古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

金融緩和の罠(2)

2014-03-14 | 経済と世相
次のエコノミスト、河野竜太郎さんは、BNPパリバ証券経済調査本部長。この方も大胆な金融緩和に批判的で、「端的にいえば、低成長の原因は人口動態だと思います。そしてそれを認識した上での構造改革や社会制度の構築がおこなわれていないことが問題」と言う。1960年から2010年までの生産人口の伸び率と日本の資本ストックの伸び率のグラフを示して、両者がパラレルに動いていることから、需要としての設備投資が生産人口の増加で決まると説く。「これまでの経済成長の分析は、労働力と資本ストックの動きを、お互いの動きに関係なく動くとしてきたが、両者は関連して動くのです。」
 1980年代まで、日本経済の4%台の成長は、労働力の増加が約1ポイント、」設備投資増加が約2ポイント、生産性向上が1.5ポイントの寄与だった。90年代後半から人口の減少が始まるのはわかっていたのに、それに対する危機意識がなかった。多くのエコノミストが労働力の1%がなくなっても、まだ2%の資本ストックと1.5%のイノベーシヨンが経済を牽引するから大丈夫と思っていた。つまり、設備投資が労働人口に関係なくキープされると考えていたのです。
 各国の生産年齢人口の変化を年ごとに見るグラフをプロットしてみると気付くことがあります。生産年齢人口がピークに達するころ不動産バブルが生ずるのです。生産年齢人口がピークに達するときに、不動産の需要もピークになるからです。そして不動産バブルの崩壊が起こる。バブルが崩壊すると、企業は大量の過剰債務や過剰ストックをかかえ、銀行の不良債権は膨らむ。いわゆるバランスシート問題です。
 そして金融システムに対する不安感が高まると、金融機関の行動が極端に委縮して信用収縮が起こり、実体経済に悪影響を及ぼす。だから、そうした危機には中央銀行が大量の流動性を提供することが重要です。しかし、現在の日本の低成長は、危機が原因ではない。だから、これ以上の金融緩和は必要ない、やっても悪影響ばかりです。
 悪影響とは、例えば、金融機関にしてみれば、成長企業を掘り起こすようなリスクを取っていくより、日銀が価格を維持してくれている国債を買った方が有利だとなって、成長分野への投資をしなくなる。
 最後に河野さんはこう言う。「1990年代以降の日本の経済政策は、家計や国民の購買力といったものにあまりに無関心だったように思えます。」(続く)