古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

おどろきの金沢

2017-10-11 | 読書

「おどろきの金沢」(秋元雄史著、2017年6月講談社α新書)を見つけました。

著者は、金沢21世紀美術館特任館長。2017~2017金沢美術館長、1991年からベネッサアートサイト直島のアートプロジェクトにかかわった。

本書は、金沢21世紀美術館の館長を務めた10年間、金沢に暮した体験録です。

 金沢21世紀美術館は、国内では集客力があるとは言い難い現代美術の館ながら、来館者数が2004年10月の開館時から翌年3月までで68万人、翌年度からは130万人を超え、2015年度年間237万人、開館以来延べ2045万人(2017年3月まで)が訪れた。

 1350万人の人口を抱え、外国人観光客だけでも年間887万人がやってくる東京都の現代美術館で39.5万人、森美術館は約84.8万人です。人口は東京の30分の1に過ぎない46万人の金沢市の規模を考えるとすごい来館者数です。

 何故この美術館がそこまで注目されたか?

その理由は、この美術館が「買い物籠をさげてきてもらえる、まちに開かれた美術館」をコンセプトに建てられたことにある。

金沢21世紀美術館の奇跡をまずは建築からみてみよう。「美の殿堂」を象徴するような重々しい建物が多い美術館建築のなかで、同館の建物は、360度をガラスに覆われた丸いフォルムという斬新なもの。金沢旧市街のど真ん中の公園に、突如現れたUFOみたいな建物だ。従来の美術館が「かたち」をつくることが重視されたがここは、「できごと」を作り出す場として発想された。

 設計は、妹島(せじま)和代、と西沢立衛の建築家ユニットSANAAである。この建築で第9回ヴェネチャ・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞を受賞し世界中から注目され、2010年には、建築界のノーベル賞と言われるブリッカー賞を受賞した。

金沢21世紀美術館長着任にあたって山出市長から依頼されたのは、「美術館を市民に浸透させてほしい」、「工芸を大切にしてほしい」だった。

金沢21世紀美術館は、「現代美術バリバリの観」である。それなのになぜ工芸?

 伝統のまち金沢といっても、工芸と同館はどう関係するのか?

 着任3~4か月で金沢21世紀美術館が、金沢人のすべてにではないにしろ、あまりよく思われていないことに気付いた。

金沢21世紀美術館はどうして金沢の人から冷遇されているのか?市長の要請はこの冷遇と切っても切れない関係にあるのだと察せられた。

それまで美術と言えば、器や着物、絵画や彫刻といったモノに慣れ親しんできた人たちに、同館が示した現代アートは、金沢の人にとって宇宙から落ちてきた隕石並に得体のしれないものだった。

以下、金沢21世紀美術館と現代美術を金沢の人に受け容れられるまでの著者の苦闘がつづられている本でした。

 


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