あのころの絆。取り戻そうとするイメージ。
伊坂作品は原作を読んだこともなく、映画も昨年「重力ピエロ」を観たのみである。
でも何かこれ特徴じゃないかなと思ったのは、一見荒唐無稽と思えそうな舞台設定と細かな伏線を張り巡らせた筋書きだ。
総理大臣が市街でパレードだとか、アイドルを助けてヒーローになった宅配業者だとか、およそ現実社会では起こり得ない話なのだが、それでも進むうちに引きつけられるし、むしろそのあり得ない設定からも効果的に要素を引き出していく。
本作はファンの間でも最も映像化に向いていると言われているそうで、確かに圧倒的な苦境に立たされる主人公が生き延びいていく仕掛けには感心させられることしきりだった。
特にクライマックスから先は、以前の様々な場面へつなぐ糸が放出される。まさに次々に打ち上がる花火のごとし。たいへんよくできました。
あと好感が持てたのは、主人公・青柳と周りの人々がスーパーヒーローとは程遠い無力の人間であったこと。
青柳ができるのはとっさの大外刈りくらいだし、友人や同僚も力がない故に青柳の信頼に応えられないどころか、苦境に陥れるきっかけになってしまう有様。
ただみんなの救いたいという気持ちがかろうじて青柳を逃げ続けさせたというところがすばらしい。力はなくとも繋がっているというイメージが人を強くすることもあるのだ。
青柳を演じたのは絶好調の堺雅人。大河ドラマ「新選組!」では剣の達人・山南を演じたが、風貌は武闘派とは程遠い。原作はともかくハマり役だったと思う。
竹内結子は置いておいて、脇を固める俳優陣も役柄と相まって個性的でおもしろかった。特に永島敏行は怪演だった。
そして、仙台である。
いくら遠い昔とはいえ、25年べったり張り付いて暮らしていた土地だ。どこの建物だとか、どこを走っているとか、そりゃ結構分かるよ。
母親から聞いていたとおり実家のマンションも登場した。一瞬。分かる人には分かるってとこかな。
無理のない逃亡ルートという触れ込みだったけど、やっぱり切り貼りはあるんだね。
黄色い廃車が放置されていたところは小学校まで住んでいた家の近くだ。ちなみに八木山動物園やベニーランドとはかなり離れた場所である。
でも劇中で、昔の思いに巡らせるときは、誰か同じ思いを持っている者がいるみたいなことを言っていたと記憶しているが、自分自身、昨年から急に仙台に縁があることが増えてきた実感がある。
あのころの仲間もそんな思いでこの映画を観るのかもしれない。
(85点)
伊坂作品は原作を読んだこともなく、映画も昨年「重力ピエロ」を観たのみである。
でも何かこれ特徴じゃないかなと思ったのは、一見荒唐無稽と思えそうな舞台設定と細かな伏線を張り巡らせた筋書きだ。
総理大臣が市街でパレードだとか、アイドルを助けてヒーローになった宅配業者だとか、およそ現実社会では起こり得ない話なのだが、それでも進むうちに引きつけられるし、むしろそのあり得ない設定からも効果的に要素を引き出していく。
本作はファンの間でも最も映像化に向いていると言われているそうで、確かに圧倒的な苦境に立たされる主人公が生き延びいていく仕掛けには感心させられることしきりだった。
特にクライマックスから先は、以前の様々な場面へつなぐ糸が放出される。まさに次々に打ち上がる花火のごとし。たいへんよくできました。
あと好感が持てたのは、主人公・青柳と周りの人々がスーパーヒーローとは程遠い無力の人間であったこと。
青柳ができるのはとっさの大外刈りくらいだし、友人や同僚も力がない故に青柳の信頼に応えられないどころか、苦境に陥れるきっかけになってしまう有様。
ただみんなの救いたいという気持ちがかろうじて青柳を逃げ続けさせたというところがすばらしい。力はなくとも繋がっているというイメージが人を強くすることもあるのだ。
青柳を演じたのは絶好調の堺雅人。大河ドラマ「新選組!」では剣の達人・山南を演じたが、風貌は武闘派とは程遠い。原作はともかくハマり役だったと思う。
竹内結子は置いておいて、脇を固める俳優陣も役柄と相まって個性的でおもしろかった。特に永島敏行は怪演だった。
そして、仙台である。
いくら遠い昔とはいえ、25年べったり張り付いて暮らしていた土地だ。どこの建物だとか、どこを走っているとか、そりゃ結構分かるよ。
母親から聞いていたとおり実家のマンションも登場した。一瞬。分かる人には分かるってとこかな。
無理のない逃亡ルートという触れ込みだったけど、やっぱり切り貼りはあるんだね。
黄色い廃車が放置されていたところは小学校まで住んでいた家の近くだ。ちなみに八木山動物園やベニーランドとはかなり離れた場所である。
でも劇中で、昔の思いに巡らせるときは、誰か同じ思いを持っている者がいるみたいなことを言っていたと記憶しているが、自分自身、昨年から急に仙台に縁があることが増えてきた実感がある。
あのころの仲間もそんな思いでこの映画を観るのかもしれない。
(85点)