サウンド・ストリート21

2007年06月20日 | 佐野元春 Radio Days

サウンド・ストリート21「Motoharu Radio Show」
2007年6月19日(火) 23:00-24:10
DJ:佐野元春
GUEST:山口洋、藤井一彦

Playlist
君が気高い孤独なら / 佐野元春
世界は誰の為に / 佐野元春MusicUnited.
俺はスピード上げるだけ(Live) / The Groovers
Like A Rolling Stone(Live) / Jimi Hendrix
Beautiful Moment / The Groovers
ガールフレンド / Heartwave
フリージア / Heartwave
Living / Paddy Casey
黄金色の天使 / 佐野元春
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■内容の一部を抜粋
・君が気高い孤独なら
6月13日発売ニュー・アルバム『COYOTE』のリード・トラック。

・MusicUnited.
独立系のミュージシャンやソングライターが集まって何か有意義なことをやってみようというテーマではじまったシリーズ。「世界は誰の為に」は深沼元昭、山口洋、藤井一彦が参加している。
藤井「楽しかったですね。シンガーとして呼ばれることはあまりないので光栄だったといいますか(笑)」
山口「基本的に僕も藤井くんも歌う時には首からギターがぶら下がってるんですけど、後々映像を見せていただくと、縦横無尽にアクションをされながら、楽しそうに歌われている佐野さんと、ひじょうに不自由な藤井山口組というものの中に力量の差を感じてしまう...」
藤井「感じましたね。我々かっこ悪いんだもの、だってやっぱ」
元春「そんなことないよ。普段、ギター・マンでもあるから、二人は。ギターが首から下がっていて歌う、それが直結してるのね、その姿、みんな見てるけども。あれは決してかっこ悪いとは僕は思いませんでした」
藤井「そうですか。なんか自分ではギターないというのはパンツ穿いてないみたいで」
元春「まあね。ギター・マンにとってギターというのは一種のセーフティー・ブランケットみたいなものがあるからね」
山口「楽しかったですでも」
元春「あ、ホントに」
山口「ありがとうございました」
元春「こちらこそ」

・藤井一彦
グルーヴァーズのヴォーカリスト、ギタリスト。
グルーヴァーズが東京のライヴ・ハウスで定期的に対バンを迎えて行うライヴ・シリーズ"ROCK'N'ROLL JOINT STRUGGLE"で、つい最近、深沼元昭の新しいバンドGHEEE(ギー)を招いてやったという。GHEEEにとっては初ステージとなったそうだ。

・俺はスピード上げるだけ(Live)
現在、グルーヴァーズの初ライヴ・アルバム『ROUGH TRIANGLE』のミックスを自ら行いマスタリングが終わったところ。また藤井一彦のソロ弾き語りツアーもやっていた。

・Like A Rolling Stone(Live)
藤井一彦の音楽的なルーツの1曲。「Like A Rolling Stone」はジミ・ヘンドリックスがモンタレー・ポップ・フェスティバルで演奏した曲。オリジナルはボブ・ディラン。この曲をやった日が1967年6月18日で藤井一彦の誕生日なのだという。

・山口洋
ヒートウェイヴのヴォーカリスト、ギタリスト。最近、一人で全国を回るライヴ・ツアーを行った。
山口「佐野さんはじめとする血の轍みたいなものが残ってるんだけど、皮肉なことに佐野さんたちが通ってこられた道は、僕と一彦の目の前にもあるんだけど、その道には"ついて来るな"って書いてあるんだよな、一彦(笑)。"オマエはオマエの道を往け、いつかどこかで会うだろう"って(笑)。そういうメッセージを受け取りつつ、僕は地方を回りつつ、厳しいけれどやりがいも感じます」
元春「僕は'50年代の米国の文学でいうと、例えばジャック・ケルアックとか、それからアレン・ギンズバーグだとか、ああした一連のビート作家と呼ばれた人たちの残した作品を読んだり、見たりして、十代の時に感銘を受けたんですね。その先には音楽界にディランがいたりとか、トム・ウェイツがいたりしたんだけれども。そしてレコーディング・アーティストとして出発してから十年ほど経ってから、THISという雑誌の編集をやったんですよ。そのTHISの編集を通じて僕はアレン・ギンズバーグに会いに行き、あるいはジャック・ケルアックの生まれた街を探索してね、彼の作家の背景を探ったりとかやってたね。アレン・ギンズバーグに会った時に、さっきの山口洋の言葉じゃないけどね、同じことをいわれたんです。"過去のアイコンにすがるな"と。つまり"君が一連のビートの作品に影響を受けたのはわかるけれども、過去のそうしたアイコンにすがる気持ちは捨てよ"。アレン・ギンズバーグはそのインタビューでもっともっと他にもいろいろとメッセージがあったんだけれども、その一言がいちばん僕の心には響きましたね。だから、それと同じことをね、奇しくも、山口くんが言ったので、なるほどなぁ~と思いましたね」
山口「勝手に受け継がれてゆくんでしょうね。誰かのお仕着せで受け継がれたものではないものが好きだったというか」
元春「そうだと思う。だから何を受け継ぐかというのは僕たちの気持ちや能力が問われている現在と思うんだよね」

・Beautiful Moment
山口洋、藤井一彦は新しいアルバムの製作ではアドバンス・システムを採用している。「ADVANCE MEMBERSHIP」という名前でも知られるこのシステムは、レコーディング開始前から予約販売の受付を開始するという革新的CD制作/販売システムで、形としてはファンや支持者が出資する「ファンド」みたいなものだそうだ。
そのシステムで作られたグルーヴァーズのアルバム『Modern Boogie Syndicate』からの曲が「Beautiful Moment」。
「これはね、よっぽどアーティストとファンに強い絆がないと実現できないアイディアだし、またこうしてメジャー・カンパニーの音楽の売り方が破綻してる中ね、あっ直接的に言っちゃったけれども、二人が採用しているこのアドバンス・システムというのはもっともラディカルで、もっとも未来的なレコードの製作システムだっていうふうに僕は思ってます。だから、奇しくも僕よりも早くね、二人がそのやり方を採用しているのを見てすごく僕は勇気付けられたというかね、すげぇなと思いましたね」と元春。

・ガールフレンド
「ヒートウェイヴの最近のアルバム聴かせてもらったんだけれども、ヒートウェイヴ節というか、山口節がビシッと貫かれたいい曲ですね」と元春。

・フリージア
山の中でレコーディングしたアルバム『Land Of Music』は弾き語りツアーの経験が反映されているという。
山口「かなり反映していると思います。今は外国を放浪してる場合じゃないなって思いました(笑)」
元春「僕たちソングライターというのは、いつも問われるのは誰のために歌っているか。もちろん大事な自分のために歌うこともあるんだけれども、やはり歌いかけたい対象があるからこそ曲が出てくるんじゃないでしょうか。そうすると例えば一彦にしても山口くんにしても、普段はバンドで電気的に増幅された音でラウドにやってるけれども、今年に入って弾き語りツアー、自分の言葉とメロディーでネイキッドなままオーディエンスに向かい合って、自分が歌いかけてる人たちはこういう人たちなんだという強い実感があったんじゃないですか?」
山口「最近、オーディエンスをハッピーにしたくない? 昔はハッピーなんか知るかって感じだったでしょ」
藤井「あぁ~、そうですね。向かってるような...敵でもないのにね」
元春「もちろん目に見えない時代というものにね、時代というものをオレの歌とギターでアタックしてやるぜっていう気概もあっただろうけれども、いざネイキッドな中で、オーディエンスの顔を見て歌うと、アタックする対象が君たちではないよという思いが強くあったんじゃないですか?」
山口「そうですね。そう思えてきますよね。そういう人たちが2時間なり、3時間のライヴを終えて、最初に見た顔と、顔が変わってるわけですよ」
元春「音楽、弾き終わった後?」
山口「それが僕らにとっていちばんの励みというか、そういうシンプルなことは、ホントに裸に近い形の、コミュニケーションというのは、ミュージシャンとしての資質を問われるわけですし...」
元春「もちろんね、厳しいよね」
山口「ええ。結果的にはバンドでやってることも、ギター1本で30人のお客さんの前でやってることも、ステージに上がる前にこみ上げてくる気持ちは何一つ変わらないわけですから。両方そういうことができるということは、それだけ幅がフレキシブルにあるということなので、大したことじゃないなっていう、単なる芸人で、オマエの芸は何なんなんだっていうことだよね(笑)」
藤井「そうですよね、芸について考えましたよね」

・Living
山口洋が去年アイルランドでしばらく過ごしていた時に聴いた曲。レンタカーを運転してる時にラジオからながれてきた曲で、ヒット・チャートのNO.1を独走していた。
「"みんな同じような顔して生きてるけど、みんな別々のゲームの中で生きてる"そんなフックがすごく印象的だったね」と元春。
この歌の中では都市部に住んでる人間と田舎に住んでる人間の差異が歌われているようだが、それはネット社会と旧態依然とした社会の対比とも取れる。

・ラジオ
ラジオが果たす役割というのが機能しなくなってる。かつてラジオはアーティストとリスナーのブリッジの役割をしていた。だから信頼できるDJが必要な存在だったが、今どれほどいるだろうか。ラジオというメディアが本来持っているポテンシャルを最大限に発揮してないのが現代だと元春。

・元春の提言
十代、二十代の若いソングライターでも、クリエィティブに冴えていれば、四十代、五十代の人をも説得できる真理を歌う能力があるはず。逆に三十代、四十代、五十代のソングライターでも、十代の男の子や女の子の心を震わせる真理を歌えるソングライターが必ずいる。問題なのはこの国にそうしたソングライターとそれを欲しているリスナーをきちんと誰も結ぼうとしなことだ。だから従来のテレビやラジオというメディアもいいが、新たにインターネットというメディアが出てくればそこに僕たちは可能性を見出してゆくのもなしではない、と元春。

・黄金色の天使
アルバム『COYOTE』のエンディング曲。

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒150-8001 NHK-FM「サウンド・ストリート21 佐野元春」係
e-mailで送れるホームページは「サウンド・ストリート21

■今後の予定
来週もひき続き新作『COYOTE』の話題を中心に。
コメント (2)
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