古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

4年前のアメリカ論(1)

2012-10-23 | 経済と世相
『さらばアメリカ』(大前研一著、09年2月刊、小学館)という本を図書館で借りて読みました。
 まもなく米国大統領選が行われます。この機会に4年前、オバマ大統領が選ばれた時、論壇は彼をどう評価し、その後の米国の動きは、その評価ないしは期待に沿うものであったかを知りたいと、図書館の棚を探して見つけた本です。類書のなかから、大前研一を選んだのは、3.11のフクシマ事故の直後「もう日本では原発は不可能だ」という論を雑誌に発表し、彼の判断の早さに瞠目した記憶があったからです。
先般、政府は将来のエネルギーについて、0%、15%、30%のいずれが望ましいか?という国民意識調査を行った。政府は15%ぐらいを落としどころに考えていたようだが、圧倒的に0%が多かったという。でも、これは、設問が愚問だと思う。この3つの選択が可能なら設問の意味があるのだが、使用済み核燃料の処分場が後数年で満杯になるから、廃棄物をどう処分するかという、技術開発がなされない限り、0%以外の選択肢はないのだ。借金を子孫に残すべきでない、と消費税増税を決めた政府が、核廃棄物の処分を子孫に10万年も残そうというのだから、やっていることが支離滅裂である。
以上は余談です。閑話休題。

米国の4年前を論じたこの本を読み終わって思った結論は、オバマは“CHANGE”を唱えて大統領になったが、米国は何もチェンジしていないということだ。
 4年前の筆者のアメリカに対する見方は、
1.アメリカの金融問題。
【金融危機には、三つのファイズ(段階)がある。
フェイズⅠは「流動性危機」、フェイズⅡは「不良債権処理に伴う債務超過の危機」、そしてフェイズⅢは「金融機関の貸し渋りによる事業会社の危機」である。・・いまアメリカで起きている現象はまだフェイズⅠの流動性危機であり、金融危機の幕は上がったばかり・・・サブプライム危機による金融危機が表面化した08年9月が、日本でいえばバブルが崩壊し始めた1989年12月にあたるわけで、あのときから、アメリカの“失われた10年”がはじまったといっても過言ではない。】
2. アメリカの国土安全保障。
【9.11後、テロ対策を統括する国土安全保障省(Department of Homeland Security)が創設された。アメリカの国土(アメリカがいうところのHomeland は、実はイスラエルが入っている)を脅かすものすべてに対するオフェンシブ・デイフェンスを意味している。
 イスラエルを攻撃する者=ホームランドを脅かすものなのだ。イランや北朝鮮の核兵器開発を厳しく牽制し、イラクを核兵器開発の嫌疑だけで攻撃したアメリカが、イスラエルの核兵器保有については不問に付しているのも、同様の理由で、ホームランドのイスラエルが核兵器を持っていたとしても、それはアメリカが持っているのと同じことだからだ。】
【3万7500人あまりだった在韓米軍の兵力を04年に5000人、06年には1000人と順次削減してきた。最終的には2万5000人規模を維持することになってはいるが、おそらくアメリカは今後も在韓米軍を段階的に縮小し、最終的には空母トマホークミサイルやパトリオットミサイルで韓国防衛を代替する腹積もりだろう。
 理由の一つは、北朝鮮の長距離砲が予想以上に強力だったこと。南北軍事境界線から10km以内に城を配備されている北朝鮮の長距離砲1,000門がいっせいに発射され、在韓米軍の援護がなかったら、3時間でソウルの3分の1が破壊される。在韓米軍が出動すれば、大きな被害が出るのは避けられない。ホームランド・セキュリテイの観点からすると非常に拙い。在韓米軍も北朝鮮の国境から大幅に後退して、米軍に被害が出るのを防ごうとしている。
同じ状況は日本にもある。】(続く)