古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

失われた30年

2012-08-26 | 読書
 ここ数年来、疑問に思っていたことがありました。
日本の社会と経済は、明治以後、そして終戦以後も、欧米先進国の後を追ってきました。
ところがバブルの崩壊と金融危機は、日本が欧米先進国に先立って体験しました。
日本はこれに関しては、世界の最先端を行きました。いつから、そしてどうして日本は、世界の先頭を走るようになったのか?
そのヒントになる本を見つけました。「失われた30年」です。

『失われた30年』(金子勝、神野直彦著、NHK新書12年6月刊)を大学図書館の棚で見つけました。「本当に30年失われるのかな?」と読んでみることに。金子慶大教授と神野東大名誉教授の対談をまとめた本でした。
 米国のリーマン・ショックや欧州の経済危機を見ると、日本の90年代からの経済低迷とそっくりなので、「何故、日本経済は世界の経済に先駆けて深刻な不況を経験し、金融危機を経験したのか?」。換言すると、「バブル以後、何故日本の経済は世界経済に先行する不況と金融危機を経験してきたか?」という疑問を持っていましたが、この書で答のヒントを見つけました。
 答えは「米国ルール」。つまり、日本が世界に先んじて米国ルールを受け入れたから、世界で最初に不況と金融危機になったのでは?」。
以下の記述を紹介します。
【ブレトン・ウッズ体制の固定為替相場制のもとでは、固定為替を維持するために、資本統制が容認されていました。つまり、国民国家には資本が逃げないように統制する権限があったわけです。そして、そのことは財政による所得再配分を可能にし、第二次世界大戦後に福祉国家が機能する重要な条件になっていたんですね。】
 【ところが、為替変動相場制への移行は、福祉国家の所得再配分を支える資本統制が認められなくなることを意味するのです。こうしたブレトン・ウッズ体制の崩壊を前提として、サッチャーとレーガンによって広がっていく新自由主義政権が作ろうとしていた社会保障とか財政制度は、それまでの福祉国家の諸制度を根底から否定していくわけです。]
 この20年は結局「グローバル・スタンダード」という名のアメリカン・スタンダードを呑んできた歴史でした。】
 最初に呑んだのが日本でした。
【アメリカのルールが世界にいきわたった結果、この「100年に一度」といわれる世界危機が起きているわけですよ。】
 【(TPPについて)TPPは関税障壁によるブロック経済ではなく、ルール障壁によるブロック経済だということ。実際TPPは、アメリカが日本の市場に入ってくるためのものでしかない。】
日本に次いでアメリカ・スタンダードを徹底的に受け入れたのが韓国。
「米韓FTAに乗り遅れるな」とさかん喧伝して、TPPに参加しないと韓国に負けてしまうと煽ったわけだけれど、韓国内に米韓FTAに対して大反対があることはわかっていた。なのに、一切報道されませんでした。
 2011年11月に、米韓FTAを可決する韓国の議会で催涙ガスがばらまかれたことで、ようやくニュースが報道された
 アメリカのルールを呑まされた韓国は、インフレのもとで急速に拡大する格差に苦しんでいますね。財閥と国民の間の格差だけではなく、財閥にも格差が出てきています。韓国経済の快進撃を象徴する財閥企業は、サムスンでしょう。・・・しかし、サムスンほど国民の反感を買い、嫌われている企業も珍しいと『ニューズウィーク日本版』(12年3月28日後)は伝えています。】
 グローバル化経済で格差が激しくなった韓国では、大統領の支持率が低下し、人気回復をねらった大統領は、「竹島上陸」という禁じ手に踏み切った。
 序章から第3章までは、一言で言うと「グローバルスタンダード(アメリカ・スタンダード)」では、日本の未来が開かれないことを述べ、終章の第四章で、「産業の知識化」と「地域分散型ネットワーク社会の構築」で、アメリカ追随でない新しい社会システムを提起しています。
 【アメリカのルールでは人間の歴史は前に進まないことが明らかになった段階で、どのようなルールと秩序を新たに形成していくのかを考えねばいけない。それが現在に「生」を受けた人間の使命です。】と説きます。