山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

今の気持ちは?という質問

2011-03-26 11:04:30 | その他

 「今のお気持ちはどうですか?」「今の気持ちは如何ですか?」というアナウンサーやインタビュアーの投げかけ質問を聞くことが多いのが気になっています。マラソンの勝者や逆転満塁ホームランをかっ飛ばしたヒーローへの質問の定番となっているようですが、そのような場面以外でも、多くのアナウンサーなどはこの質問を使うのにためらいがないようです。

被災地で、直面した現状にどう対処しようかと苦悩中の人に対しても同じように「今のお気持ちは?」などとやっているのを見ていると、そのあまりの安易さに腹が立ちます。「黙れ!」と言いたいのを抑えて見ていますが、時には思わず「バカ!」といってTVのスイッチを切ることもあります。質問者の無神経さ、心遣いのなさに怒りを覚えます。丁寧語を使えばどんな質問をしてもいいのか、質問をするような仕事についている人たちは、不断からもっと人間の気持ちについての勉強をして貰いたいものです。

今回の被災報道の様々な場面でのインタビューを聞いていて、一番腹が立ったのは、ある避難所で不安におののきながらも表面は元気にしている高齢近いお二人のご婦人に対するインタビューのやり取りでした。長期間の避難所暮らしであり、周辺当局がもっと条件の良い場所への移転を勧めている状況の中で、そのご婦人たちは移転を拒み続けているのでした。そのことについてのやり取りの中で、

(インタビュアー):もっと良い所へ避難はされないのですか?

(ご婦人):いや、避難したくはない。

(インタビュアー):この避難所が良いということですか?

 (ご婦人):‥‥‥。

というようなやり取りがありました。言葉は正確ではないですが、これだけ聞いていると別に普通じゃないかと思われそうですが、私はインタビュアーの「この避難場所が良いということですか?」という投げかけに唖然としました。何という無神経さだろうと思いました。ご婦人たちの気持ちをどう汲んでいるのかと思いました。ご婦人たちが一番行きたい所は自分の家なのです。そして他所に移転などせずにここに止まりたいのは、ここが自分たちが長い間暮らしていた場所だからなのです。決して、断じて避難所が気に入っているなどということではないのです。そのことは、ご婦人たちの「‥‥‥。」という反応を見れば判ります。

私は人の気持ちというのは、元々安易に聞くものではないと思っています。聞くものではなく感じ取るものだと思っています。効率的な考え方からは、まどろっこしいという批判を受けそうですが、「気持ちを聞かせろ」といわれて、自分の心の中を的確に話せる人など稀有のことであり、せいぜい相手が思っているのに合わせるくらいしかできないはずです。それはやらせと同じことのように思います。

気持ちというのはこちらが察するものであり、聞き出すものではないというのが私の考えです。何でも言葉に出して確認しなければ本当のことは解らないなどと考えるのは、アバウトもたいがいにせい!という世界ではないでしょうか。恋人でもない女性に向かって、いきなりお前の気持ちを聞かせろなどという男は、生涯恵まれた結婚はできないのと同じです。

この大事件の緊急事態の中で、記者やアナウンサーの人たちも目いっぱい頑張って仕事に打ち込んでいるのは良く判りますが、不断の人間理解に対する鍛錬をもっとお願いしたいと思います。時間に追われる報道という仕事の中で、早く目的を達したいという気持ちは判りますが、視聴者から見た時に人間性を疑われるような内容の発言などが飛び出さないように、不断から自分の人間理解力を鍛えておいて欲しいと思います。どこかの放送局では、大地震の報道と自分たちの暮らしは別との考えから、醜態をさらけ出したとの話がありますが、人間としての表裏や二面性は免れないとしても、人間理解に対するしっかりとした背骨を持っていて欲しいと思います。報道に係わる方々が皆そのような人ならば、我々はブレない安心感のある報道の恵みを受けることができるのですから。

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