goo blog サービス終了のお知らせ 

未唯への手紙

未唯への手紙

顧客目線を無視したマクドナルドの効率化戦略

2015年03月15日 | 3.社会
ライバルが強い他業界に挑んだマクドナルド

 ハンバーガー業界で圧倒的なシェアを獲得したマクドナルドですが、ここまでくると同業他社から顧客を奪う余地も限られてきます。そこでマクドナルドは、ハンバーガー業界のリーダーとして、他業界に切り込んでハンバーガー市場そのものを拡大していくことを目指していきます。

 そして、この他業界から新たな顧客を獲得して成長を図る戦略として導入したのが「3つのプライス・ライン」と「マックカフェ・バイ・バリスタ」だったのです。

 「3つのプライス・ライン」のうち、一つ目はハンバーガーやドリンクSサイズなどをメインメニューとした〝1O0円マック〟。二つ目は安めのハンバーガー系の商品とマックフライドポテトのSサイズがセットになった〝250円セット〟。 三つ目はやや高めのハンバーガー系の商品、フライドポテトのMサイズ、ドリンクMサイズがセットになった〝500円バリューセット〟です。これらの3つのプライス・ラインは、それぞれ他業界から顧客を奪うための戦略商品として投入されたものなのです。

 〝100円マック〟は、コンビニの顧客を狙ったものといえるでしょう。外食産業においてマクドナルドが注目している市場は、手軽に利用できる食事を提供するIEO(Informal Eating Out:いわゆる中食)市場であり、その規模は7.7兆円にも達します。このIEO市場での主要なプレーヤーはコンビニエンスストアであり、実に7.7兆円の3割ものシェアを握っているのです。コンビニの牙城を切り崩すために重要な鍵を握るのが〝100円マック〟なのです。

 〝250円セット〟は、牛丼業界から顧客を奪う戦略商品といえます。牛丼業界では、すき家を軸にして、激しい価格競争が繰り広げられてきました。この価格競争がマスメディアで取り上げられると牛丼に対する消費者の注目度が高まり、低価格と相まって牛丼各社は売上を伸ばしてきたのです。そこで〝250円セット〟を投入して牛丼に流れた顧客を取り込もうという戦略なのです。

 〝500円バリューセット〟は、ファミリーレストランなど比較的単価の高い外食産業から顧客を奪うための戦略商品といえるでしょう。〝500円バリューセット〟は、大手のファミリーレストランが提供する日替わりランチの価格が500円前後ということをふまえれば、まさにファミリーレストランのランチ需要を取り込む戦略的な価格設定といえるでしょう。

誰もマクドナルドにおいしいコーヒーを求めていなかった

 「マックカフェ・バイ・バリスタ」とは、専門知識を持つバリスタがコーヒーを提供するサービスで、カフェ業界からの顧客奪取を狙う戦略です。「マックカフェ・バイ・バリスタ」は、コーヒーを注ぐ容器も、紙コップではなく、マグカップやグラスを使用し、バリスタが表面に泡立てたミルクやチョコレートシロップで模様を描くなど細部までこだわりを見せます。

 価格はプレミアムローストコーヒーと他のカフェチェーンの中間辺りに設定し、〝お得感〟を醸し出してスターバックスやタリーズコーヒーなどカフェ業界からの顧客奪取を目指します。

 快進撃に乗じて他業界から顧客を奪う全方位戦略を導入したマクドナルドですが、結果としては失敗に終わります。コンビニはカウンターコーヒーで勢いを増し、カフェは専門性で顧客を惹きつけ、マクドナルドに顧客が流れることはなかったのです。

 戦略失敗の要因 勝負する土俵を広げすぎて、自社の強みが弱まってしまった

繰り返される企業の都合の戦略

 マクドナルドは次々に戦略的なミスが続きました。たとえば、効率化を重視するマクドナルドは、顧客の待ち時間を短縮するためにレジカウンターのメニューを廃止。

 ただ、このメニューの廃止により、顧客からはメニューがわかりにくく注文に困るという不満の声があがり、足が遠のく一つの要因となったのです。

 また、注文を受けてから60秒で商品を提供できなければハンバーガー類の無料券をプレゼントするという「ENJOY60秒サービス」キャンペーンを展開しましたが、店員は60秒で商品を提供することだけに必死になり、逆にサービスの質の低下につながって一部の顧客の信頼を損ねる結果となりました。

 時代の流れにのり、何をやってもうまくいっていたマクドナルドですが、東日本大震災を境に顧客に大きな変化が現れ、同じことをやってもまったく通用しなくなってしまいました。

 ただ、一ついえることは、戦略が「いかに自社の業績を立て直すか」という自社の都合だけであれば、顧客の心を動かすことは難しいということでしょう。戦略が顧客目線から大きく逸脱すれば、顧客離れが加速することは自明の理といえるのです。

 戦略失敗の要因 自社の都合で戦略を立て、顧客を置き去りにしてしまった!

最新の画像もっと見る

コメントを投稿