yoshのブログ

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猫を贈らる    陸游

2015-07-20 05:18:58 | 文学
南宋の詩人 陸游の猫の漢詩二つです。

贈猫

裹塩迎得小狸奴
尽護山房万巻書
慚愧家貧策勲薄
寒無氈坐食無魚

猫ヲ贈ラル

塩ヲ裹(つつ)ミテ迎エ得タリ小サキ狸奴(りど)
尽(ことごと)ク護ル山房万巻ノ書
慚愧ス家ハ貧シクシテ勲(いさお)ニ策(むく)ユルコト薄ク
寒キニモ氈(せん)ノ坐スル無ク 食ニ魚無シ

「訳」

塩をお礼につつんで、小さい猫を迎え入れたところ、書斎をうずめる万巻の書をすべてネズミから守ってくれた。恥ずかしいのは、貧しくて猫の手柄に十分報いられず、寒くても座る毛氈もなく、食事に魚もやれないことである。

「鑑賞」
漢詩に猫が登場するのは珍しい。1183年陸游59歳の作。猫への愛情と感謝を率直に賦しています。「狸奴」は猫の雅称。当時の陸游は貧しかったのですが、故郷の生家は紹興きっての名門でしたから膨大な蔵書があったのでしょう。詩のタイトルは「猫に贈る」ともいわれますが、私は「猫を贈らる」のほうが分かりやすいのではと思います。「食に魚無し」は、斉の孟嘗君の食客が待遇改善を求めて「長鋏よ帰らんか、食に魚無し」と歌った故事(史記)をふまえた句です。

 十一月四日風雨大作     陸游

風巻江湖雨暗村
四山声作海濤翻
渓柴火軟蛮氈暖
我与狸奴不出門

風ハ江湖ヲ巻キ雨村ヲ暗クシ
四山声ハ作(おこ)リ海濤翻ヘル
渓柴ノ火ハ軟カクシテ氈蛮ハ暖タカシ
我狸奴トトモニ門ヲ出ズズ

「訳」

風は江湖に吹き荒れ雨で村は暗い
四方の山は山鳴りし海も荒れ狂っている
室内は柴の火が軟らかく燃え敷物は暖かい
自分も猫も門から出ることなく家に閉じこもっている

 井波律子「中国名詩集」 岩波書店



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