古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

続・デフレの正体

2010-11-11 | 経済と世相
 「デフレの正体」の続きです。この本の結論は『経済を動かしているのは、景気の波でなく人口の波、つまり生産人口=現役世代の数の増減だ』ということでした。

 日本の生産人口(15歳~64歳)が最大になったのは1996年だそうです。生産人口の減少が日本経済に与えた影響を、著者はこう分析しています。

 “少なくとも96年以降の日本のデフレは、需要の減退が原因で、その需要の減少は生産人口の減少に起因する。”

 生産人口層は、生産を担うだけでなく活発に消費する層で、家も建ててくれるし車も買ってくれる。ところが、定年で現役を退くと、家はもう建てている(ローン返済は残っているにしても)。車の買い替えも少ない。日本全体の需要が減っているのです。だから、公共投資をしても、金利を下げても需要が増えない。従って生産も増えないしGDPも増えない。

 そもそもGDPは、付加価値を国全体で集計したもので、賃金は付加価値の主要な部分です。高年齢者が退職し新入社員で補充すると、人件費が低減する。企業はその分利益が増えたと喜ぶ。その分が全部利益になれば、(利益も付加価値だから)全体の付加価値額は変わらないが、商品の値下げに回せば付加価値額はそれだけ減少する。つまり、GDPが減少し経済は成長しない。また、人件費低減でコストダウンできたと喜んでいても、実は、その分国内の購買力が落ちているから、売上が減る。

 それに、小泉改革で製造業の派遣を認めたので企業は正社員を派遣に切り替えた。人件費はカットできても、国民の購買力が激減した。

 その証拠に、経済産業省の商業統計・小売販売額は、96年がピークで以後12年間、連続減少しています。



 この主張、私にとって、目から鱗でした。生産人口の減少が、いずれは日本経済の重要な問題になることを認識はしていましたが、あくまで生産力の減少、つまり「供給」の問題と私は思っていました。実は「消費の減少」すなわち「需要」の問題であり、将来の問題でなく、96年以降の日本経済に大きな影響を与えているという著者の指摘は新鮮です。

 ではどうすればいいか。著者はいくつかの提案をしていますが、私の関心を引いたのは、以下の2点です。

 女性に働いてもらう。生産人口の中で、女性が職業についている率はまだまだ低い。女性に収入を得てもらい、消費をしてもらう。そのための環境整備に努力する(労働力不足解消のため外国人労働者を入れるという意見があるが、女性に働いてもらう方がはるかに問題が少ない)。

 企業は人件費総額を落とさないように努力する。高齢者の退職により人件費が減少したら、その分、若者の賃金を引き上げるべきだ。それを可能にするためには、高い賃金を支払える付加価値の高い仕事を開拓しなければならない。