yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

のらくら 考

2015-07-26 05:26:19 | 文化
「のらくら」に関する話です。「のらくら」を広辞苑で調べると次のように書いてあります。
(1) なまけ遊んで日を送る。また、その人。
(2) ぬらりくらりと、とらえどころのないさま。
 
ドイツ文学者でエッセイストのような方にも、退職後、のらくらを決めこんでおられる人が
おられるようです。ドイツ語には「神様のノラクラ者Herrgotts Tagedieb という言い方があるそうです。ドイツの若い人が、まだ自分が何をしたいのかわからず、職探しをしないでいるとき、しばらく大目に見るというときに使われる言葉だといいます。ドイツの大学生は
卒業するとたいてい長期の旅行をする、就職活動はその後のこと。神様公認のノラクラ制度が健全に生きているそうです。日本から見ると羨ましい、と言えるでしょう。
 さて、遊民の系譜をたどっていくと、江戸時代の旗本、御家人に行き着くようです。武士といってもせいぜい寄合席か小普請請役のお役目で、きわめつきの閑職です。ましてや、二男、三男というと厄介者、余り者とされノラクラを運命づけられていました。日本最古の釣りの指南書「何羨録(かせんろく)」はこのようなノラクラ暮らしから生まれたそうです。これは陸奥黒石藩の3代当主であった津軽采女が27歳のとき職務と屋敷を返上して巷に逼塞してもっぱら趣味に没頭していましたが、そのときに得た知識を元に1723年に著したと言われます。釣りの話は勿論、天候の予測の話など、巾広く詳しい内容が盛りこまれているということです。タイトルの意味は「何も羨ましいことはなどない」と意気軒昂です。優れた高等遊民といえるでしょう。

私など、無芸小食の平凡な者も、日々、のらくらと過ごしています。

  池内紀(おさむ) 「ノラクラ者の系譜」學士會会報 No.913 2015―Ⅳ
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