古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

嘘つきマーニャの真っ赤な真実

2016-05-31 | 読書
『嘘つきマーニャの真っ赤な真実』(米原万理著、平成13年角川書店)を読みました。
この本は第33回の大宅壮一ノンフィクシヨン賞の授賞作です。
「リッツアの夢見た青空」、「嘘つきマーニャの真っ赤な真実」、「白い都のヤスミンカ」の3部構成で、リッツア、マーニャ、ヤスミンカは万里さんの友人の名。
米原さんは少女期の5年間を両親の赴任先であったチェコのプラハ市で過ごし、旧ソ連外務省直営のロシヤ語学校に通った。
その学校時代の親友です。リッツアはギリシャ人。アーニャはルーマニヤ人。ヤスミンカはユーゴスラビヤ人の娘さんです。
彼女ら親友とのエピソードがこんなふうに綴られます。

『 リッツアは、私の性教育入門編の優れた教師だった。
「叔父はね。女の切れ目がないのよ。今の彼女はカリーナマシューツ。彼女がこないだデートの時に、胸元が大きく開いたドレスで現れたんだって。あんまりセクシーだったもんだから、叔父はあそこがおっ立っちゃって困ったらしいわよ。人通りの多いバツラフ通りの真ん中だったから。」
「あそこって?どこ」
「チンポコに決まってるじゃない」
「チチチンポコ!?」
「こないだ教えてあげたでしょ。セックスの仕方」
「・・・・」
「男は惹かれるおんなの人とセックスしたくなるものなの!矢も楯もたまらずチンポコを女のあそこに入れたくなるものなのよ。でもそのままじゃ、なかなか入らないでしょ。」
「・・・・・」
わかんないかなあ。口の小さい瓶にふわふわいた綿をつっこもうとしてもうまくいkない。そういうときは、綿を棒にまいて綿棒にするとうまく入る」
今でも耳かき用の綿棒を見るたび、リッツアの熱心な説明を思い出す。
彼女の数々の戒めの中で一番頭にこびりついている、
「男の良しあしの決め手は歯である」
水田稲作を主な生業としてきたわが同胞と牧畜を営んできた民族との違いを、彼女との対話で、まざまざ思い知らされた。』
『「アーニャって・まるで呼吸するみたいに自然に嘘つくんだねえ」
ルーマニヤに住み続けると言ったアーニャはイギリスに留学し、イギリス人と結婚する。
「米原さんのお友達が外国に留学できて、しかも留学先の国の人間と結婚できるなんて
特権中の特権ですよ。父親が、チャウシェスク政権の幹部だから、許されたことでしょう。」
 再会したアーニャ。
「ルーマニヤの人々惨状に心がいたまないの?」
 「痛むにきまっているじゃないの。でも、アフリカにもアジヤにも南米にももっとひどい所は沢山あるわ」
 「でも、ルーマニヤはあなたが育った国でしょう」
 「そういう狭い民族主義が、世界を不幸にするもとなのよ」
 丸い栗色の瞳をさらに大きく見開いて私の目を見つめるアーニャは、真実そのものという風情だった。』
と、ルーマニヤ事情の紹介もでてきます。
 ヤスミンカとの交流は、スロベニアとクロアチアの独立宣言に続くユーゴ内戦の事情を教えてくれました。この辺りが大宅賞受賞になった所以でしょう。

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