秋田県の角館という町が好きで、1年に一回以上は訪ねるようにしています。桜の季節は勿論ですが、季節を問わずこの町には惹かれるものがあります。我が家の味噌は、その殆どをこの町の醸造元から調達しています。
その角館を訪ねる時の定宿(といっても車を駐車させて頂いて一夜を過ごすだけなのですが)は、隣の中仙町(今は合併して大仙市となりました)の道の駅なのです。ガイド書などではこの道の駅にも温泉があると書かれていますが、建物の周りを幾らグルグル廻ってみても温泉らしきものの施設は見当たりません。
初めて来た時は、期待はずれでがっかりしたものでした。しかし、翌朝になって散歩をしていますと、道の駅から700mほど離れた八乙女公園の麓に小さな温泉施設があるのを見つけました。それが八乙女温泉でした。八乙女公園は、運動場や体育館なども併設されており、このようなところにこんな立派な施設があるんだ、と感心したのですが、その中に温泉があったのには驚きました。
温泉は、地元の人たちが共同浴場として大切に利用しているらしく、大々的な入浴施設とは全く違った、ほんとにこじんまりとした施設で、よそ者が入らせて貰ってもいいものかと、最初は何だか遠慮気味でした。一度に大勢の人がやってきたら、この温泉の運営は出来なくなってしまうのではないかと思われます。湯船は4、5人入れるくらいのものが一つ、洗い場も5、6人で一杯になってしまいます。その他サウナや露天風呂など一切ない、家族風呂をホンの少し拡大した程度の規模なのです。
もう5、6回お世話になっていますが、私としては、この小さな温泉が気に入っています。この風呂に入ると、地元の人たちのくらしの温もりが伝わってくるような気がするからです。この風呂に入りに来られる人たちは無口の人が多いようです。大声でしゃべりまくるような人に会ったことがありません。一言二言、地元の言葉で会話を交わされる程度なのですが、無駄がなくいっぺんで相互の意志が通じてしまっているようです。勿論私には何のことか解らないのですが、顔を見ていると充分通じていることがわかるのです。「○○がァー」、「だァー」で終わるのです。東北の人々の会話能力には驚くばかりです。標準語のコンプレックスを感じて、私も話しかけられない限りは、黙って風呂を味わっています。
狭い風呂というのは、窮屈でゆったり感が損なわれるような感じがするものですが、ここの風呂はそれがないのが嬉しいのです。今年も2度入らせて頂きました。料金は200円也です。今年はあと2回くらいは入れるチャンスがあるのではないかと思っています。