新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

塩野七生『わが友マキアヴェッリ フィレンツェ存亡』

2024年05月05日 | 本・新聞小説
チドリソウ。環境に強い種で、こぼれ種が門灯を覆い隠すほど成長したので切り花にしました。

小さい鳥が飛ぶ形に似ていることからついた名前だとか。我が家の春の庭に欠かせない花になっています。ヒエンソウ(飛燕草)とも呼ばれます。
拡大するとチドリでなく、真ん中の花弁がムンクの「叫び」を彷彿させますが、表情から「歓喜」の方がしっくりきそう。

📖📖塩野七生『マキアヴェッリ』📖📖
この文庫本は断捨離から外してはいたものの長い間捨て置かれた本でした。数十ページは読んでいたのですが、読み進めなくて・・・。

塩野さんのルネサンスシリーズ4巻の後に続いて読んだ『チェーザレボルジア・・・』と『ルネサンスの女たち』はまさに心を踊らせる内容でした。全部再読ですが、歴史が少しわかってから読むといきいきと新鮮に読めます。
この両方に度々登場するのがマキアヴェッリ。教科書では『君主論』の著者として記憶し、このようにイタリア国内、フランスまで駆け巡って活躍する認識はありませんでした。
この時頭に浮かんだのが、捨て置かれた『わが友マキアヴェッリ』。文庫本で630ページの大作ですが、こうなったら読んでみよう!
マキアヴェッリは思想家と思っていましたが、フィレンツェ共和国の書記官でした。貴族出身でもなく、大学も出てないことから能力はありながらも書記官止まり。その仕事に満足し活躍していましたが、メディチ家転覆の罪を着せられて獄へ。 この後、郊外の山荘に隠遁して執筆活動に入り数々の名著を生み出しました。
その著作により有名になると交友も広がり、メディチ家とも和解、グィッチャルディーニという年下の信頼できる政治家に出会い、共に素晴らしい書簡を交わしながら、単発的に仕事をします。
北からはフランスが、南からはスペイン・ドイツがイタリアを狙います。ローマ教皇庁も加わり国際情勢も混沌としてきます。

1527年スペイン・ドイツがローマを攻めて、半年間も全ローマが破壊される「ローマ掠奪」が行われました。ルネサンス時代の建物の8割が焼かれたり破壊され、更にペストが追い討ちをかけます。法王はほぼ無条件でスペイン王カルロス(カール5世=神聖ローマ皇帝)に屈しました。
この頃メディチ家がフィレンツェから追放されました。マキアヴェッリはメディチの居ないフィレンツェに自分の居場所を確信して、再び書記官に立候補します。しかし惨敗で、もう一度祖国のために働きたいという願いは、祖国からも拒否されてたのです。 
この10日後に病に倒れ、その2日後に亡くなりました。落選が原因のようです。
イタリアはヴェネチアを除いてほぼスペインの支配下に入りました。ルネサンスの開放的な文化と知的交流の世界は終わりました。

この本の副題は「フィレンツェ存亡」。最終章が 「ルネサンスの終焉」。16世紀は歴史の動きを左右するのが都市国家から領土型国家に移る時でもあったのです。

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