古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

アベノミクスについて愚考

2013-01-17 | 経済と世相
アベノミクスについて、一言と思っていたら、東大教授の松原隆一郎さんが16日の中日朝刊に「インフレ目標の皮算用」と題する寄稿をしていました。小生の言いたいこと、そのものでしたので、要点を引用します。
『金融政策によるインフレ目標説をもっとも執拗に攻撃したのはハイエクだった。彼によれば・・・金融緩和で余分なお金が出回れば企業家は誤った投資を行い(一種のバブル)、反動で景気はいっそう冷え込むだろう、とした。
 一方、ケインズは、デフレは家計も企業もお金を使わないという社会心理の冷え込みである「流動性の罠」によるのだから、金融政策はそもそも効かないとみた。それよりも国内にあるお金は海外に逃避してしまうから、資本取引を規制すべきだという。
 アベノミクスの手法は新しげに言うが、すでに2003年ごろから08年ごろまでやられた政策の蒸し返しに過ぎない。
 当時金融緩和しても投資先が国内になく、しかも米国の政策金利が5%前後だったので、米国債の購入に資金は流出した。それで円安になり、輸出も増えたが、問題は輸出企業が得たドルもまた多くは米国債の購入に費やされて、日本に戻ってこなかったことだ。20年以上も対外債権残高が世界一を記録している・・・、大手企業からなる財界は喜んだのに一般国民には景気回復の実感がなかったのは、そのせいだ。
こうした成り行きはすでにケインズが予想していたとおりだったが、ハイエクの批判も図星だった。というのも、当時日本でバブルは起きなかったが、米国で不動産バブルとサブプライム問題が発生したからだ。
 「インフレ目標」説は、お金を多く流せば物価が上がるという「貨幣数量説」という古めかしい説に、「日銀総裁がインフレ宣言をしたら国民がそれが実現すると思い込む」という珍奇な説を付け足したところに新味がある。
輸出と言う外国頼みは途上国のすることだし、・・・日本は大国らしく、一部財界だけが喜ぶ策ではなく、国内で資金が循環するよう、経済体質の改善をはかるべきである。』
 公共投資の額をX,公共投資で増加するGDPをYとするとき、Y/Xを公共投資の乗数といいますが、その乗数が限りなく1に近づいている。10数年前、小渕内閣は、当時の首相に「世界一の借金王になった」と言わしめるほど大盤振る舞いの公共投資をしたが、景気が回復せず、借金だけが激増しました。
 景気が良くなるとは、簡単に言うと、お金が国内各層に流れるようになることと、思うのですが、金融緩和は、お金が外国に流れるだけで国内に流れない。公共投資は、乗数が1に近くなっていて、国の借金は増やすけど、税収は増やさない、という結果になるのでは?と危惧します。
 ただし、円は安くなる。輸出企業は収益が向上し、輸出企業の株価は上昇するが・・・庶民はガソリン代が上がるのみでは?
問題解決には、松原先生の言うように『国内で資金が循環するよう、経済体質の改善をはかる』ことが必要です。
追伸:ケインズとハイエクの論については1年前メールしました。

http://d.hatena.ne.jp/snozue/20120303/