山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

買いだめをしない勇気

2011-04-13 06:39:05 | その他

  東日本大震災に出くわして早くも1カ月が過ぎました。未だにその被害の全容もつかめず、行方不明の方々の消息も途絶えたまま、被災地で厳しい避難所の生活を余儀なくされておられる方も大勢おられるという現実が続いています。一方で大地震がもたらした原発事故という不気味な二次災害が深刻さを増す中で、新たな避難生活を強いられる方たちも続出しており、この大事件はこれから一層の難題を膨らませつつあるような思いがしています。現地に出向くこともままならず、遠くから小さな祈りを奉げるだけしかできない己の無力さを感じながらの毎日が続いています。

今回の大震災の出来事の中で、自分自身にも直接・間接に係わることが幾つかあります。その一つに買いだめという行為があります。私自身が買いだめをしたという思いはないのですが、ともするとその方向にブレかけたことが何度かありました。このような感慨を持たれている人はかなり大勢おられるのではないかと思います。

地震が起きて真っ先に感じたのはこれから先の暮らしにどのような影響が出るかということでした。これは津波に襲われた地域以外に住む人たちには共通の気づきではなかったかと思います。私の場合真っ先に思ったのは、とにかく車の燃料だけは入れておこうということでした。ひどい揺れが収まった後、しばらくTVを見ていましたが、ハッと気づいて直ぐに給油スタンドに直行しました。その時は給油のために車が列をつくるなどという気配は全くありませんでした。軽自動車ですから満タンにしても20L足らずです。旅車の方は未だかなり余裕があり、旅に出る予定もありませんでしたので、給油は見送ることにしました。その他のものについては、食料も水も全く考えませんでした。

ところが夕方になって外を歩くと異常事態が始まっていました。まずは給油所に車の列ができていたことです。そしてスーパーへ行くとパンや牛乳、インスタント食料品などの売り場の棚が空になっていたり、なりかけた状態となっていました。そして翌日はこの状態が益々酷くなり、米すらも売り場から消え去っていました。いわゆる非常時に必要と目される物の殆どが買いだめの対象となり、無くなり出したのです。それは被災地の現状が明らかになり出すと共に益々ひどくなっていった感じがします。滑稽さを覚えるほどのひどさでした。

このような事態が1週間以上続いたと思います。我が家では多少在庫もありましたので、そのような動きに振り回されないように努めることにしました。このような時には、概して家庭内の権力を握っている主婦といわれる立場の人が大騒ぎして走り回る傾向が強いのだと思いますが、我が家の主婦はそのようなタイプでないのが幸いでした。物不足で困っているのは被災地なのですから、被害にも遭っていない者があわてて余分な買い物をする必要はないのです。そのような理屈は解っていても、それは一般論であって、自分の家だけは別であり、少しでもいいから安全・安心を確保しておきたいというのが多くの人々の気持ちなのだと思います。そして、その積み上げが売り場を空にするという結果につながっているのだと思います。

このような人たちの心の働きを止めるのは至難のことだと思います。先行きが見えない非常時の心理は、人間から大局的な見方や思考を失わせ、当面の自分の安全をどう確保するかに目一杯走らせるようです。これはもしかしたら本能の働きでもあるような気もします。ですから幾ら自制を呼びかけ、非難しても届かないのだと思います。何しろそれとこれは別という受け止め方なのですから。

3週間ほど経って、ようやく給油所に並ぶ車の列は消え、スーパーの売り場の状況も元に戻りつつありますが、現在でも単1の乾電池や水などは殆ど見かけず、あったとしても限定販売となっています。現在まで残っている買いだめの対象品は殆どが二次災害である原発事故に起因するもののようです。

買いだめの心理というものは、少しばかり先の将来に対する不安に発しているのは明らかであり、その解消のためには何よりも不安の原因を無くすことが肝要です。少なくともその原因を取り除く見通しくらいは明確にしなければ、口先だけの大丈夫では人は決して納得しないように思います。今この国に求められるのは、早急な原発事故の収束です。

もう一つ買いだめについて思ったのは、それに振り回されないために必要なのは、正しい知識と正確な情報なのだということです。前述の目の前の将来に対する不安を解消するためには、その原因を無くすことが第一であると同時に、その問題がどのようなものかに対する正しい認識なのだと思うのです。そのためには正確な知識と情報が不可欠です。そしてそれは与えられるのを待つのではなく、自ら求める必要があります。何といっても問題は他人事ではないのですから。

更に最後に最も大切なのは、これらの問題に対する正しい認識に基づいた信念ある行動だと思います。それを生み出す心の働きを勇気と呼ぶのだと思います。勇気は覚悟によって支えられているとも考えます。買いだめをしない勇気と覚悟を持てるように心がけることが何よりも大切だと思いました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 余震の日  | トップ | 慈悲の花  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事