古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

日米同盟の正体

2010-08-25 | 読書
『日米同盟の正体』(講談社現代新書、09年3月刊行)という本を読みました。鳩山前首相が普天間問題で辞任してから、日米安保がどうなっているかが気になって参考書を探したら、この本が見つかったのです。

著者の孫崎 享(まごさき うける、1943~)は、『日本外交 現場からの証言』で山本七平賞受賞。元外務官僚(ウズベキスタン大使、イラン大使)、元防衛大学校教授(02~09年)。

以下、さわりの要約を紹介します。

80年代からシーレーン防衛構想というのがあります。自衛隊にP―3C対潜水艦哨戒機を大量に保有させ石油の補給海路を確保させる。日本から1000海里(パラオ付近まで)を自衛隊が守り、それ以西の防衛を米軍が担当するというものです。日本人はそう理解し、実際に自衛隊はP―3Cを保有しました。しかし、米国の狙いは別にあった。オホーツク海のソ連の潜水艦に対抗するため日本の海上自衛隊を活用しようというものでした。ソ連艦からの米国本土への核ミサイル攻撃を防止するために必要な計画だったが、財政赤字に悩む米国政府は、シーレーン防衛を口実にして日本に費用負担させたというわけ。

 「日米安保のおかげで、日本の防衛費はGNPの1%ですんでいる」と米国の防衛長官が公言したそうだが、その1%しかない国防費が日本ではなく米国の防衛のために使われている。

別の観点から言うと、日米安保により、日本の防衛は米国の防衛と一体化している。これは、ある意味で当然で、米国国防省としては、両国の防衛の責任を負わされれば、二つの任務を別々に考えることはない。

日米の防衛の一体化は、何をもたらすか?日本と関係のない国の紛争に日本が巻き込まれる危険が出てくる。それを防ぐのが極東条項でした。ところが・・・

【2005年10月29日、日本の外務大臣、防衛庁長官と米国の国務長官、国防長官は「日米同盟:未来のための変革と再編」という文書に署名した。日本ではこの文書はさほど注目されてこなかったが、これは日米安保条約にとって代わったものと言っていい。(第3次小泉内閣;町村外相、大野防衛庁長官)】

 何が変わったか。まずは対象の範囲である。

 【日米安保条約は第6条で、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全に寄与するため」とする極東条項を盛っている。・・・それが「未来のための変革と再編」では、同盟関係は、「世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしている」とした。日米の安全保障協力の対象が極東から世界に拡大された。】(つづく)