Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「はい、泳げません」

2022年06月25日 01時04分33秒 | 映画(2022)
助けがほしくて、ただ手を伸ばした。


6月は映画館へ行かないうちに20日を超えてしまった。ちょっと空き時間ができそうなので、何を観ようかとラインナップを当たってみた。

世の中的には、空前のヒットとなっている「トップガン:マーヴェリック」が最有力なのだが、何を隠そう前作を見ていない。加えて最近気分が低めで、どうにもノリの良い作品を観る気にはならず、「傷ついた人生に光を灯す」という言葉が宣伝でうたわれていたこちらの作品を選んだ。

大学で哲学を教える教授・小鳥遊雄司は顔を洗うこともできないほどの水恐怖症であるが、ある日一念発起して水泳教室に入学する。

教室では薄原静香という女性がコーチを務めていた。「人魚のようなコーチ」と書かれているが、小鳥遊が教室に通うようになったのは彼女が目的ではないらしい。

その謎は、小鳥遊が水への恐怖を拭い去るのと同じスピードで少しずつ解き明かされていく。彼は未来のためにではなく、過去と向き合うために泳げるようになろうとしていたのだ。

外から水の中の世界が見えないように、水の中には別の世界が存在する。泳ぎを習得した小鳥遊は水の中で子供の声を聞く。そして閉ざされた記憶の底にある過去の風景が見えてくる。

一見コミカルに捉えられるタイトルと裏腹に、映画の後半は人生を一変させた出来事に立ち向かおうとしては挫折する小鳥遊の苦悩が続き重苦しい。

ただ、そこを完璧に癒やすのが静香コーチを演じる綾瀬はるかである。

凛とした女性の役を多く演じているにも拘らず、彼女は常に「天然」の衣をまとっているように見える。今回の、屋外に出るとまったく人が変わってしまうという設定は少し行き過ぎの感はあったが、彼女が演じると、これはこれでありかもと思ってしまうところが凄さである。

彼女のキャラクターに限らず、水泳教室で一緒になるおばちゃんたちの設定や会話など、いかにも邦画な居心地の悪さを感じる演出は多かったが、綾瀬はるかに癒してもらえたのでプラスマイナスゼロ。水泳教室に思い切って飛び込んだ小鳥遊と同様に、映画館に足を延ばしたから救われたというところか。

(65点)
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