山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

2010年北海道くるま旅でこぼこ日記:第16日

2010-09-13 03:47:25 | くるま旅くらしの話

第16日 <7月25日(日)>

【行 程】 

びふかアイランドキャンプ場 → (R40) → 音威子府駅 → (R275)→ 道の駅:ピンネシリ → クッチャロ湖畔キャンプ場(泊) <162km>

今日は美深を後にする日である。昨日に引き続いての快晴の空だった。もう蝦夷梅雨も終わったのかと思うほどだが、まだまだ油断は出来ない。日射しはきつくても、湿度は低くて、そよ風が実に心地良い。Wさんがここに長期滞在されるのも良く解るように思う、我々も何時の時期かからは、動き回るのを止めて、じっくりと北海道の夏の良い部分を味わいながら、一所に留まって過したいと考えている。古希を終え、来年辺りがそのスタートとするに適しているのかも知れない。

出発の準備を整えた後、お別れする前のひと時をWさんのテントの中で、Mさんご夫妻とご一緒に歓談しながら過す。昨年ここでご一緒した時にWさんが撮られた写真を頂戴し、恐縮する。写真を見る限りでは、お二人とも今の方がお元気に感ずるのだが、Wさんは、来年は会えないかもしれないなどとおっしゃるので、チョッピリ心配にもなる。でも、昨年も同じ様なことをおっしゃっておられたし、その様なセリフを言われる時には、密かに来年も必ず来るぞ、というような覚悟の一端が笑顔の中に潜んでいるように思えて、大丈夫だと確信するのだ。それにしてもご夫妻の旅を楽しむ人生に賭ける姿勢には、心を打たれるのである。この地に留まっておられても、Wさんご夫妻のお顔を見たいと訪ねてこられる方は絶えることがない。もう25年以上も続けて、旅の中に北海道の夏を過ごされている、その過し方の豊かさが大勢の人の心につながっているのだと思う。ただ単に、自分勝手に旅を楽しんで来ただけでは、これほどの人とのつながりは実現できないように思う。改めてこのご夫妻の生き方の素晴らしさを思った。

11時半となり、Wさんご夫妻、Mさんご夫妻に手を振られながら、名残りを惜しみつつ美深キャンプ場を後にする。今日これからは、一路浜頓別町のクッチャロ湖畔にあるキャンプ場を目指す予定である。浜頓別町といえば、最近は砂金採りで有名となっているけど、我々が気に入っているのは、冬季に白鳥の飛来で有名な日本最北端の湖のクッチャロ湖である。白鳥と同じように(?)湖畔に羽を休めてここでゆっくりするのが、最近の北海道行の楽しみの一つになっている。いつも訪ねるのは夏だけなので、白鳥を見たことは無い。今日は晴れているので、もう一つの名物である夕陽が見られるかもしれない。空だけではなく、湖全体を真っ赤に染め上げる夕陽は感動的である。何年か前に幸せにも2日連続してそれを見ることができ、その感動をもう一度、いや、何度でも味わいたいと思っている。

美深を出て、30分ほど走ってJR音威子府駅前に車を止め、蕎麦屋さんを探す。昨日Mさんから頂戴した蕎麦が実に野趣溢れた味の美味さだったので、音威子府村産のその蕎麦を手に入れ、もう一度食したいと思った次第。なんだかんだ言いながらも、食うもののこととなると、卑しさは変わらない。真っ黒いまるでイカ墨を練りこんだような色をしたその蕎麦は、北海道の土地の香りが封じ込められているようで、それをもう一度確認したいと思ったのである。駅前に販売店があったので訊ねたら、駅舎の中のお店の方で売っていると、駅まで案内してくれた。行って見ると、何人もの人たちが丼に入れた黒い蕎麦を啜っていたので驚いた。バイクやくるま旅の人たちには、ここは名の知れた場所なのかも知れない。いつも近くにある道の駅に寄るばかりで、JR駅の方には来たことがなく、初めて知ったのだった。その店頭に並べられた生蕎麦は、間違いなく昨日食したそれだった。さっそく買い入れる。明日の昼にでも、もう一度あの食感と風味を味わうことにしよう。その後、道の駅の方にも寄ったが、ここには野菜などは全く置かれておらず、直ぐにパス。

音威子府からR40と分かれて、R275に入り、浜頓別町方面へ。頓別というのは、頓別川の沿ったエリアの地名のようで、今回はアイヌ語地名辞典を置いてきてしまったので、頓という意味が解らない。別というのは、確か川のことだったと思う。頓別川ではその昔砂金が採れたらしい。最近の砂金堀りブームは自然のものではなく、予め撒いておくというやり方でつくられたようだ。若しかしたら、自然のものも採取できるのかもしれないけど、真偽はわからない。頓別と名の付く地名は幾つもあるらしくて、車を走らせていると、中頓別、小頓別、下頓別などというのが出てくる。そして最後がオホーツク海に面した浜頓別である。

途中、中頓別町の道の駅:ピンネシリというのに立ち寄る。ここは北海道の北部の山として登山者に人気のある敏音知(ぴんねしり)岳の登山口にある道の駅である。近くに温泉もあり、泊まったこともある。敏音知岳には未だ登ったことはないけど、700mほどの高さだから、この歳では手ごろな山なのかも知れない。今のところ、山にチャレンジする気分は持ち合わせていないので、ただそう思うだけである。

道の駅で野菜などを買おうと思っていたけど、大根や白菜、レタスなどが少し置いてあるだけだった。店の人に、この辺りでは野菜が穫れないの?と訊いたら、いや、たくさん穫れるという返事だった。ただ、種を播いて育てるのは難しく、苗を持ってきて植えつけるとのことだった。寒さが影響しているのだと思った。それにしても「たくさん」という意味合いが、自分と地元の人とでは大きく違っているようだ。自分としては種類や量のことを訊ねたのだったが、回答する側は、野菜もちゃんと育つということを強調したかったらしい。土地によって、ものの考え方はいろいろだなと思った。レタスと大根、それに大葉を買う。そのレタスをパンに挟んで食べて、今日の昼食は終り。

再び走り出して、浜頓別の町に到着したのは、13時半頃だった。キャンプ場に行く前に、食材を仕入れようと、新しく出来たらしいスーパーに寄る。以前、この町には小さなスーパーしかなく、驚くほど高い値段で食材や酒などが売られており、要注意感を抱いたものだった。それが、この頃はコンビニや大型のスーパーも出来て、他のエリアとさほど変わらない状況になったのはありがたい。その分困っておられる所も出現したのには申し訳ないけど、消費者としては仕方がない。少々買物をして、目的地のクッチャロ湖畔へ。

とにかく朝からいい天気である。今日は、北部北海道の全域がこのような晴れ渡った空のようである。日射しは強いけど、湖を渡って届く風は爽やかで気持ちが良い。かなりの数のキャンパーのテントが点在していた。その多くはバイクで廻っている人たちのようである。キャンピングカーは少なくて、時折やってきてもこの地の良さが判らないらしく、直ぐにどこかへ去ってしまっていた。結局残るのは自分たちだけなのかも知れない。売店の事務所で受付を済ませ、湖畔のフリースペースに車を止める。窓の直ぐ傍はさざ波の波打つ湖面である。静かにゆったりと広がる湖は、澄んだ空の雲を湖面に浮かべて、旅の疲れを静かに労わって拭い去ってくれるようだった。

今日から3泊して、半月を過ぎた旅の疲れを癒すつもりでいる。懐かしい人たちにお会いできて、それなりの嬉しさと喜びを感じ味わった日々ではあったけど、時には自分たちが独り占めに出来る時間に浸りたい、というのも旅の贅沢な望みの一つである。この三日間は、その新たな贅沢を存分に味わいたいと思っている。

今日のこれからの楽しみは、何といってもあの夕陽の感動をもう一度味わいたいことである。未だ14時を過ぎたばかりで、日が沈むまでにはかなりの時間があるので、先ずは一眠りすることにして、寝床の中へ。外はかなりの暑さだが、車の中は窓を開けると風が通って、快適である。近くで、先ほどから鶯が一羽、盛んに歓迎の挨拶のさえずりを届けてくれているが聞こえてきた。ここの鶯の鳴き声は、「ホー、ホケキヨ」が正調らしい。一般には鶯の鳴き声は「ホー、ホケキョ」と最後が詰まってキョと発声するのだが、この鶯は、最後の一声を詰まらせずにキヨと明確に発声している。これはRVランド農園の近くで鳴いている一族と同じだなと思った。守谷市近郊では、コジュケイの鳴き声をまねているのか、「ホー、コッチャコイ」などと鳴くのもいて、おかげさまでこの頃は鶯君たちの鳴き声に知らず興味を持つようになってしまっている。鶯という鳥は、意外と我々の身近で暮らしていて、結構人間どもの暮らしぶりに関心を持っているようである。その様なことを思いながら、たちまち眠りの世界に入ってしまった。

一眠りして目覚めても未だ日はかなり高かった。日が沈むのは19時近くになるのであろうか。丁度お日様が沈む辺りに雲があって、それがべったりと続いているようである。あの雲が割れていると、日が沈んでもそこから差し込んだ光が、湖面を赤く染めてくれるのだけど、どうやらその可能性は低いようである。その後、待ちに待ってようやくその時が来たのだったが、やっぱり偶然を期待したのは無理だったようで、ほんの少しばかり湖面を赤い色にしただけで、今日の夕陽は何だか寒々とオホーツクの海の彼方の雲の陰に沈んでいってしまったようである。ま、あと2回チャンスがあるので、それを待つことにしよう。

   

今日の夕陽。空は晴れていたのだが、夕陽が沈む方向に厚い雲があり、これがこの日最大のそれらしき光景だった。

夕食は久しぶりに食欲が湧いたという邦子どのは、これまた久し振りの焼き肉。自分の方はこのところ少し歩き不足で、やや太り気味なので、ビールのアテにオニオンスライスと鯖の水煮の缶詰だけで済ます。これでも少しカロリーの摂り過ぎなのかもしれない。NHKの大河ドラマを見て、終わると直ぐに寝床の中へ。

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