山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

昨日の話

2007-10-11 03:06:52 | 宵宵妄話

キンモクセイの香り漂う季節となった。散歩道の至る所からのその香りに酔いながら家に戻り、机に坐ってメールの画面を見ると、先日のシンポジウムの要録原稿のチエック依頼が来ていた。さっそく自分の分のチエックを終えたのだが、同じ守谷市内に住むKさんの発言内容分のチエックをしたいので、住まいやメールのアドレスを教えて欲しいとのことだった。Kさんもシンポジウムに来場され、会場から参加発言頂いたのであった。

Kさんとは、実は今年の北海道の旅で初めて知り合ったのである。別海町のキャンプ場に滞在していた時、入ってきたキャンピングカーのナンバーが、何と「つくば」だったのだ。つくばナンバーというのは、日本で一番遅れてスタートしたご当地ナンバーなのだ。他所の県では去年の秋にスタートしたのだが、茨城県は事情があって今年の2月に始まったのである。従って日本で一番新しいナンバーであるとも言える。私共もご当地ナンバーの発足にあやかり、引越し以前の多摩ナンバーを変更したのだった。88歳までのくるま旅の実現を祈願して「88-55」という数字を選択したのだった。

そのつくばナンバーのピカピカのキャンピングカーが入って来て、それが女性の運転だったので二度びっくりし、伺えば、何と同じ守谷市内在住の方だったので、これまた三度驚いたのである。同じ街に住まいを持つ者同士が、はるばると故郷を1000kmも離れた所で、初めて出会うというのも、旅ならではの不思議な縁である。同じ守谷市にくるま旅を楽しまれている方が何人居られるのか知る由もないけど、少なくともKさんが居られることを知って、妙に嬉しくなってしまった。Kさんは、別海でのその時は2泊ほどされて次の目的地に出発されたが、帰宅してからの再会を約してお別れしたのだった。

帰宅してドタバタしていて、Kさん宅訪問は叶わぬまま時間が流れ、その内にシンポジウムが開催されたのだが、その会場にKさんが見えられたのに気づいた時はびっくりした。シンポジウムの翌日、お礼のご挨拶にお宅をお訪ねし、親近感はいや増したのである。

そのKさんへの連絡はメールの方が良かろうと、未だ伺っていなかったアドレスを電話でやり取りして実際にテスト発信をしてみたのだが、これが何度やってもうまく行かないのである。私のアドレスには致命的とも言える間違いやすい箇所があって、そのことをお話して確認しながらやっていたのだったが、どうしても上手く行かない。考えてみれば車なら5分ほどで行ける距離なのに30分以上もかかってしまっている。これは行った方が早いと気づいて直ぐにお宅を訪問し、一件落着となったのであった。

実に他愛ない話なのだが、昨日お宅にお邪魔し1時間ほどくるま旅についてあれこれ話し合ったのだが、Kさんの旅への思いをいろいろお聞かせ頂いて、益々嬉しくなってしまった。共通の話ができる人を見出したというか、その様な方に巡り会えたということが何よりも嬉しいのである。

守谷市に越してきてから3年を経過しているが、親しく話ができる人は皆無に等しかった。隣近所の方とは挨拶程度に留まっており、少し淋しい思いを余儀なくされていた。新しく開発された住居区画では、戸建てもマンションも「隣は何をする人ぞ」と言う雰囲気が強くて、近隣内においての会話や対話の機会は滅多にないのである。

今の世は、高度情報化社会といわれるように、コミュニケーションのツールは異常に発達していると思うけど、生身の人間同士のコミュニケーションは廃れて、本当に理解し合う力が激減しているように思えてならない。本当の気持ちを表しえない言葉だけが電波や電流に乗って飛び交い、生き物としての人間が、顔と顔を合わせて話をするという基本動作のようなものが、どこかに置き忘れられているような気がする。携帯電話やインターネットは、本当に人間に幸せをもたらすツールなのだろうか? 何年か前「ケータイを持ったサル」という京大の正高教授の本を読んで、いろいろ考えさせられることが多かった。この本では現代の若者にスポットを当てながら、その親達やそれを取り巻く社会のあり方にメスを入れての問題提起がなされていたと思うが、それを読んで何だか危うい世の中になりつつあるような気がしてならなかった。

少し脱線したけど、旅での人との出会いは、それらのギャップや失望を埋めて有り余る喜びや感動をもたらしてくれる様に思う。人工5万6千人の守谷市の中に、3年以上も住んでいて、家族を除いて本当に楽しく、嬉しい本物のコミュニケーションが取れる人が、今までたった一人も見出せなかったという現実は大いに反省しなければならない。その不幸な現実を変える突破口となったのが、遠い旅先でのKさんとの出会いであった。旅には人が閉ざしている心を解き放つ不思議な力があるような気がする。私は、これからの人生の活力源をこの不思議な力に目一杯依存したいと思っている。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする