古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

驚くべき遺伝子解析技術の進歩

2014-05-17 | サイエンス
 もう一つ,週刊誌からの話題です。驚くべき遺伝子解析技術の進歩について、週刊朝日の5月23日号に池谷裕二さんが寄稿していました。
『今年2月にオックスフォード大学のマイヤーズ博士らが「サイエンス」誌に発表した記事が画期的です。論文題名はずばり「人類交配史の遺伝子地図帳」です。博士らは、世界中の多くの民族から遺伝子を採取し、どのように民族がまじりあってきたを、遺伝子の類似度から解析しました。その結果、過去4000年に及ぶ100以上の歴史イベントが明らかになりました。
 たとえば、中米のマヤ民族にはスペイン人の遺伝子交雑が確認されましたが、これが生じた時期は遺伝子の残存状態から1670年頃と算出されました。これはスペイン人によるマヤ侵略という歴史上の事実と一致します。こんな具合に、アレクサンドロス帝国やクメール王朝の興隆から、アラブ民族やバントゥー族の移動、はたまた奴隷貿易など、教科書上の出来事が、遺伝子の痕跡からも浮き彫りになりました。
 こうした中で特筆すべき事実は、モンゴル民族の遺伝子が(アフリカの一部の地域を除く)世界中のほぼすべての民族に残っていたことです。計算によれば混血が生じたのは13世紀。つまちチンギス・ハーンが率いたモンゴル帝国の時代です。世界人口の半分以上を統治し、人類史上最大規模とも謳われたモンゴル帝国の絶大な影響力が、遺伝子の分布からも証明された形です。
 さて、私たちが気になるのは、日本人のルーツでしょう。意外に思われるかもしれませんが、マイヤーズ博士らの解析の結果、日本人には明確な混血の影響はありませんでした。たしかに日本は、大戦後にGHQに占領された一時期を除けば、外部に侵略された過去を持ちません。2度にわたった元寇でも、モンゴル帝国を撃退しています。侵略や占奪が一般的だった世界の統治の動きに対して、日本における動乱は、戦国時代にせよ明治維新にせよ、内乱にすぎません。日本人は、遺伝子の交雑なく何千年も存続している、世界でも例外的な民族なのです。
 ところで、今回のマイヤーズ博士らの解析から、史実として明確に残されていない交雑の痕跡も見つかりました。これは貴重な発見です。・・・』
 筆者は、『今に生きる人々の体の細胞一つひとつに人類の冒険や戦争の歴史がしっかりと刻まれ続けていることに、不思議な安堵を覚えたのでした。』と述べています。

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