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中国の婚姻と土地

『中国百科』より

婚姻

 中国における西洋型近代法の導入は婚姻の自由を含むものであった。中華民国民法は、20世紀の民法典なので、結婚・離婚は当事者の意思によるものとし、圭だ、男女平等を定めていた。しかし、1930~40年代の農村にあっては、必ずしも民法が定める家族関係ではなかった。

 ■伝統的な婚姻

  伝統的には、男女両家の家長が「主婚」となり、主婚どうしの約束とその履行が結婚であった。

  まず主婚どうしでの結婚の取り決めである「訂婚」(または「定婚」)が行なわれ、男の家から聘財とか彩礼と呼ばれる結納の金品が送られる。自らが中流以上の家であると認識する女の家ではこれに幾分の足し前をして嫁入り財産とし、新婚家庭の出発の財産としてやる(そうでない家庭の場合には、聘財よりも少ない額の持参財産を持たせることになり、その分は娘を売った形になる)。

  次に男の家から花轜と呼ばれる輿で新婦を迎えに行く(楽隊がっくこともある。花輪による迎えがない場合には側室としての「妾」として扱われていることになる)。男の家に新婦がつくと新郎・新婦ぱ祖先や父母への儀礼を行ない、親戚・友人を集めての宴会が行なわれ、めでたく成婚となる。

  現代もこの種の風俗は形を変えつつ残っている。結婚がう圭くいかなかった場合の聘財や息子の嫁取りのために親が準備した住宅などはトラブルの種になりやすい。

 ■中華人民共和国になってからの婚姻

  中華人民共和国になると、まず1950年に婚姻法が制定され、婚姻の自由が定められた。1980年には新しい婚姻法が制定され、2001年に改正されたものが現行法である。

  結婚は、男性22歳、女性20歳から可能で、他の国に比して高い年齢設定である。政府の民政部門に出頭して結婚の「登記」を行なう(日本語では登録と訳すべきであろう)。登録を行なわない事実婚は民事上の婚姻としては扱われないが、重婚罪の適用においては婚姻として扱われる。

  夫婦相互に扶養の義務があり、また、相続権がある。夫婦間で財産の取り決めをすることができるが、特段の取り決めがなければ、法の定めるところにより、夫婦一方または共同の財産となる(婚姻中に形成された財産は、特段の取り決めや定めがない場合には、共同の財産となる)。

  結婚によってもそれぞれの姓は変わらない。子供の姓は夫婦で相談して決める。同性の婚姻は認められていない。

 ■離婚

  婚姻の自由は、離婚の自由を含む。協議離婚は認められるが、その場合には子供の養育と財産の処理とについても協議が成っていることが条件となる。協議不調の場合には、裁判による離婚を求めることになる。裁判所での調停が前置される。 1990年代までは、一方が離婚を強く望む場合であっても、他方が離婚を強く拒絶する場合には、離婚は難しかったが、現在では婚姻法に別居2年ルールが定められ、別居して2年たてば、婚姻が破綻していると認定される。

  離婚を制限する特殊な例としては、軍婚と妻が妊娠している場合とである。前者は、軍人の配偶者からする離婚請求は、軍人の同意を要するとするものである。後者は、妻の妊娠中、分娩後1年以内、または、妊娠中絶後6ヵ月以内は、原則として夫は離婚を請求できない。

土地

 ■土地は国有または集団所有

  中華人民共和国成立初期の1950年には土地改革法が制定され、地主の土地を無償で分配して自作農を創設する改革が行なわれた。故に、土地の私有が認められていたことになる。その後、土地を出資する形で1950年代の農業集団化が行なわれ、農村の土地は、合作社(後に人民公社)による集団所有となった。

  こうした歴史的な経緯があって、現行憲法の9、10条により、自然資源は国有(法が集団所有とするものを除く)、都市の土地も国有、農村の土地は集団所有(農民所有の建物が建てられている土地や自留地・自留山を含む。自留地とは、人民公社の時代にも農家ごとの経営が許された土地である)と定められている。

 ■土地の使用権

  1980年代には土地の所有権とは別に使用権を設定し、使用権の譲渡は可能とすることで都市の再開発や都市郊外の開発を促進することが検討されるようになり、このことは1988年の憲法改正で、10条4項で認められることとなった。憲法のもとで土地関係を定める基本的な法律は、国家による管理の側面では、土地管理法(1986年制定、1988年には上記の憲法改正を受けた改正が行なわれている)であり、民事的な権利関係の側面では、物権法(2007年)である。

  集団所有の集団とは何を指すのかは、法令上必ずしも一義的に明らかではなく、実際には「村」や「村民小組」やこれらの連合体や農村に設けられる合作社(協同組合)などが土地の管理主体として存在している。但し、原則は「村」のようである。農村部のうち住宅建設に用いられる土地の使用権を宅地使用権と言う。宅地使用権に抵当権を設定することは禁止されている。住宅用地確保と他目的への流用を防ぐという趣旨から禁止されているが、農民が信用供与を受けてビジネスを展開する機会を減らすものとして批判する意見もある。

 ■土地請負経営権、建設用地使用権、建物区分所有権

  農村部の土地請負経営権も物権として規定されている。最長30年で、期限が到来しても引き続くことが原則となる。農民が自らの請負地をさらに請け負わせたり、交換・譲渡によって流通させることはできるが、抵当権を設定することはできない(荒れ地を除く)。農業以外の用途に用いることにも許可を要する。

  都市再開発を行なう場合には、国有地であるところの土地に建設用地使用権を設定し、これが開発者に売却または割り当て措置で譲渡される。建設用地使用権には抵当権が設定できる。

  集合型住宅の所有者は、建物区分所有権を有する。この場合には、道路・緑地・公共スペース・公共施設などの土地の使用権については、区分所有権者による共有となる。区分所有権者大会が組織され、また、委員を選挙して委員会が設置され、管理される(「業主会」と呼ばれる。日本のマンション管理組合に相当する)。駐車スペースやその他共用部分についてはトラブルが起こりやすい。

  都市近郊の農村の土地を工業団地・物流団地・住宅地などに大規模に開発する場合には、上記の制度のもとでは、集団所有の主体(「村」など)から国に譲渡し、いったん国有地として建設用地使用権を設定しなければならない。そのため、開発のための土地収用の際にトラブルが起こりやすい。
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