古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

事業仕分け

2009-12-05 | 経済と世相
 『事業仕分けに参加して』という寄稿を、敬愛する中村桂子さん(分子生物学者)が、12月2日の中日に寄せていた。
【事業仕分けという言葉が世間を揺るがしている。実は私も、“仕分け人”という、これまで聞いたこともなかった人種の仲間入りをした。これまで、日本の科学技術政策や科学技術予算の配分に問題があることを、言ったり書いたりしてきたので、この際それを考えるようにとの依頼だった。
 参加するに当たっての基本姿勢は、あらかじめ書類で提出しておいた。ムダという判断は難しいので、個別の事業だけで判断すると、本質的に重要なのに成果が見えにくいものを切ってしまう危険がある。しかも、文化・教育・研究など一見ムダと見えるところにこそ本質の存在するものさえある。従って、本来、このような作業は基本となる考え方があって全体を見るべきものだと思う、と。
 しかし、私が関与する科学技術(実は私は「科学」に関心があるのだが、平成9年に科学技術基本法が成立して以来、公にはすべて「科学技術」となった。これも問題であり、科学の復権が重要だと思っているが、それは一応脇に置く)を例にとれば、基本の考え方が必要という言葉は聞き入れられず・・(中略)・・
 大きな話題になった「次世代スーパーコンピューター」の場合、平成22年度に231億円、5年間で1100億円という大型事業に、事実上凍結の判断が出たのである。世界一のスピードになるというスパコンは、たとえば気象など複雑な自然現象をシミュレーシヨンによって理解する手段として重要とされている。また自動車の衝突やものづくりにも、シミュレーシヨンが必要となっており、産業利用もある。
 私は、この分野の専門家ではないので細かな技術的判断はできないが、これまでに、このプロジェクトの決定の経緯で十分に議論がなされたとはいえず、費用にムダがあるという専門家からの声を聞いていた。そこで、これを機会に専門家による徹底的な議論をして欲しいと思った。・・・
 ところが、復活の声が大きいので凍結解除の可能性を、管副総理が示したというのである。また政治決着をするのだったら、何のための事業仕分けなのだろうと疑問に思う。】

 中村先生のご意見を私流で解釈するとこうです。
 たとえばスパコンに1100億円を投資する。それなりの効果はあるだろうが、もっと他の分野に投資するのと、どちらが得だろうか?つまり、1100億円、政府の金をスパコンに投入することは、資金が無限にあるわけではないから、科学の他の分野で、1100億円投入することを諦めなくてはいけないのだ。他の分野を諦めてもスパコンを開発する価値があるということを、その推進を主張する人たちには、国民に説明をしてもらいたいし、科学者の徹底的な議論が望ましい。
だから、科学全般を押さえて、日本はいかなる科学分野に投資をしていくかの国家戦略が必要なのだ。管副総理が、スパコンについて政治判断するというのは、国家戦略を踏まえてのことだろうか?
 私にはよく分からないが、「事業仕分け」は、「予算削減」の手段ではないのか。
 日本が21世紀に繁栄するためには、科学への投資が必要であり、国家予算の一定割合は常に科学へ投資すべきで、「予算削減」の対象とすべきでないと思う。しかし、議論をしてはならないというのではなく、「科学」の国家戦略の観点から、議論は徹底的に行うべきだ。
 「事業仕分け」は予算の効率を追及するが、「技術」の効率は追求できても、「科学」は効率で判断できるものではないと思う。
「事業仕分け」は、科学の投資を論ずるには、なじまないのでは?

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