山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

くさびら行から:その2「くさびら探訪」

2008-11-06 05:22:53 | くるま旅くらしの話

さて、今日は何はともあれキノコ採りの実際から感じたことなどを書いてみたい。

ところで、念願のキノコの鑑定会のご案内を頂いたのは、神奈川県藤野町(現在は相模原市)にお住まいのT先生からで、T先生はK大学で教鞭を執られる傍ら、Jリーグのマッチコミッショナーなどもお勤めになっておられるスポーツ指導界でご活躍のお方である。26歳までサッカーの現役選手としてご活躍だったとか。実に清々しいスポーツマン紳士である。

偶々同じキャンピングカーをお持ちで、販売会社が仲立ちして年に何度か行なわれるクラブキャンプのメンバー同士であり、そこでご縁を得たのだったが、6月に行なわれたキャンプの時に、キノコの話をお伺いし、それが実に面白かったのである。秋になったら是非ともその鑑定会を見学させて欲しいとお願いしたのだった。

一見キノコとはあまりご縁のなさそうな方とお見受けしていたのだったが、実際にお住まいのある藤野という町に行ってみると、たちまちその疑問は吹き飛んだのだった。

藤野町は相模湖を取り囲む山又山の風光明媚な所である。甲州街道を通るたびに、この町を何度も通過して知ってはいたのだが、この地に足を向けて町の様子を拝見したのは初めてだった。海からは少し遠いけど、相模川上流を塞き止めて造られた相模湖は、かなりの大きさで、釣やボートなどで訪れる人も多い。相模川以外にも幾つかの渓流が湖に流れ込んでいるようだ。その湖を囲んで、幾重もの山が連なっている。5~600mほどの山で、それほどの高さはないけど、雑木の山が多く、キノコの発生には絶好の場所だなと思った。

先生のお宅から見渡す山の彼方からは、時に雲海のように霧が湧き立ち、それが膨らみ消えてゆくのが望見できるというお話だった。何とも大自然真っ只中という場所にお住まいなのである。キノコへの関心が生まれるのは当然のことではないか、と勝手に思ったのだった。

初日、先生のお車で甲州街道の北側のエリアへご案内頂いた。20分ほど走って車を置き、いよいよキノコ狩りの開始である。ワクワク、ドキドキである。急な斜面を登りながら、目は地面に集中している。先生のお話では、この辺には雑木の倒木や切り株などにナラタケなどが多く発生しているという。又モミの木の下には、アカモミタケというのが今頃出ている可能性があるということだった。これらは勿論食べられるキノコである。

何本かの名前の知らないキノコを見つけたが、先生は丁寧にその説明をして下さった。キノコには似たようなものがたくさんあり、それらの違いを見分けるために、その形状や色合いは勿論、襞(ひだ)を切って出てくる汁を見たり、茎に残っている出たばかりの時の名残りの襟巻き状のものが動くかどうかなど、或いは時には舌先でちょっぴり舐めてみて試してみるなど、様々な方法があるとのことだった。どうしても判別できない場合は、胞子などを顕微鏡で調べるとのことだったが、これは専門家の世界だとのこと。

11月になっているということもあり、その上このところの雨不足で土地は乾燥しており、きのこの発生には厳しい条件のタイミングだった。2時間近く探し続けたのだったが、ナラタケは既に時期を過ぎていて、切り株に残骸が残るのを恨めしく見るのみだった。アカモミタケへの期待が大きかったのだったが、雨不足がたたって見つけたのは数本だった。生える数が少ないとそれを食べようとする虫などのために、食い荒らされる確率が高まり、見つけた殆どが虫食いの酷い状態だった。残念だったけど、仕方がない。

   

採取したアカモミタケ。襞の部分に傷をつけると、赤い乳液が出てくる。白い乳液のキノコは多いが、赤いのは珍しい。食用としてもOKとのこと。

キノコ採りというのは、登りながら探すのが常道と教わった。キノコは上からだと傘の裏側が見えず、土や枯葉の色と似ているものも多いので、見つけ難いとのこと。下の方からだと、それがずっと見やすくなるということである。当たり前のようなことだけど、大切なポイントである。

又下ばかり向いて歩いていると、時に方向感覚を失い、自分の位置がわからなくなって迷うことがあるので、時々来た道や方向を確認しながら安全に気をつけることも大切だなと思った。知っている山でも迷うことがあり、知らない山に入る時には、特に要注意である。また、足を滑らすということがあるので、気をつける必要がある。落ち葉が積もっている道などでは、その下の状況が判らないため、石ころや棒の上に乗ってしまって足を滑らすことがある。捻挫などしたら一巻の終わりである。キノコ採りどころではなくなってしまう。先日藤野のこの近くの山でも、滑落して命を落とされた方がいるというお話だった。この辺には熊は居ないようだけど、猪はかなり居るとのこと。これらの動物たちと出くわすための用心として、鈴などを持参することも必要だなと思った。最近は、熊の出没がかなり多くなっている。浮かれてばかりいると、大変なことになるのだということを、改めて肝に銘じたのだった。

キノコが採れなかったのは残念だったが、久しぶりに山の中を歩いて、新鮮な空気を吸い、汗をかいて気分は最高だった。山の頂上から見下ろす藤野や上野原の町の集落、そして陣場高原も望見できて、十二分に満足できる山行だった。車に戻って、お宅近くにある温泉に入りにゆく。東尾垂の湯という天然掛け流しのお湯で、元々は温泉病院の立ち寄り湯だったものを新しく独立させて造った施設だとのこと。大勢の来客で賑わっていた。いい湯だった。

その夜は先生のお宅で、奥様が心をこめて作ってくださったキノコ鍋を囲んで、美酒に酔いつつ、キノコ談義をはじめあれこれと歓談に時の過ぎるのを忘れたのだった。

翌日は、12時からの鑑定会までの間、再び先生のご案内を頂き、鑑定会の行なわれるスポーツ広場に隣接する山を1時間ほどぐるーっと歩いたのだった。この山には幾つもの散策路が造られており、シーズンになるとその散策路付近にたくさんのキノコを見ることが出来るとのこと。初心者でも見つけることが出来るコースとして活用されているというお話だった。しかし、もうオフシーズンに入ってしまったのか、見られるのは猪が鼻や牙で餌を探して掘り返した土の跡ばかりで、キノコの方は昨日以上にさっぱりだった。

やがて12時となり、鑑定会が始まった。しかし店開きをしてもなかなかキノコを持ってこられる方が現れない。今日はもしかしたら誰も来ないのではないか、という先生のお話だった。毎回必ず鑑定会にお越しになるという、先生の師匠格のR先生がお見えになりご紹介を頂いた。キノコに大変お詳しい方で、著名な図鑑などの作成にも係わられていらっしゃるという。R先生はキノコへの情熱を注ぐ傍ら、現在は特にヤマネ(国指定天然記念物の小動物)の生態研究に力を注いで居られるとのことだった。このエリアには居ないとされていたヤマネを発見されたのだという。

しばらく経って、ようやくキノコを持参された方が一人、引き続いてもう一人、そして結局この日は3人の方がキノコを持参されたのみだった。持参されたキノコの殆どは、種類も少なく、本人もご存知のものだったが、中には迷って持って来られた物があり、それに対して両先生は実に的確に判別を下されていた。本物との違いの特徴を話されながら、時には持参した何種類かの図鑑などを開いて確認をされておられた。実に丁寧で判りやすい鑑定である。多くの方は、安心してキノコを扱えるようになるに違いないと思った。最盛期の鑑定会であれば、相当に面白いことがあるのだろうなと思った。来年は必ずもう一度見せて頂くぞと心に誓ったのだった。

昨日からのT先生の情熱と今日のR先生のキノコ鑑定への取り組みを見ていて、実に学ぶことが多かった。キノコの知識は経験をつむことで確実になって行くと思うけど、只判別するだけではなく、キノコという生き物に対する理解のための、より広く、より深い追求心の大切さを教えて頂いたのだった。

T先生からのキノコのお土産と土地の有志グループの方が作られたという手作りの味噌、それにトマトを頂戴して、嬉しくも恐縮千万であった。更に帰り際に、R先生がご自宅まで車を走らせてお土産にとコウタケ(=香茸)を乾燥させたものをお持ちくださったのには、これまた大感激だった。香茸は炊き込みご飯にすると最高だという。

キノコには知る楽しみ、探す楽しみ、味わう楽しみがあって、恐らくこの他にもたくさんの楽しみが付随して生まれてくるに違いない。早速図鑑を増やして、明日から来年のための準備をしなければと思っている。T先生、奥様ありがとうございました。R先生ありがとうございました。そして鑑定会にキノコをお持ちくださった皆様ありがとうございました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« くさびら行から:その1「くさ... | トップ | くさびら行から:その3「東... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

くるま旅くらしの話」カテゴリの最新記事