古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

ナマコ博士の人生論(1)

2016-04-15 | サイエンス
生物学のユニークな本を2冊図書館で見つけ借りてきました。
「生物学的文明論」(本川達雄著、新潮新書2011年6月)
「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一著、講談社現代新書、2007年5月)
今日は、「生物学的文明論」のさわりを2回に分けて紹介します。著者は“なまこ”の研究者です。因みにナマコを専門とする生物学者は、世界で10人くらい。
ナマコは何を食べているか。「砂です」、まさに「砂をかむ人生」です。砂は石の粒子ですから、栄養にはなりません。砂と一緒に飲み込んだ海藻の切れっぱしや有機物の粒子などを食べ、砂の表面についたバクテリヤも栄養となります。砂はそのまま排泄します。でも、いくら有機物の粒子があるといっても砂は砂、栄養などそれほどない。そんなものだけ食べてどうして生きていけるのか。
 体の姿勢を保つのに、われわれは筋肉を使う。腕を上げるとすると、上げている間じゅう、腕の筋肉は縮みっぱなしです。筋肉が収縮すればエネルギーが消費され、疲れて長くは手を挙げていられません。手を挙げた時、もし腕の皮が固くなれば、皮が突っ張るから筋肉を緩めても手はあがったまま。手を下ろしたらまた皮を柔らかくすればいい。これがナマコのやり方。
硬さの変わる皮を使うと、筋肉を使う時の100分の1のエネルギーで姿勢を維持できる。
ナマコの体全体に占める筋肉量と結合組織を計ったら、結合組織が体の約6割、筋肉はその10分の1。.哺乳類は筋肉が体の半分、結合組織は襟度1~2割。我々は筋肉ムキムキ、ナマコは皮ばかり。筋肉は休んでいるときも皮より6倍もエネルギーを使う。ナマコはエネルギー消費量がきわめて少ない。エネルギーを使わないとそれほど栄養を摂る必要が無いのです。
ナマコが皮の硬さを変えるのは別の意味もあります。
日没後、岩の間に入って隠れる。海が荒れた日は昼間でも岩の間に隠れる。岩の間に隠れる時、狭い入口を体を細く、大変形させて通り過ぎる。身体が固いままならとてもできない。入り口を過ぎて中に入ったら身体の形も硬さも元に戻す。
 
 こんな究極の技もできます。ナマコは魚に噛みつかれると、そこの部分の皮を柔らかくして皮を溶かして穴をあけそこから腸を吐き出す。魚がそれを食べている間に逃げていく。腸は一月も経てば再生します。
 ナマコは砂を食べている。砂を食べられるというのは、すごいことなんです。ナマコは、砂の上に住んでいるから、住処は食べ物の上です。食べる心配がないというのはこれは天国の生活です。ナマコは、皮などの結合組織を超省エネに進化させ、省エネに徹っすることで、この世を天国にした。頭いいなぁ!でもナマコには脳がありません。(続く)