。

「バットマン」が成功したときはアメコミのヒーローが持っている陰の部分に注目が集まった。それ以前の万人に評価される優等生というヒーロー像に対するギャップは、ヒーローものを大人の鑑賞に堪えられる、むしろ大人こそ観るべき作品として一気にファン層を広めたと記憶している。

「X-MEN」シリーズもミュータントという変異を陰の資質として捉えて、その逆境を乗り越えていく過程が共感を呼んだ。ミュータントの種類は多種多様で映像的にも見応えがあり非常に映画向きの題材であった。

そして現在。MCUとDCが競い合って製作を続けるヒーロー映画は、出自や能力といった内面を抜け出て、性別や人種といったそもそもの入口の多様性にまで発展してきた。

本作の主人公は中学生のビリー。幼い頃に遊園地で母親とはぐれて以来、いくつもの里親の家を転々と移り住む生活を続けている。ある日、異世界の魔術師・シャザムに見出されて全能を有する大人の肉体を授けられる。

魔術師の能力を受け継いだはいいがビリーの中身は中学生のままであり、大き過ぎる能力を使いこなせるはずもなく、同じ家に住んでいるフレディと動画投稿やいたずらに明け暮れる。

つまりこのヒーローの特徴は大人の体を持った子供ということである。MCUでいえばスパイダーマンの立ち位置に近いかもしれない。となると展開としては、一人の少年がヒーローとして大人として生きるための責任に目覚めていく成長物語に必然的に落ち着くこととなる。

前半はコメディー要素が強い。ビリーたちが能力の凄さに驚きはしゃいでる様子はお気楽で楽しく見ていられる。変身したシャザム役のZ.リーヴァイの風貌が、失礼ながらちょっと抜けている感じでハマっていたのも大きい。

しかし平和な時は長く続かず、中盤以降は能力を奪おうとするスーパーヴィランのM.ストロングの波状攻撃に晒される。攻撃を受けながらビリーは、自分が今いる場所はどこか、今何ができるのか、そして何故この能力が与えられたのかを考え答えを出していく。

ヴィランが操る七つの大罪の怪物に知識も経験もないビリー=シャザムがどう立ち向かうのだろうと思っていたが、突然の里子たちの目覚めに驚かされた。この子供たちも多様性の申し子のような構成であるが、彼らの大活躍で映画としては収まりよく後味よく決着を迎える。

物語の設定も配役もまとまっている。他のDCコミックスヒーローの存在も話の途中にちょいちょい出てくるので、シリーズを橋渡しする役割としても機能している。

DCのメンバーもようやく揃いつつある。しかも敢えてか知らないが、MCUと比べてあまりビッグネームがいない印象もある。今後腰を落ち着けて「ジャスティスリーグ」の再興へ繋げていってほしいものである。

(75点)
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