山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

久保桜と大明神桜のこと

2007-06-22 04:11:46 | くるま旅くらしの話

東北には桜の名木、古木が多いようです。どれほどたくさんあるのかわかりませんが、かなりの数に上るのではないかと思います。その中で、千年を超えるものということになると、これはかなり数が限定されてくるようです。

樹木の古木や大木には惹かれるものがあります。私のくるま旅くらしの出発は、屋久島の縄文杉に挨拶に行ったことから始まっているのですが、1日をかけて往復したあの時の感動は、永遠に消えることはないと思っています。樹木は明らかに生き物であり生命体だと思っています。生き物には、いろいろな生き方があるのだと思いますが、植物も千年を超えて生きているレベルになりますと、傍へ行くと何か普通でない命の本性のようなものを感じます。縄文杉は、最早杉などという樹種を超えた存在であり、その樹に宿った命の本体そのもののような感じを受けました。桜も、千年を超える樹となりますと、やはり樹の命が剥き出しになって、現れるような気がするのです。

今回の旅では、山形県長井市にある久保桜と大明神桜の2本の千年を越える桜の大樹を訪ねました。桜というのは、あまり温かい土地では命を永らえるのが難しいようで、どちらかといえば冬の寒さの厳しい、されど日当たりが良くて、水分の補給に苦労をしないような場所が長生きをする樹の条件のような気がします。その様に考えますと、山形県の置賜地方は、桜の存命には良い条件が揃った所なのかもしれません。長井市周辺には、桜回廊と呼ばれるエリアがあり、そこにはかなりの数の長命の名木があるようです。その全てを見たわけではなく、これからが楽しみだと思っています。

久保桜も大明神桜も樹種はエドヒガンで、大きさも略同じようなものですが、大明神桜は久保桜よりは樹高が3mほど高くて約19mあります。樹枝が東西南北に伸ばした広さは、久保桜の方が広かったようで、江戸の昔は「四反桜」と呼ばれていたとのことでした。

桜の古木としては、久保桜の方が有名なようです。というのも久保桜は花の艶やかさが目立つ咲き方をしているからではないかと思うのです。横に広がる感じの枝ぶりにつく花は、見る人により多くの感動を与えるに違いありません。久保桜は江戸時代に、その幹にあった洞に住み着いた浮浪者が火事を起こし、洞を燃やしてしまったため、九死に一生を得た形で、今はまるで二本の古木が身を拠り合わせて生きているような様子となっており、可哀想というか申しわけないという気分が入った観桜となってしまうのです。

幸いなことに最近の樹木の蘇生技術の発達により、久保桜のこの空洞を埋めて元の一本に戻し、新たな根を生やせしめて、本来の元気を取り戻すという、大手術が現在行なわれており、その成功を心から祈りたい気持ちです。この手術が成功した暁には、伊佐沢の久保桜は、ますますその存在感を高めるに違いないと思います。

知名度は久保桜には及ばないとしても、大明神桜も千年を超えた大木であり、こちらも花の季節には見逃すわけには行きません。今回の旅では、実はこの樹は個人の屋敷内のものであり、それを一般公開して頂いていることを初めて知りました。この樹が同じ屋敷に住む人たちを千年もの間、どのように見てきたのかと俄然関心を持つようになりました。そして、家内が、現在その屋敷に住んでおられる90歳のおばあさんと知りあったことから、この家に住まわれる方は、この桜に守られて、元気に長寿を保っておられるのではないかと感じた次第です。90歳のおばあちゃんから家内が頂戴した飾りの小さな手毬(てまり)は、とてもそのような年齢を思わせぬ素晴らしい出来栄えでした。おばあさんは、野良着姿で、畑の見回りから戻られた様子でした。大明神桜には、久保桜とは又違った親近感を覚えるようになりました。この桜はその近くに住む人たちをやさしく包み込んで、守っている守護神のような存在なのだと思います。

今回の旅では、この二本の名木の他にもたくさんの桜に逢いましたが、桜というのは、美しい日本の心を表す最高の花を咲かせる樹だと思います。これらの桜の花のイメージからはほど遠いところで、美しい日本などという言葉遊びをしている世界がありますが、そのような言葉を使ってよいのか、それが許される世界なのかを、桜の花をじっくり見ながら考えて欲しいものだと想いました。

本当はこのような文章には写真を添付することが大切だとはわかっているのですが、どうも取扱が面倒なものですから、よほどの良い写真でもない限り取り上げないことにしています。そのような写真は先ず無いでしょうから、諦めて下さい。厚顔多謝。

 

コメント
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