Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「パディントン2」

2018年01月21日 21時13分32秒 | 映画(2018)
これからはフィッシュ&チップスではなくマーマレードサンド。


最近、英国という国を見直す機会が増えているように感じる。

2016年には、国民投票で「Brexit」という歴史的な判断を下したことで国全体が混乱に陥ったが、最近は米国等の他国がそれ以上にしっちゃかめっちゃかなせいか、どこか落ち着いて見える。

特に、最近スキャンダル等でごたついているハリウッドから一定の距離を置いて健全な娯楽を発信し続けているというところが良い。音楽界もEd Sheeranを筆頭にとても元気だ。

先日観た「キングスマン:ゴールデンサークル」が象徴するように、長い歴史を持つ大国だけあって、多少の揺らぎがあったとしてもその誇りや存在感に影を落とすことはないということなのだろう。

今回は100%家族で楽しめる優等生娯楽映画の第2弾である。あいにく前作は未見であるが、背景や物語はとても分かりやすいし、主役であるパディントンの誇張し過ぎない愛らしさが心地良い。

特に、パディントンを世話するブラウン家をはじめ、誤解から収監されてしまった先の刑務所の囚人たちまで非常に多くの人物が出てくるが、彼らを整理して書き分け、更に全員に活躍の場を作る構成力が素晴らしい。伏線もきれいに用意して余すところなく回収している。

また、物語の軸となっているのが、かつてお世話になったおばさんにロンドンの景色を描いた飛び出す絵本をプレゼントしたいという設定になっており、ロンドンの名所や街並みが全篇に散りばめられる。これが正に宝物のように魅力的に映し出されており、英国の良さを売り込む意味でも大きな効果をもたらしている。

ファミリー向けを意識してか、H.グラント演じる敵役の落ちぶれ俳優も邪悪でも何でもない。最後までコメディータッチで、彼自身どことなく楽しみながら演じているように見えた。

最近殺伐とした出来事が多い中で、皮肉屋のイメージが強い英国がこうした作品を作れることに少し驚いた。今年はいろいろな意味で英国に期待したい。

(90点)
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「嘘を愛する女」

2018年01月21日 09時31分23秒 | 映画(2018)
愛の力で、また歩き出せる。


5年の間ともに過ごしてきた相方が、実は経歴から何からすべてを偽っていたことが明らかになった。

予告篇を見る限りはサスペンス風の作品。なぜ彼は嘘をつかなければならなかったのか。

長澤まさみ演じる川原は、東日本大震災の日に研修医の小出という男性に困っているところを助けてもらう。

その後同棲を始めた二人。川原が自分の母親に小出を紹介しようとしたその日に、小出はくも膜下出血で意識不明の状態に陥る。

公園で倒れたという小出が所持していた身分証は一時警察の手に渡るが、そこで分かった事実が「身分証の記述は、住所を除いてすべてがでたらめ」ということであった。

こんなとき人はどうするのだろう。川原はとにかく知りたいと思った。同僚の親戚である私立探偵を雇って小出の正体を探る選択をとった。

「過去を知って良い結果が生まれたことはない」と忠告されても、彼女の決意は変わらなかった。

彼に対する愛なのか、それとも単なる意地なのか。自分でも分からなかったと思う。ただやみくもに探し続ける中で、次第に彼女と小出の本当の関係が見えてくる。

川原はキャリアとしては成功しているが、決して完全な人間ではない。むしろ性格は悪いくらいとして描かれている。そこが最初はうざったいが、後半になると「気づき」による変化を明確にする点で大きな効果をもたらしている。

対する小出は終始穏やかである。それ故に川原は彼の本質に気づけなかったのである。

二人が出会う前に、小出に起きたことは何だったのか。それが分かった最後の場面で映し出される小出の表情は、演じる高橋一生の独特な風貌とも相まって、同じ表情なのに内なる感情が投影されているように映りとても印象に残る。

全力で愛したはずなのに幸運な結果をもたらすことができなかった。そんな悲しい経験をしたとして、それを癒やすことができるのも、また愛しかないのである。

適切かは分からないが、先日の小室哲哉氏の会見を思い出していた。その人がどのような感情を抱き、どれだけの愛を注いでいるのか。それは他人が簡単に推し量って裁定を下すべきものではない。いま巷で聞かれる反応の数々は、そうした緩やかではあるが大きな共通認識の下に発生しているものだと思う。

(75点)
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「伊藤くん A to E」

2018年01月14日 22時00分36秒 | 映画(2018)
全員悪人。


岡田将生が5人の女性を振り回すという設定と、その5人を演じるのが魅力的な女優陣であるという理由で観に行ったのだが、後で公式ページを見たら「男子厳禁!女たちの【毒】を観て、幻滅する恐れあり!」と書いてあった。確かに映画には幻滅したけど、女性であればこの話に共感するのか?

岡田将生演じる伊藤は、童貞であるという以外はほぼ予想どおりの屑っぷりで、違和感なく受け入れられた。しかし、女性たちの酷さはちょっと想定していなかった。

木村文乃佐々木希志田未来夏帆池田エライザといった、普通であれば放っておいても輝きオーラを発しそうな女性を配しながら、それぞれの魅力を潰すように映すというのはなかなかできない。

確信的にしたとすればこれはこれですごい。でも、映画を作る力量と話の好き嫌いは別だ。誰にも感情移入できない話に2時間も付き合うのは甚だ苦痛であった。

とにかく主人公の脚本家・矢崎がどうにも受け付けない。軽々しく他人を無様と言い放って自分の地位の高さを強調するが、一方で自分の言うことやすることにはまったく中身が伴っていない。

そんな彼女が面白ネタとして伊藤と周りの女を追っていくうちに、実はいちばん追い詰められていた自分の無様さに気が付くという展開なのだが、紆余曲折を描いた割りには彼女が目覚めたり成長したりという様子が見えてこない。

クライマックスで伊藤と二人きりになってお互いの考えをぶつけ合う場面では、無様でも自分はこれからも脚本を書き続けるというようなことを言っていた。しかし、彼女の心の奥に突き刺さるような痛い物語をしっかり描いていないから、無様な自分を受け入れるという言葉に説得力がない。

伊藤も伊藤で、「闘わないから負けない」「傷つけられるのがイヤだから同じ土俵には上がらない」(だったかな?)といった一見おもしろそうな台詞を吐くのだが、彼の行動が終始矛盾だらけのしっちゃかめっちゃかなので言葉以上に伝わるものがない。

そんな二人がこれからもそれぞれ生きていきますと言われても、そうですか、あまり関わりたくないですねとしか言いようがない。

同様にダメ人間ばかりを扱うW.アレン作品は好きなのに、何故本作が肌に合わなかったのかは自分でも不思議だ。

(40点)
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「キングスマン:ゴールデンサークル」

2018年01月13日 21時38分45秒 | 映画(2018)
2018年はエルトン先生で初笑い。


けしからん笑いでアクション映画に風穴を開けた「キングスマン」から約2年。英国紳士スパイが堂々の帰還となった本作。

前作のインパクトを超えることができるのかが最大の関心事だが、壮絶に殉職したはずのC.ファース演じるハリーが出演者に名を連ねている点も見逃せない。

メガホンを取るのは前作に引き続きM.ヴォーン監督であり、期待はいやがおうにも膨らんだ。

その期待に応えるべく、冒頭から超高速のアクションシーンが展開される。

高級テーラー「キングスマン」から出てきたエグジーを襲ったのは、かつて同じ訓練生としてキングスマンへの採用を目指していたチャーリー。あれよあれよという間に「キングスマン」は建物もろとも爆破され、前作で苦楽を共にした仲間のロキシー、友人に飼い犬までも一瞬で吹っ飛ばされる。

本気の証なのか、ストーリーの足かせを除いたのかは何とも言えないところだが、上映開始20分にして前作を引っ張るものは影も形もなくなった。

そんな壊滅状態に陥ったキングスマンに救いの手を差し伸べる役どころとして、キングスマンの兄弟組織であるステイツマンが登場する。

続篇の見どころは、このステイツマンだ。水面下で世界の平和を守るという成り立ちは同じだが、英国と米国の違いさながらにことごとく対照的な両組織。

キングスマンのアジトが英国紳士の象徴であるスーツの仕立て屋ならば、ステイツマンは西部劇によく似合うバーボンの蒸留所。ステイツマンのエージェントは、もちろんテンガロンハットにジーンズのカントリースタイルである。

蒸留所の稼ぎは良いらしく、ステイツマンは快くキングスマンの手助けを引き受ける。この辺りも、かつての大英帝国から世界の覇権を譲り受けた米国の姿と被る。

そして前作の名場面をステイツマンが再現してお株を奪う。ハリーが復活した直後のバーでは、勘が戻らないハリーに代わってステイツマンのエージェント"ウィスキー"が投げ縄アクションでキメる。アメリカ一番、アメリカファースト。USAコールが起こりそうな勢いだ。

しかし、英国と米国の関係はおもしろいもので、いくら米国が世界一の大国であっても英国の誇りはそれを上回る。キングスマンも黙ってはいない。敵の本陣へ果敢に乗り込んで颯爽と相手を蹴散らしていく場面で面目躍如。アクションは全体的に、前作同様テンポが良くビジュアル的に映えた。

ビジュアルでもう一つ言及したいのは、J.ムーア演じる麻薬密売組織のボス・ポピーが作り上げた1950年代の町である。明るい配色と古き良きのどかな音楽をバックにポピーが下す凄惨な裁き。けしからんキングスマンの真骨頂が現れた舞台装置となっていた。

そこに拉致された大スターという設定で登場したのが"サー"E.ジョンであった。前半で「E.ジョンが失踪」という新聞記事が見切れていたので、カメオ出演程度に思っていたのが、後になるにつれ存在感が急拡大。最後はポピーの鼻っ柱を折る活躍で、本作最大の痛快をもたらしてくれた。70歳を過ぎてもまだまだ元気。これからも良い曲をたくさん書き残してほしいと切に望むところである。

ハリーの復活はあり得ない話ではあるが、娯楽映画という前提であればもっともらしく受け取れる範囲だったのではないかと思う。それよりも、他のいろいろな人が退場してしまったのが悲しかった。容赦ないのが持ち味と言えばそれまでだが、次回作ではエグジーが葬られてもおかしくないぞ、これは。

(80点)
コメント (2)
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