古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

グローバル経済とローカル経済

2015-01-25 | 経済と世相
 『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(富山和彦著、2014年6月、PHP新書)を本屋で立ち読みして、買ってしまいました。
あとがき(エピローグ)の次の記述を見て、「これは買わなくっちゃ・・・」と思ったのです。
著者とNさんの対談から始まる。
私「成長戦略って何かピンとこない・・
要は大手製造業やIT企業などのグローバル成長を意識したメニューなんだけど、日本経済でこうした産業が占める割合って、もはやせいぜい3割理度、雇用にいたっては2割くらいなんだ。
N氏「たしかに、前回の安倍政権の時もそうだったけど、グローバル経済圏で活躍している企業の収益や賃金が上がっても、トリクルダウンが起きず、むしろ格差問題ばかりがクローズアップされた。」
私「前に水野和夫さんが「人々はなぜグローバル企業の本質を見誤るか」のなかでも指摘していたが、それって日本だけでなく世界中、特に先進国ではどこでも起きている現象」
私「残り7割の経済圏、すなわち地域密着型のサービス産業の世界では、実は数年前から深刻な人手不足が始まっている。だからパート時給なんかも上昇傾向。
N「疲弊収縮する地方経済だけど。人はもっと足りない・・・・・」
私「要は、生産労働人口が先行的に減っているから、こういうことが起きる。もちろん製造業やITのように、世界中どこでも生産活動が行えるならこんなことは起きないけど、労働集約的なサービス産業って、需要のある場所で活動せざるを得ない。」
N「ということは、グローバルな経済圏で活動する産業、企業、人材に関わる話とローカルに密着せざるをえない経済圏の問題は。かなり異なるということ」
 この会話のN氏は、経産省審議官の西山啓太氏である。彼とは産業再生機構当時からの付き合いで、本書の論考の基盤となるG(グローバル経済圏)とL(ローカル経済圏)の世界をひとまず区分して観察し、それぞれの問題状況を考えてみるという思考体系は、彼と私の間での知的双発から生まれた。
 最後に、西山啓太氏に加えて、GとLを分ける発想の源流にある著作を著し、私と西山氏に多くのインスピレーシヨンを与えてくれた水野和夫氏。・・・、感謝申し上げます。
 巻末の参考文献には、勿論、「里山資本主義」など、藻谷浩介氏の著作もあった。
この本の主張を要約すると、こうです。
グローバル経済とローカル経済とは、別の世界で、グローバルで稼いだ企業の収益がローカル経済にトリクルダウンすることはない。そうなる原因は雇用である。グローバルに雇用を使える産業。企業はグローバル経済の世界で活躍できるが、そうでなければ、ローカル経済の世界で活動することになる。今日の経済政策の目的は、雇用にあるから、グローバル経済に対する経済政策とローカル経済に対するそれとは別でなければならない。
 実際、今日、日本経済のGDPを見ると、グローバル経済の生み出すGDPは全体の3割以下に過ぎない。アベノミクスは、この3割弱に対する政策であって、残りの7割強には。まったく効果がないのだ。
24日、県図書館に行き、雑誌をチェックしていたら、VOICEの1月号の巻頭言に養老孟司さん(今年のVOICEの巻頭言を担当するようだ)が執筆していた。
 内容は、この本で、以下引用すると、
【この数年、経済の話が面白い。そう思うようになった。きっかけは2010年の藻谷浩介「デフレの正体」だったと思う。引き続くデフレを労働生産人口の減少と言う一事で割り切ってしまった。ややこしい経済が一言で尽くせるわけはない。そう批判されて当然だが、きちんとデータを示して、具体的に論じたところに説得力があった。年寄ばかり増えてその年寄りがお金をもっているんだから、消費が進むはずがない。私は経済はズブの素人だから、その程度の認識。その後同じ著者の「里山資本主義」が出て具体的提言になった。
 2014年には、水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』が出た。銀行預金に利子がつかない。いくら私でもそれは知っている。しかしその意味が不明だ。たんい景気が悪いからかと思っていた。何も考えていないという、素人の典型である。
 資本があっても、利潤を生まない。資本主義は終りだ。なんとも分かり易い。だから、バブルが来てはそのうちはじける。それを繰り返す。アメリカ国内を回っているドルの数倍のドルが世界を回っている。そういう話は聞いたことがある。その意味も少し分かってきた。
 預金にまあまあの利息が付いたのはいつまでだったろうか。床屋で話題にしたら、「平成4年には5年定期で6.8%つきましたよ」床屋の答えだった。失われた20年とは、こういうことだったか。
 その次が富山和彦「なぜローカル経済から日本は甦るのか」。びっくりしたのが、上場企業がGDPに占める比率が3割くらい。近くの庶民、普通の人に聞いてみても正解する人はいない。日常自分が使うお金の割合を考えてみれば、そうだという気もする。車を買ったり、家を建てたりするとき、支出が膨大だから大企業にお金をはらっているような気がするが、均してみればローンの額。
著者はローカルとグローバルを対比する。私にはそこがピンときた。
 私は基礎医学の研究者として出発したが、あるときから英語で論文をかくことをやめてしまった。その代り日本語で単行本を書く。これである。つまり、学会の常識はグローバル一本槍で、ノーベル賞が、経済でいえば、ウオール街での大成功。それが日本語じゃ、どうにもならない。学会が認定する業績にならない。経済でいうなら、統計にも載せてもらえない。ローカルもいいところ。でもそれで30年頑張ったら、日本語のマーケットで大きなシェアが採れた。】1