古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

今年最初に読んだ本

2013-01-07 | 読書
 『製造業が日本を滅ぼす』という穏やかならざる書名の本を読みました。筆者は野口悠紀雄さん(ダイヤモンド社、2012年4月刊)です。
 何故この本を読もうとしたのか。
昨年の日本の貿易赤字はおよそ7兆円、今年もそれぐらいになりそうです。そしてパナソニック・ソニー・シャープの家電3社で1.6兆円の赤字というから驚きです。いったい日本の輸出を稼いだ製造業はどうなったのか?図書館の棚をみていて、この本がよさそうだと借りてきたのです。
ところで、貿易赤字はここ数年だけのことか、その傾向が今後も続くのか?
この本では、2011年の赤字は1.6兆円(12年3月の刊行なのでデータはこれ以前)、07年以前は年間約10兆円の黒字を稼いでいた。貿易収支の赤字の原因について、筆者は①米国の消費ブームの終焉、②円高、③電力(燃料費の輸入増)、④生産拠点の海外移転を挙げ、これらは構造的なものだ、つまり赤字は続く、と説きます。総合収支は、所得収支の黒(2011年で14兆円)がありますので、黒になってはいますが・・・
新政権の金融政策で円高は解消され、貿易赤字も黒字に転換する、とお考えかもしれません。確かに、為替の円高は、最近の市場からみれば、解消すると思われかもしれません。しかし、一旦円高状況になったら、その構造は、④など簡単に修正されない。だから、貿易の赤字は続くと筆者は述べる。
そして、注目すべき指摘は、日本が貿易で赤字傾向にあるのなら、為替が円高の方が日本の国益だという指摘です。つまり、赤字とは受取額より支払額が大きい状態ですから、円高のほうが円の支払い額が少なくて済むというのです(黒字なら、円安の方が受け取り円が大きくなる)。

もしかすると、新政権の円安政策は、円高の方が望ましい時点で、円安になる可能性があるのです
それに・・・著者はこうも述べています。確かに
『円高が問題を引き起こさないわけではない。円高がすすむために生産工場の海外移転が促進され、国内雇用は減る。それこそが問題であり、それに正面から対処することが必要なのだ。それをせずに、・・「円高阻止のため断固たる措置」を言うだけでは、責任回避に過ぎない。』
90年代までの政府の政策は、企業を繁栄させれば日本経済はうまく行く。企業が従業員の雇用も福祉も責任を持つから。というものだったと思います。しかし、非正規社員を増やしたことで、企業に任せるだけでは国民の雇用は守れなくなっています。円安に持っていくことで、企業は助かるにしても、国民が助かるわけではない、と私は愚考します。

書名の意味は、「貿易赤字が続いているのは、日本が製造業で稼ぐ段階を過ぎているからだ。現在は、その赤字を補填できるだけの所得収支がある。それだけ海外に資産があるわけだから、その資産を有効に活用する構造(著者の言葉に言うと“金融業”で稼ぐ構造)転換を図るべきだ。いつまでも製造業に拘ると国を滅ぼす」と言う意味らしい。