山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

眠り薬

2007-12-22 03:02:18 | 宵宵妄話

私の眠り薬といえば、それは本を読むということである。この習慣は、就職してしばらく経って、個室で過ごせる生活が始まった頃からずっと続いている。疲れて、眠り薬など無用な時期も多かったが、この頃は概して毎日が暇なので、午睡の時も夜寝の時も、枕元に本は欠かせない。眠れなくて本物の薬を飲む人も結構多いようだが、そのような方は真にお気の毒だと思う。

眠り薬としての本は、どのような領域のものでも構わないのだが、襟を正して読まなければならないようなものは、これは別である。私の本に対する姿勢は、領域を問わずの乱読であり、普段は速読を心がけているが、寝る時にはそのようなことは忘れて、好きな箇所を好きなように時間をかけて読むようになった。それは当たり前のことかも知れないが、実に楽しいのである。

生涯に読める可能性のある本の大半は、もう揃っていると思っている。本棚には、まだ読まない本がたくさん並べられている。恐らく死ぬまでかかっても読みきれないに違いない。30年経っても、一度も開いたことがない本(全集に多いのだが)は、恐らくこれからも開かないのだと思うが、それでも本に囲まれていると何故か安心するのである。

眠り薬となる本の大半は、時代小説などの読み物である。好きな作家もたくさんあるけど、特に好きな人を敢えて5人挙げるとすれば、池波正太郎、藤沢周平、山本周五郎、平岩弓枝、澤田ふじ子となるだろうか。この他推理小説などもファンだから、結構忙しい。歴史や宗教、天文・宇宙、地学などにも関心があるし、その時々で飛び火ばかりしているので、何を読むのか落ち着かないのが実態だ。

本はいつも新しいものばかり読むかといえば、この頃はその傾向は急速に衰えて、再読、再々読というのが多くなった。先のブログに、毎年1回は必ず読むシリーズが幾つかあって、「鬼平犯科帳」のことを書いたが、この他にもたとえば、平岩弓枝の「御宿かわせみ」や澤田ふじ子の「公事宿事件書留帳」などは欠かせない。

今読んでいるのは池波正太郎の「剣客商売」である。池波先生の本は、シリーズものが多く、話がつながり、まとまっているので、読むのが楽しい。「仕掛け人・藤枝梅安」シリーズなどは、表紙がすり切れるほど何度も読んでいるが、読む度に益々面白さが増す。池波先生の大ファンであり、先生が70歳代にして亡くなられたのを真に残念に思っている。

剣客商売は、実に面白い本である。秋山小兵衛という剣術遣いを中心に、その周辺に起こる出来事を書いたものだが、道場を閉じた、今流に言えばリタイアした後の、融通無碍(ゆうずうむげ)の自由な境地での暮らしぶりが、実に巧みに述べられているのである。これは池波先生ご自身の心境を、秋山小兵衛という人物を通して語っておられるように思うのだ。書き手ご自身が一番楽しみながら、物語を書いておられるように思う。

古希に一歩近づいて、この頃は、このような書き方が出来るようになりたいものだと思ったりしている。このような物語は、若い人には決して書けないのではないか。40歳も年下の女性を嫁にしての自由自在の暮らしぶりは、呆れ返るよりも真にもって羨ましく思えるのである。女性陣には不評かもしれないけど、男ならば、出来ない現実を飛び越えて、小兵衛さんのような暮らしをしてみたいと考えるのはごく普通ではないかと思う。

眠りに就いた後の夢の中で、我も秋山小兵衛に成り代って、主役で登場できればいいなと思ったりするのだが、それが実現した例(ためし)はない。それどころか、この頃は夢さえも殆ど見なくなった。目覚めれば、隣人に鼾(いびき)がうるさかったと非難されるばかりである。夢と現実の差がこれほど大きいのが現実なのである。

私の眠り薬は、今までは旅に出ると午睡が出来る時以外は殆ど使えなかった。夜になると電源の確保に不安を感ずるからだった。それが、ソーラーを取り付けた事で、どうやら大丈夫となったようである。これからは、旅先でも中毒するくらいその薬を多用して楽しみたいと思っている。

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