忍冬よ 昭和は遠く 去り逝きぬ
忍冬の 幼き夢の 甘さかな
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「忍冬」と書いて「スイカズラ」とも読む。蔓類には珍しい常緑の植物で、冬も緑を湛えているからの呼び名なのか。今頃がこの花の最盛期である。この花を見ていると遠い遠い、昭和20年代半ばの幼い頃を思い出す。
この名を知ったのは、小学校4年生の頃だったろうか。職員室に入った時に、先生の机の上にガリ版刷りの冊子が置かれていて、その表紙に「すいかずら」と平仮名で書かれていた。先生たち有志の何やら作文集のようなものだったらしい。先生に訊いたわけでもないのに、何故かその表紙に書かれていた「すいかずら」の文字がずっと記憶に残った。
「すいかずら」が植物の名だったのを知ったのは、ずーっと遅くなってからで、50歳の頃糖尿病を宣告されて歩くようになって、朝の通勤時に道端の植物の観察を始めてからだった。しかし、その通勤路にはスイカズラはあまり見かけることが無く、本物を知ったのは還暦近くになってからだろうか。
今は住い近くの高速道脇の植え込みの藪を仕切る金網柵に絡みついて、至る所に茂って花を咲かせている。この花を引き抜いて、その先っぽを舌に当てると、ちょっぴり甘さを感じる。子どもの頃にツツジの花の僅かな蜜を味わったと同じ思い出が甦って来る。あの頃はスイカズラがどこにあるのかも知らなかった。もうその昔は決して戻ることはないのだが、スイカズラの花の蜜にだけは、思い出が止まっているようだった。
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