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未唯への手紙

未唯への手紙

最高の体験で顧客を虜にするスターバックスのおもてなし戦略

2015年03月15日 | 5.その他
『戦略の教科書』より

「お・も・て・な・し」は強力な武器になる

 ビジネスで安定的な好業績を持続するためには、ファン客を増やし、彼らを魅了し続ける戦略を欠かすことはできません。この〝顧客をハマらせる〟戦略にもさまざまなものがあります。

 セブン-イレブンを始めとした、コンビニコーヒーが攻勢を強め、マクドナルドなどが顧客を奪われる一方で、カフエ専門店のスターバックスは成長を維持し続けています。売上高、利益共に堅調な伸びを見せるなど、ますます多くの顧客を惹きつけているのです。

 このスターバックスが成長を続ける背景には、顧客に店内でいつも新鮮な驚きを感じ、最高の体験をしてもらいたいという〝おもてなし〟の精神があるといっても過言ではないでしょう。そして、その〝おもてなし〟を現実のものとするのが妥協をしない商品開発力と接客なのです。

店員の思いから生まれたフラペチーノ

 〝フラペチーノ〟とは、氷菓である「フラッベ」とコーヒーを連想させる「カプチーノ」から生まれた造語で、パートナーと呼ばれる店員の「お客様に喜んでいただきたい」という思いから生まれたスターバックスのオリジナル商品です。

 ただ、フラペチーノの商品開発は順調に進んだというわけではないようです。逆に当初は経営陣の反対に遭うなど、苦難の船出を強いられます。それでも、パートナーの思いが新製品には疑心暗鬼だった経営陣を突き動かし、数年の試行錯誤を繰り返して1995年にアメリカで誕生することになります。

 そして、発売されるやいなや、話題が沸騰し、これまであまりコーヒーを飲まなかった顧客まで巻き込んで大ヒットを記録することにつながるのです。

 日本においても、フラペチーノは2012年の春から独自の商品展開が進められ、非常に人気を博してきました。価格的には一番大きいサイズで600円以上もする高額な商品の部類に入りますが、限定で発売される商品は予定していた販売期間を待たずして終了することもあるなど、驚異的な人気を誇る商品なのです。

 このパートナーの顧客に対する思いからアメリカで生まれたフラペチーノが、長い間顧客に支持されて売れ続けるにはいくつかの理由があります。

 まず、一つ目として、期間限定で発売時期を逃してしまえば二度と食べられないというポイントが挙げられるでしょう。

 フラペチーノは毎年4月から限定商品の発売が始まり、発売期間が終了すると、どんなに売れた商品でも同じ商品が販売されることはありません。

 一般的に、爆発的に売れた期間限定の商品は、時期を見計らって〝役割〟という形で再販売されるケースが多く見受けられます。なぜなら、一度売れた商品だけに既に認知度が高く、ある程度の売上が見込めるためにマーケティング戦略上のリスクを低くすることができるからです。

 ところが、スターバックスではどんなに売れたとしても同じ商品を再販売することはまったく考えていないのです。期間限定の商品で同じものを提供し続けるなら、お客様に驚きを与え、店頭でワクワクしてもらうことが難しくなるからです。

 スターバックスは店頭で毎回驚きを感じて喜んでもらおうという思いを重要視しており、その意味で、フラペチーノの開発は毎回毎回、顧客が驚くような新たな商品への挑戦であり、自らハードルを上げてクリアしていくことに注力しているのです。

 続いて二つ目には、根強いファン顧客の情報発信力が挙げられるでしょう。

 フラペチーノのメイン顧客は若い女性であり、強力な情報発信力を持つ顧客層でもあります。特に最近では、Facebookなどソーシャルネットワーキングサービスを利用して手軽に情報を発信する人が爆発的に増えています。

 実際に、スターバックスのFacebookページでは、100万を超える「いいね!」が押されています。このスターバックスのファン顧客が、期間限定で発売される話題のフラペチーノの情報をソーシャルネットワーキングサービスなどで拡散させます。

 これが他の人の「自分も飲みたい!」という欲求を高めて、多くの顧客が集まることにつながっていくのです。

店舗での最高の体験が顧客をハマらせる

 スターバックスが快進撃を続けるのはコーヒーやフラベチーノなどの商品力だけではありません。実のところ商品力だけで顧客をつなぎ止めるのは困難を極めます。

 なぜなら、外食産業の敷居は低く、どんな商品を開発しても売れればすぐに同じような商品を他社が販売し始めるからです。実際にフラペチーノは同じような素材を使ったラテやスムージーが大手のファストフードチェーンで期間限定で発売されるなど、競争が激化しました。

 スターバックス成長の秘密、それは、〝店内での最高の体験〟だったのです。

 スターバックスは、店舗を〝サードプレイス〟と位置付け、お客様にとって自宅と職場や学校に次ぐ〝第3の場所〟として快適に過ごしてもらうことを目指しています。そのためにパートナーはどうすればお客様に喜びを与えることができるかを自分の頭で考え実践しているのです。

 そう、スターバッダスには接客マニュアルが存在しないのです。

 パートナーは、来店されるお客様の表情や会話から「今、何を望んでいるのか?」を推測しお勧めするなど、お客様が店内で〝最高の体験〟ができるよう努力を惜しみません。そこには、よくありかちな企業の視点からの販促商品を無理に薦める〝プロモーション〟ではなく、いつも通ってくれるお客様が気に入るであろう商品をさりげなく伝えるという〝コミュニケーション〟が重要視されているのです。常に『顧客満足を高める』という観点から大切なゲストとして扱われれば、嫌な気持ちになるお客様など一人もいないでしょう。

 このようにスターバックスが提供する〝環境〟に非常に大きな価値を感じ、「コーヒーを飲むならスターバックスでなければならない」と強い想いを抱くファン客が一人また一人と増えていくことがスターバックスを成長に導く原動力となっているのです。

 お客様のために妥協せず最高の商品を開発し、最高の環境でコーヒーを飲んでいただくという〝おもてなし〟戦略は、顧客をハマらせ、ますます多くの顧客を引き寄せるために非常に効果的な戦略といえるでしょう。

戦略成功のポイント マニュアルに固執せず、臨機応変に行動する

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