ALL FLOWERS IN TIME(FM COCOLO) #4

2011年02月28日 | 佐野元春 Radio Days

■ALL FLOWERS IN TIME #4
2011年2月26日(土) FM COCOLO 19:00 - 20:00
http://www.cocolo.co.jp/contpgm2/w_main.php?oya_id=278
出演: 佐野元春

Play List
1 C'mon / 佐野元春
2 ガラスのジェネレーション / 佐野元春
3 約束の橋 / 佐野元春
4 ジャスミンガール / 佐野元春
5 君の魂 大事な魂 / 佐野元春
6 クエスチョンズ / 佐野元春
7 Tonight / 佐野元春
8 レインガール / 佐野元春
9 ダウンタウンボーイ / 佐野元春
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■内容の一部を抜粋
2010年春からFM802の支援を受けているFM COCOLOは"WHOLE EARTH STATION"をキャッチ・フレーズにして四十五歳以上の世代を対象にした大人のためのラジオ局として生まれ変わった。土曜日午後7時からのこの枠は月代わりでミュージシャンがDJを担当する。今月二月は佐野元春をフィーチャー。

全四回放送の最終回。今週のテーマは「30 YEARS」。

・C'mon
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。

Q1 佐野さんにとってのロック感は、この三十年の中で何か変化がありましたか?
元春: 僕は、そうですね、多感な頃にラジオからロック音楽を聴いて、あっこれはいいなぁと思い、もし自分で詩や曲を作る才能があるんだったら、作ってみたいと思い、楽器を買い、そして演奏を身につけ、やがて例えばディランとかそうした欧米のソングライターたちのように、自分で詩や曲を書いてみたいなということで、ソングライティングをはじめました。それ以来音楽に向かい合う自分の姿勢というものは、たぶん変わってないんじゃないかなと思います。

Q2 ではこの三十年の中でターニングポイントだったなぁと感じるのはいつですか?
元春: 何をターニングポイントと考えるのか、それによって違うと思いますけれども、創作の場を東京から一気にニューヨークに変えたこと、その後、ロンドンにも長く住んで、ロンドンでもソングライティングを続けたことがあります。そのように海外でクリエイティブな作業をしたということが、ひとつのターニングポイントになったんじゃないかなと思います。

Q3 たくさんの作品を作り続ける佐野さんですが、感性のアンテナはどんなふうに張っているのですか?
元春: よく詩曲を書くんですかといわれるんですけれども、ソングライターである自分というのは、作家と同じですから常に歌の題材を探していますし、普段の日常の生活の中でも、いろんなことをしながらでも言葉を探したり、メロディを浮かべたりとかしてるんです。それが当たり前の生活になっています。それがやがて曲や詩にまとまっていくということですね。

・ガラスのジェネレーション
元春: 「ガラスのジェネレーション」という曲は僕のキャリアの中でもかなり初期の曲ですね。たしか「アンジェリーナ」に続くシングル・カット・ナンバーだったと思います。よく自分が子どもの頃思っていたのは、親とかね、教師とか、いわゆる大人たちから叱られたときに、子どもである僕は言葉を持っていませんでしたから、言われっ放しで悔しいなと、なにか大人たちをギャフンといわせるような、なにか気の効いた言葉、台詞というかね、そういう一発かましてやりたいなと常に思っていたんだけれども、この「ガラスのジェネレーション」という曲の中でね、曲の最後に"つまらない大人にはなりたくない"と嘆いてるんだけれども、こういう言葉が、こういうラインが大人たちに一撃を喰らわせるんじゃないかななんて、そんなことを思いながら書いた曲です。

Q4 佐野さんがデビューした1980年当時は歌謡曲全盛だった時代。佐野元春作品はどんなふうに育っていったと実感していますか?
元春: 自分がキャリアをスタートさせたのは1980年。当時自分の音楽はさておき、メインストリームの音楽はアイドル歌手の音楽であったり、あるいは古い演歌の曲であったり、それからフォークの曲であったり。僕にとっては馴染みが薄いというか、聴いてもピンとこない曲が、いわゆるヒット・チャートを埋めていたわけですね。ですので自分がキャリアをスタートしたときにいちばん不安になったのは、僕が作るような曲を誰が聴いてくれるんだろうかということですね。いつかこのチャートに僕の曲が上がってくるような日がくるんだろうか、そういう不安がいつもありましたね。ただ仲間たちを見てみると、やっぱり僕と同じような音楽を作ってる人たちが多かったですし、やがて時代は変わってゆくんだろうなと、そんなことを思ってましたね。それまでになかった新しい言葉、それまでになかった歌い方、それまでになかったメロディ、ビート。とにかく新しいことに好奇心を持ってクリエイティブな作業をしていましたから、たぶん'80年代の僕というのはそうしたことの連続だったし、周りの人たちもそういうアーティストなんだなと見てくれていたんだと思います。'80年代に起こったことで新しいことは、それまでは作詞家がいて、作曲家がいて、編曲家がいて、また、そこにシンガーがいて、そういう共同作業で作られていたものが、僕のように自分で詩も書き曲も書き、バンドを集めて編曲も自分でして、で自分でレコードも作っちゃうという、そういう流れのいちばん最初のあたりに僕がいたのかなぁと思いますね。で、やがて僕のようなスタイルをする人たちがたくさん出て来て、それがひとつらなりになった。それは大きな力になりましたよね。そして流れになりました。そういうことが'80年代に起こった顕著な出来事なんじゃないかなと思います。

・約束の橋
元春: 「約束の橋」は'80年代後半、僕がロンドンに半年間ぐらい住んで、アパート借りてそこに住みながら、レコーディング・スタジオに通い作ったアルバム『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、このアルバムに収録した曲ですね。リビングルーム寝転びながら、この「約束の橋」の詩を書いていたのを思い出しますね。

Q5 '80年代後半からレコードはCDに、そしてレコーディングもアナログからデジタルに変化しはじめましたが、それらが佐野さんの作品に与えた影響はありますか?
元春: 確かに'80年代、それまでのアナログのレコーディングから、そろそろデジタルなレコーディングに変わっていこうという、そういう変化はありましたね。ただレコードを作るときにいちばん大事なことは、ミュージシャンたちのよい音を、きちんとよい音で録り、そして僕はソングライターとしていい詩を書き、いい曲を書き、楽しく歌う、その曲にぴったりと合った歌い方で歌う。で、聴いてくれる人にごきげんな気持ちになってもらう。これが基本の作業ですから、レコーディングのやり方は確かに、大きくこの三十年で変わってきましたけれども、レコーディングに対する姿勢みたいなものは何も変わってないと思います。

Q6 自分の作品がレコードからCDに変わってしまうことへの抵抗というのはありましたか?
元春: 僕はアナログ・レコードで育って来た世代なので、'80年代の中盤くらいに、自分の作ったレコードが、CDサイズに小さくなったときは、ちょっと残念だなぁと思いましたね。というのは僕は多感な頃、そこに収録されてる音楽の素晴らしさだけではなく、それを包んでるパッケージですね、アートと考えてましたから、レコードというのは総合的な表現である。音だけではなく、音とかアート、言葉、それらをまとめて見せてゆくトータル・アートだと考えていたんですね。CDですとグラフィックの表現エリアがかなり狭まりますから、音とアートの関連で表現できることがかなり狭められてしまう、その点でがっかりしました。

・ジャスミンガール
元春: 自分より先輩のシンガー・ソングライター大瀧詠一さん「バチェラー・ガール」作ってますよね。山下達郎さんも「高気圧ガール」を作ってた。僕も何とかガールで曲書きたいなぁと思って書いた曲がこの「ジャスミンガール」です。

Q7 この三十年のあいだには'80年代のテクノ・サウンドや、'90年代のオルタナティヴ・ロックなど、音楽にも様々な変化がありましたが、佐野さんにとって刺激的だったものはなんですか?
元春: それは刺激と言っていいのかわかりませんけれども、'80年代においてはテクノロジーが生んだ音楽ですよね、いわゆるコンピュータを使った音楽、あるいはテクノ・サウンド。それは今までのポップ・ロック・ヒストリーにはなかったトーン、マナーのサウンドでしたから、それは新鮮に感じました。しかし自分がやろうとは思いませんでした。'90年代は特に新しいものは感じなかったです。既に僕は最初からオルタナティヴですし、最初からミクスチュアですから、僕はそうしたミクスチュア・ロック、あるいはオルタナティヴ・ロックって聞いても、あまり新鮮さは感じなかったですね。

・君の魂 大事な魂
元春: 2004年、僕は新しいレーベルを作りました。DaisyMusicレーベル。そのDaisyMusicレーベルの第一弾アルバムが『THE SUN』ですね。この『THE SUN』アルバムのリーディング・シングルとなったのがこの「君の魂 大事な魂」。言ってみればロッカバーラード的な感じですけれども、朗々とした愛の歌を歌ってみたい、世の中世知辛いですからね。なにか朗々とした愛の歌、僕のレパートリーに一曲加えたいなと思って書いた曲がこの曲です。

Q8 先月セルフ・カヴァーのアルバム『月と専制君主』をリリースしましたが、三十年目にこのアルバムを作ろうと思ったのはなぜですか?
元春: 何といっても僕のアニバーサリーということよりも、三十年間僕の音楽を支持して来てくれたファンにとっての楽しいアニバーサリー・イヤーであってほしいな、そんな気持ちがあったんですね。ですので僕もベスト・アルバムを出したり、ライヴ・コンサートもいつもとは形態の違ったものをやったり、とにかくファンに喜んでもらおうという気持ちが強かったですね。その中の一環として考えついたのがこのセルフ・カヴァー・アルバムでした。

・クエスチョンズ
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。

Q9 昨年から3つの違ったスタイルでのコンサート・ツアーを展開して来た佐野さん。佐野さんにとってこのツアーはどんなものでしたか?
元春: 僕はレコード制作も大事として捉えていますけれども、それよりももっと大事に捉えてるのがこのライヴ・パフォーマンスですね。やはりレコードを作っただけでは作品は完成しない。コンサートで、バンドで披露して、自分の身体を使って演奏し歌い、それをファンに届けて、それで初めて曲というのは完成するんじゃないかなと思ってるんですね。今回30周年アニバーサリーということで、僕のライヴ表現も多様になって来てるんですけれども、パート1、2、3と分けて、それぞれ3つの違うバンドと、3つの違うパフォーマンス、これが実現できたことは本当に楽しかったですし、うれしかったです。

Q10 次のライヴは来月3月6日、大阪城ホールでの30周年アニバーサリー・ツアー・ファイナルですが、大阪という街でのライヴ。佐野さんにとってどんな思い出がありますか?
元春: 大阪という街でのライヴ。デビュー以来幾度となくね、この街でライヴをしてきました。いちばん最初にこの街で演奏したのはバーボンハウスというライヴハウス。三日間連続て演奏しました。一日目、二日目ほとんどお客いませんでしたけれども、三日目満杯になってほっとしたというね、で、何だかこの大阪の人たちに受け入れられたような、そんな気持ちになって、その次に大阪の厚生年金とか、いくつか経験を踏み、やがて大阪フェスティバルホールでコンサートができるようになった。毎回多くのオーディエンスが集まってくれて、そして僕たちの音楽に熱狂してくれた。僕は東京生まれ、東京育ちなので、大阪のことは全然わかってないですけれども、文化の違う彼らにね、本当に熱狂的に受け入れられたということは、僕にとって本当にうれしいことでした。そういうこともあって、毎回大阪のコーサートは僕も楽しみにしてるんですけれども、キャリアの中で何回か大阪城ホールでのライヴありました。今回も30周年ということで、僕の曲を多感な頃に聴いてくれた方たちから、また最近になって僕の音楽に興味を持ってくれた新しい世代まで、みんな一堂に集まってもらって、僕も心を込めてこれまでみなさんが愛してくれた曲をガンガン演奏していく、そういうオールタイムヒッツ的なライヴになってるので、大阪城というハコを借りて、目一杯僕たち演奏を楽しみたいと思うのでね、集まってくれた広い世代のみなさんも目一杯楽しんでもらいたいなと、そんなふうに思ってます。

・「ALL FLOWERS IN TIME」ファイナル公演
3月6日(日)に大阪城ホールで行われる佐野元春30周年アニバーサリー・ツアー「ALL FLOWERS IN TIME」ファイナル公演。ゲストとして伊藤銀次、スガシカオ、杉真理、堂島孝平、山下久美子、LOVE PSYCHEDELICO、スカパラホーンズ(NARGO/北原雅彦/GAMO/谷中敦)、and more...が出演。

・堂島孝平からのコメント
小学校4年生のときに「Wild Hearts」を聴いたという堂島くん。
「僕にとって佐野さんは、初めて日本の音楽ってかっこいいなと思わせてくれた方で、初めてコンサートを見たミュージシャンも佐野さんです。日本のアイドル、ヒーローが佐野さん」と堂島くん。
最近、コヨーテバンドとのライヴを見たけれど、大阪城ホールではホーボーキングバンドと一緒にやれるのが楽しみだと話した。

・レインガール
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。
コメント (2)
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Sunday Song Book #960

2011年02月27日 | Sunday Song Book

<02月27日プレイリスト>
[「夫婦放談番外編(ゲスト:竹内まりや)」]
愛してるって言えなくたって/山下達郎 3月9日発売ニュー・シングル
戻っておいで私の時間 2011/竹内まりや '11('78)
椎名林檎コメント
ウィスキーがお好きでしょ(LIVE)/竹内まりや '10
鈴木おさむコメント
人生の扉(LIVE)/竹内まりや "DENIM" '73
原由子コメント
小倉エージコメント
南果歩コメント
いのちのうた(LIVE)/竹内まりや '09
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■内容の一部を抜粋
・近況
今週から新曲のレコーディングに入る予定で、アレンジを一所懸命やってるところだそうだ。

・夫婦放談番外編
今週は臨時プログラムでまりやさんをゲストに「夫婦放談番外編」。昨年末に行われた「souvenir again」の音ソースを届けつつ、ライヴの思い出話や総括、いろんな人からの心温かいコメントの紹介。

・愛してるって言えなくたって
1月16日からスタートしたTBS系日曜劇場「冬のサクラ」の主題歌。主演は草なぎ剛さん、今井美樹さん。ニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」は3月9日発売。

・戻っておいで私の時間 2011
デビュー曲「戻っておいで私の時間」は伊勢丹のCM曲だったが、今年、伊勢丹が創業125周年を迎えたので、1月2日から期間限定で全国の伊勢丹の店内でキャンペーン・ソングとして「戻っておいで私の時間」2011年ヴァージョンがながれた。この度、3月30日から4月19日まで春のキャンペーンとして全国の伊勢丹の店内放送でながれるそうだ。
今回の「戻っておいで私の時間 2011」は服部克久先生のアレンジでニュー・ヴァージョンを再レコーディング。同じキーで歌ったので、この曲で加藤和彦さん、安井かずみさんと出会ったことなどいろんなことがフラッシュバックしたという。次のアルバムに収録する予定だとか。

・まりやさんへの質問
リスナーから「十年ぶりで緊張しませんでしたか? うれしかったことや残念だったこと、印象に残ったことがあれば教えてください。次回はいつ頃に予定してますか?」という質問。
十年ぶりじゃなくても緊張するのだとか。うれしかったことはみなさんにお会いできたこと。ミュージシャン、スタッフと一丸となって楽しく仕事ができたこと。残念だったのは時間の関係でやりたかった曲ができなかったこと、他の都市でもやりたかったということ。
「音楽をやっていてよかったなという実感を、お客さんを通してもらえたという幸福感は、何物にも代え難いことだったと思います」とまりやさん。
次回のコンサートはバンマス(達郎さん)に訊かないとわからないそうだ(笑)。

・椎名林檎さんのコメント
武道館で見たそうだ。まりやさんや達郎さんの音楽を聴いてた頃の、人生のいろんな出来事を思い出して、イントロだけで涙ぐんでしまったり、身体のどこかが熱くなったりしたとか。でも、まりやさんのクールなMCで冷静になったという。爆笑したのは、普段、終始一貫して達郎さんのことを立てているのに、ステージではぞんざいに扱ったこと。しかし、歌に戻るとまた涙がでてきてしまう、終わった後はひじょうに心地よい疲れがあったそうだ。

・ウィスキーがお好きでしょ(LIVE)
「souvenir again 2010」のライヴ・ソースから。正式なミックスではなく仮ミックス。
「土岐さんがいいソロを聴かせてくれてますね」とまりやさん。
曲前の椎名林檎さんのコメントに触れて、彼女の誕生日(1978年11月25日)とまりやさんが「戻っておいで私の時間」でデビューした日(1978年11月25日)が同じという不思議な縁で結ばれてるそうだ。日本の女性シンガー・ソングライターの中でいちばん好きなミュージシャンの一人で、感性と知性のバランスが美しい人だ、とまりやさん。
達郎さんのことをぞんざいに扱ったというのは、たまたまその日は達郎さんのメンバー紹介を忘れたので、そう思ったのかもしれないとか。まりやさんはあとで相当焦ったのだそうだ。

・鈴木おさむさんのコメント
「人生の扉」をライヴで聴いたときに懐かしいんじゃなくて繋がってると思ったそうだ。今の時代にメッセージを残してる、闘ってるというふうな気がしたとか。自分も本気でがんばろうと思ったという。

・人生の扉(LIVE)
アンコール前、本編の最後に歌われた曲なので「どうも、ありがとうございました」とまりやさんが言ってる。

・原由子さんのコメント
桑田さんが食道ガンのため休養することになったとき、まりやさんから心のこもった手紙とドリーム・キャッチャーというお守りをもらって励まされたという。また、達郎さんがライヴのMCで、桑田さんの名前を出して曲を捧げてくれたことも、とてもうれしくて力をもらったそうだ。NHKホールで聴いた「希望という名の光」には鳥肌が立ったとか。桑田さんもその後、回復して、レコーディングを再開し、ニュー・アルバム『MUSICMAN』を発表。仕事に復帰することができたと報告。昨年12月のまりやさんのライヴ、武道館で聴いた「チャンスの前髪」にはドキドキしたとか。原さんのパートはコーラスのふたりによって歌われたが、原さんも心の中で一緒に歌っていたという。手拍子も一緒にして一ファンとして心から楽しんだそうだ。「人生の扉」も胸に響き、まりやさんのように日々の小さな幸せを大切にしながら、素敵に年を重ねていけたらいいなと思った、と原さん。近々、また4人で会えそうなのが楽しみなんだとか。

・小倉エージさんのコメント
十年ぶりのコンーサートで、いちばん印象的だったのは、まりやさんの歌とヴォーカリストとしての存在感だったと小倉さん。人間味を増してたのが最も印象的だったと。人間味というのは年相応に人生経験を積んで、今現在の彼女を表現しようとしたということ。かつて書いた曲も人生経験を積み重ねたおかげで新しい発見があったんじゃないかと思ったそうだ。ライヴのセットリスト、曲順を含めて、吟味したうえで新しい解釈があったのは、その新しい発見を伝えたかったのじゃないか、それが彼女のいちばんの意図だったんじゃないかと思ったとか。次のコンサートがまた十年後というのは寂しいので、ファンがリクエストしたら実現するんじゃないかと思ってると話した。

・南果歩さんのコメント
武道館初日に行ったとか。1曲目の「家に帰ろう」で涙を流したという。最後のピアノ弾き語りの「いのちのうた」は、今のまりやさんの心情で歌われたので、また涙が流れてしまったとか。大阪まで追っかけて結局、二度見たそうだ。

まりやさんによると大阪には渡辺謙さんもいらしていたとか。
コメントに対する返事もたくさんしたかったが、ライヴ・ソースは曲が長いので、放送では時間が足りなくなったのだという。
プレゼント告知の時間もなく来週発表、ハガキもほとんど紹介できなかった。
この続きは「納涼夫婦放談」で、とのこと。

・コンサート・パンフ
リスナーから「コンサートに行けなかったのですが、せめてパンフレットだけでもほしい」というお便り。
まりやさんのコンサート・パンフレット等のグッズはホームページのほうで販売している。
http://www.mariyat.co.jp//index.html

・まりやさんへの質問
リスナーからの質問で「十年前と変わったことは?」。
十年前と変わったことは「意外と好きかもと思ったこと」だそうだ。

・まりやさんへの質問
リスナーから「達郎さんはライヴを果たし合いとおっしゃいますが、まりやさんは?」。
ライヴについては、「一期一会の出会いの喜び」なのだそうだ。

・いのちのうた(LIVE)
朝ドラ「だんだん」でマナカナが歌った曲。作詞のMIYABIが実は竹内まりやだったことを発表して、コンサートのいちばん最後に、まりやさんがピアノ弾き語りで歌った。

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係
■今後の予定
03月06日は、「ひなまつり GIRL SOUND 特集」
http://www.smile-co.co.jp/tats/
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Sunday Song Book #959

2011年02月20日 | Sunday Song Book

<02月20日プレイリスト>
[「棚からひとつかみ+リクエスト」]
高気圧ガール('09 LIVE VERSION)/山下達郎 3月9日発売ニュー・シングル
GLORIA/THEM '65
MY HEART(WILL UNDERSTAND)/LINDA JONES '69
YOU AND YOU ALONE/LEE MITCHELL '73
THINK ABOUT TOMORROW/THE ETHICS '68
ANGEL EYES/OLIVIA NEWTON-JOHN "LONG LIVE LOVE" '74
A THOUSAND SHADOWS/THE SEEDS '67
愛してるって言えなくたって/山下達郎 3月9日発売ニュー・シングル
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■内容の一部を抜粋
・近況
新曲のデモ・テープの締め切り間際で徹夜したそうだ。その日は法事があり、暗くなってからは目が冴えてきて、六本木ヒルズに映画『ソーシャル・ネットワーク』を観に行ったとか。

・高気圧ガール('09 LIVE VERSION)
3月9日発売のニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」のカップリング曲。「高気圧ガール」のスタジオ・ヴァージョン(1983年)がアサヒの缶チューハイ「Slat(すらっと)」のCMソングに使われている。ニュー・マスターで収録してもよかったのだが、「PERFORMANCE 2008 - 2009」で十数年ぶりにステージにかけたこともあり、今回はライヴ・ヴァージョンをカップリングにすることにしたとか。「'09 LIVE VERSION」だが詳細はまた来週発表予定。

・GLORIA
ゼムはヴァン・モリソン率いるアイルランドのグループ。レコード・デビューと同時に目まぐるしいメンバー・チェンジが行われたので、ヴァン・モリソンのソロ・プロジェクトとして宿命づけられていたと達郎さん。1965年、全米チャート93位だが、後にたくさんのカヴァーが生まれた。ゼムの、ヴァン・モリソンの代表作として知られるようになった。
「誰にも真似できない(笑)、ヴァン・モリソンの自作自演のロックンロールの傑作でございます。ブルー・アイド・ソウルでございますね」と達郎さん。

・MY HEART(WILL UNDERSTAND)
リンダ・ジョーンズはニュージャージーの黒人女性シンガー。28歳の若さで亡くなった、ゴスペル・フィールドから出てきた、ひじょうに特徴のある歌い方をする、達郎さんの大好きなシンガー。プロデュースはジョージ・カー。アレンジはリチャード・ティー。1969年のシングル「MY HEART(WILL UNDERSTAND)」。

・YOU AND YOU ALONE
リー・ミッチェルは全くの無名シンガー。シングルが6枚確認されているとか。ボストン出身で、'50年代の末からゴスペル畑で長いキャリアがある。その中から1973年のシングル「YOU AND YOU ALONE」。

・クルマ
横浜市の超常連リスナーから、「リクエストをハガキでのみ受け付ける番組はないと仰ってましたが、言いようのない寂しい感じがします。僕は同じクルマを長く乗り続けていますが、点検、車検をディーラーに持って行く度に、肩身の狭い思いをします。例えは違いますが、時代の流れを感じずにはいられません。ハガキのリクエストを支持します」というお便りを読んで。
「私も同じクルマを長~く乗り続けております。こないだ車検が、20年目の車検になりましてですね。どうしようかと、かなり悩みましてですね。新車にしようか、そのままにしようか。何年も乗ってるクルマですと、車検がどんどんどんどん高くなりますので、思い切って新車買っちゃったほうが、結果的に安上がりになるとか、いろんなことを言われまして。クルマ屋行ったんですけど、やっぱり今乗ってるクルマのほうがよくてですね、20年前のクルマですので、何しろETCもありませんし、サーモスタットもいい加減なんですが、ETC付けまして、カーナビは止めました。で、いよいよCDとFMが聴こえなくなってきましたので、カーステレオを変えようということで、今、カーステレオのカタログを見ております。そんなことをやっておりましたら、このようなお便りをいただきました。また(お便りを)下さい」と達郎さん。

・THINK ABOUT TOMORROW
スイート・ソウルものへのリクエスト。エシックスはフィラデルフィアのヴォーカル・グループ。その後、エシックスはラブ・コミッテイに名前を変え、リード・ヴォーカルのロン・タイソンという人がテンプテーションズに加入した。エシックスの1968年のファースト・シングル「THINK ABOUT TOMORROW」。プロデュースがヴィンセント・モンタナなのでバックはフィリーのMFSBでしょう、と達郎さん。

・夫婦放談番外編
来週2月27日は臨時プログラムでまりやさんをゲストに「夫婦放談番外編」。昨年末の「souvenir again」ライヴの思い出話や、今やってる仕事、伊勢丹のCM曲「戻っておいで・私の時間」2011年ヴァージョンの話など。お便りをお待ちしてますとのこと。

・新曲インフォメーション
1月16日からスタートしたTBS系日曜劇場「冬のサクラ」の主題歌。主演は草なぎ剛さん、今井美樹さん。ニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」は3月9日発売。本日2月20日からテレビ・サイズ、ドラマでながれてるエディット・ヴァージョンの着うた配信がスタートした。レコチョク、WAMO、music.jp、dwango.jp、ほか、着うたサイトで配信。詳しくはワーナーミュージック・ジャパンのホームページで。
http://wmg.jp/artist/tatsuro/index.html

・ドラマの曲
リスナーからの質問で「ドラマの曲はどのようなインスピレーションで作られるのですか?」。
ドラマもいろいろあって、今回の「冬のサクラ」はオリジナル脚本だが、第二話までの脚本しかできてなかったので、その空気感とあらすじを頭に入れて作ったそうだ。結末は知らないという。「街物語」の場合は原作の東野圭吾さんの小説を読んで書いたとか。この場合は結末はわかっていた。映画だと台本ができてから曲のオファーが来るけれど、テレビの連続ドラマの場合は下手すると途中で展開が変わる場合もあるので、あんまり密着して書けないそうだ。

・リプロ盤
リスナーからの質問で「2月6日の放送でニューヨークのレコード店店主が言ってたリプロ盤とはどんなレコードなんでしょうか?」。
復刻盤、リイシューのことだとか。インディだとオリジナル・シングルのプレス枚数が少ないので、そうすると天文学的な値段になるので、複製を作るのだそうだ。全く見た目は同じだが、微妙に色が退色してたりする。刻んであるシリアル番号も同じなので偽物といってもいいが、ブートよりも若干、違法性が少ない復刻盤にリプロという名称をつけてるそうだ。デジタル時代には無縁の話。

・ANGEL EYES
リスナーからオリビア・ニュートン・ジョン以外の「ANGEL EYES」にリクエスト。トニー・マコーレの作品。達郎さんはオリビアへのリクエストだと勘違い。珍しいリクエストだなと思ったんだとか(笑)。トニー・マコーレの作品を集めている関係で、今回調べてみたらト「ANGEL EYES」はオリビア以外に取り上げてるシンガーがいないとか。せっかくリマスタリングしたのでオンエア。オリビア・ニュートン・ジョンの1974年のアルバム『LONG LIVE LOVE』に収録。初期のアルバムなのでヒットしてないとか。

・A THOUSAND SHADOWS
ザ・シーズはサイケデリック・ムーブメントの頃活躍したサンフランシスコの4人組のバンド。「A THOUSAND SHADOWS」(邦題「花咲く木かげ」)は1967年、全米チャート72位。この曲が入ってるサード・アルバムがこの度、紙ジャケで発売されたとか。

・愛してるって言えなくたって
1月16日からスタートしたTBS系日曜劇場「冬のサクラ」の主題歌。主演は草なぎ剛さん、今井美樹さん。ニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」は3月9日発売。

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係
■今後の予定
02月27日は、「夫婦放談番外編(ゲスト:竹内まりや)」
http://www.smile-co.co.jp/tats/
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ALL FLOWERS IN TIME(FM COCOLO) #3

2011年02月19日 | 佐野元春 Radio Days

■ALL FLOWERS IN TIME #3
2011年2月19日(土) FM COCOLO 19:00 - 20:00
http://www.cocolo.co.jp/contpgm2/w_main.php?oya_id=278
出演: 佐野元春

Play List
1 夏草の誘い / 佐野元春
2 悲しきRADIO / 佐野元春
3 Wild Hearts / 佐野元春
4 楽しい時 / 佐野元春
5 ドクター / 佐野元春
6 君が気高い孤独なら / 佐野元春
7 Rock & Roll Night / 佐野元春
8 彼女が自由に踊るとき / 佐野元春
9 スターダストキッズ / 佐野元春
---------------------------------------------------
■内容の一部を抜粋
2010年春からFM802の支援を受けているFM COCOLOは"WHOLE EARTH STATION"をキャッチ・フレーズにして四十五歳以上の世代を対象にした大人のためのラジオ局として生まれ変わった。土曜日午後7時からのこの枠は月代わりでミュージシャンがDJを担当する。今月二月は佐野元春をフィーチャー。

全四回放送の第三回目、今週のテーマは「BAND」。

・夏草の誘い
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。

Q1 佐野さんが初めてバンドを組んだのはいつ? それはどんなバンドでしたか?
高校生の頃、15歳のとき。ドラム、ベース、ギターのフォーピースのバンドだったそうだ。最初ははっぴいえんどとか、はっぴいえんどが影響を受けた欧米のバンド、バッファロー・スプリングフィールドなどをやっていたが、次第に元春が作るオリジナルを演奏するバンドになったとか。

Q2 その当時、憧れていたバンドにはどんなバンドがありますか?
ドアーズとかジェファーソン・エアプレインなのだそうだ。ビートルズ、キンクス、ストーンズは一時代前のバンドだったとか。'60年代末のことで、ベイエリアのサンフランシスコを中心としたサイケデリックなバンドがいいなと思っていたという。

Q3 バンドを組むことの魅力ってなんですか?
元春: 一人でやるよりか、みんなでやったほうが楽しいですし、バンドというのはそれぞれミュージシャン、違った音楽の背景がありますから、1+1が3にも4にもなるという、そういう化学変化があるんですよね。一人でやるときよりも、バンドと一緒に音楽を作っていくのが楽しいです。

Q4 佐野さんのバンド、ハートランドとの出会いを教えてください。
元春: ハートランドはメンバーひとり一人、個別に出会っていって、そして最後にドラマーが決まらず、オーディションの形式でやった。当時、原田真二 & クライシスでドラムを叩いてた古田たかしがまだ16歳か17歳ぐらいだったんだけれども、とにかく僕はごきげんなドラマーを探していて、通り一遍の8ビートを叩くドラマーじゃなくて、サーカスのショウの中で叩いてるドラマーみたいな、派手なドラマーを探してたんですね。そんな中、古田たかしとの出会いがあり、彼はまさしくそうしたタイプのドラマーでね、彼が決まることによって第一期のハートランドの形が決まりました。

・悲しきRADIO
元春: 初期の僕らの「悲しきRADIO」という曲は特にライヴで爆発する曲で、典型的なロックンロール・ナンバーなんですけれども、いろいろとドラマがあり、起伏もあり、ライヴ向けのアレンジにして披露してきましたから、ファンの中でも楽しみにしている人多いと思うんですね。

Q5 ハートランドともに全国ツアーを行ってきた中で、バンドの完成度を高めることでしていたことってありますか?
長くバンドを続けていくことが大事。共にいつまでもクリエイティブでいようという精神が大事になってくるそうだ。どうしても長く一緒にいると馴れ合いになってしまって、クリエイティブでいようという気持ちがややもすると後退する。常にバンドに刺激を与え、常に新しい音楽を彼らにもたらし、クリエイティブでいようということを実践した、彼らもよくついてきてくれたと元春。

Q6 そんな中で完成したハートランドを解散しようと思ったのはなぜですか?
元春: 僕たちハートランドは14年活動を共にしてきました。レコーディングに、またスタジオ・ワークに、またライヴにですね。小さな小さなライヴハウスから、球場クラスのコンサートまで、本当に僕たちは多くの感動の場面を共有した仲間といえますね。何度かクリエイティブなピークを自分たちは体験しました。14年のうちで3回ぐらい経験したんですけれども、解散しようというときにはこれ以上のクリエイティブなピークは作れるんだろうか、といったところになかなか答えが出ないという状態だったんですね。惰性でバンドを続けるより、クリエイティブにピークをこれ以上作れない、そこに自信がないんだったらば、お互いの道を進もうということで別れました。

・Wild Hearts
元春: 「Wild Hearts」、アルバム『Cafe Bohemia』に収録した曲ですね。ライヴでもexバンドであるザ・ハートランド、特に演奏中間部、ダディ柴田がごきげんなサキソフォン・プレーをいつも披露してくれて、オーディエンスだけではなくて、僕たちバンドもね、ダディ柴田のプレーをいつも楽しみにしていました。

Q7 '90年代、アルバム『FRUITS』の制作をきっかけにザ・ホーボーキングバンドを結成することになりますが、その経緯は?
元春: ザ・ハートランドを解散した後、ウダウダしていてもしょうがない、前進しなければいけないということで、無理矢理レコーディング・セッションを組んだんですね。アルバム『FRUITS』というレコード。このアルバム『FRUITS』のレコーディング・セッションに、僕が気になるセッション・プレーヤーを呼んで、そこで彼らとセッションする中で、いい音を作っていこう、こういうふうに考えました。結果で言うと、その『FRUITS』というアルバムのレコーディング・セッションに集まってくれた何人かが、集ってできたのが、後のホーボーキングバンドですね。

Q8 アルバムを作る時点では、そのときのメンバーを、次のバンドのメンバーにするというヴィジョンはなかったのですか?
元春: おぼろげに次のバンドのメンバーが見つかったらいいなとは思ってましたけれども、またこの『FRUITS』というセッションが、ひとつのオーディションのようなかたちになるということは、考えていましたけれども、具体的にはイメージはなかったです。

Q9 ホーボーキングバンドとハートランド。ふたつのバンドの共通点と、また違うところはどこですか?
元春: exバンドであるハートランドもホーボーキングバンドも、共通していえるのは、みんな優れたミュージシャンたちということですね。そして僕の言葉をちゃんと聞いて演奏する、演奏のための演奏家ではなく、シンガー・ソングライターの言葉を聞きながら演奏してくれる、そういうスキルの高いミュージシャンたち、これが両バンドのミュージシャンたちに共通しているところです。ザ・ハートランド、ホーボーキングバンド、プレーヤーが違いますから、僕の曲をバッキングするときに、多少のサウンドの違いというのはありますけれども、それは僕にとっては大したことじゃないです。とにかく僕の言葉を聞いてくれて、そしてそこに適切な演奏してくれる。そしてロックンロール音楽に敬意を持って接し、音楽を馬鹿にしないということですよね。ここが暗黙の了解としてあったので、バンドは変わりましたけれども、サウンドも少し変わったのかもしれないですけれども、その音楽に向かうスピリット、精神ですね、ここは共通していたので違和感はなかったです。

・ドクター
元春: ホーボーキングバンドも演奏するのが大好きな連中ですから、「ドクター」というこの曲を演奏するときも、彼らは本当に喜んで演奏してました。その様子を見て、僕だけではなくて、プレーヤーひとり一人にピンスポットが当たるような、そういう場面を作ろうということで、ギタリスト佐橋くん、あるいはkyOnですよね、彼らがごきげんなインタープレーを披露しやすいように、そういう場所を設けて、そういうアレンジにしたのを覚えてます。

Q10 アーティストとしてのキャリアが長くなり、オリジナル曲も増えると、ライヴでの選曲もさらに悩むようになると思いますが、佐野さんはライヴで演奏する曲をどんなふうに選んでますか?
元春: ライヴでの選曲はふたつ考え方があって、ひとつは新しいアルバムを出したときのプロモーショナルなセットリストにする。それからもうひとつは、ライヴというのはファンが楽しみに集まってくれるわけですから、ファンが好んでくれるセットリストにする。時と場合に応じてこのふたつの考えを混ぜたり、ひとつの傾向を強くしたりします。

Q11 コヨーテバンドのメンバーはどうやって選んだんですか?
元春: 僕の下の世代でも、ロックンロール音楽に愛情を持ち、またプレイヤビリティの高いミュージシャンというのは何人か出てきて、僕の目に留まりました。当然、そうした彼らの音楽をレコードを聴き、ライヴで観るということになりましたね。その中からコヨーテバンドのメンバーが集まってくれました。

・君が気高い孤独なら
元春: 「君が気高い孤独なら」。これは『COYOTE』というアルバムに収録した曲であり、『COYOTE』からのシングル・カット・ナンバーですね。久し振りに明るい調子のダンサブルな曲を歌ってみようということで書いてみました。多少、モータウン的な響きがあるかもしれませんけれども、年代は問わずですね、世代は問わず、楽しく踊りたくなるような曲を書いてみよう、ということで書いた曲です。当然ライヴでもそうして作って演奏してますから、オーディエンスみんな踊ってました。うれしかったです。

・「ALL FLOWERS IN TIME」ファイナル公演
3月6日(日)に大阪城ホールで行われる佐野元春30周年アニバーサリー全国大都市ツアー「ALL FLOWERS IN TIME」ファイナル公演。ゲストとして伊藤銀次、スガシカオ、杉真理、堂島孝平、山下久美子、LOVE PSYCHEDELICO、スカパラホーンズ(NARGO/北原雅彦/GAMO/谷中敦)、and more...が出演。

・スガシカオからメッセージ
高校生のときから元春のファンだという。「ヤングブラッズ」のミュージック・ビデオを撮影したことで知られる代々木公園に仲間4,5人と行って記念撮影したこともあるそうだ。同じステージには一度だけ立ったことがあるけれど、ガチでということになるとはじめてだから、自分の青春を全部背負ってステージに出ようと思ってるとスガシカオは話した。

・彼女が自由に踊るとき
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。
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Motoharu Radio Show #069

2011年02月16日 | Motoharu Radio Show

2011/02/15 OnAir - 3rd. Week
01.Trey Anastasio:Shine
02.Arcade Fire:Modern Man
03.Kathleen Edwards:Hockey Skates
04.Adele:Rolling In the Deep
05.Adele:He Won't Go
06.Mark Egan:Cafe' Risque
07.John Mayer:Your Body Is a Wonderland
08.Duffy:Warwick Avenue
09.Rufus Wainwright:Dinner at Eight
10.Joss Stone:Right to Be Wrong
11.Ray Charles & Norah Jones:Here We Go Again
---------------------------------------------------
■内容の一部を抜粋
・Shine
フイッシュのメンバーのひとりで素晴らしいギタリスト、トレイ・アナスタシオのレコードから。

・Modern Man
アーケード・ファイアはカナダのバンド。
「いろいろな楽器を使った曲のアレンジが面白いです。僕はこのバンドの音楽が好きですね。また番組で詳しく紹介したいと思います」と元春。

・Hockey Skates
カナダの女性シンガー・ソングライター、キャスリン・エドワード。伝統的なアメリカ音楽をベースにした演奏が魅力。両親がボブ・ディランとニール・ヤングが好きで、子どもの頃からよく聴いていたということ。自分のソングライティングも彼らから影響を受けたと言ってる。

・ツイッター
「さて、Motoharu Radio Showでは今番組を聴いてくれている全国リスナーのみなさんがインターネット上で楽しくコミュニケーションできるツイッターという仕組みを採用しています。ここに参加したいという方は今からURLをお知らせするので是非書き取ってください。番組からツイッターのお知らせでした」と元春。
http://www.moto.co.jp/MRS/

・3PICKS!
「Motoharu Radio Show」では毎月番組推薦盤3枚のCDをピックアップしている。今月2月の「3PICKS!」はダフィー『Endlessly』、カニエ・ウェスト『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』、そしてアデル『21』。どのレコードも心に響くよいソングライティングと素晴らしいサウンドがあると元春。この中から今週はアデル『21』。

・アデル
イギリス出身の女性シンガー・ソングライター。現在22歳。ニュー・アルバム『21』は地元イギリスで初登場チャートNO.1となっている。現在、世界的にも大きなヒットが期待されてるアルバム。14歳の頃から作曲とギターをはじめた。シンガーとして影響を受けたのはアメリカの女性R&Bシンガー、エタ・ジェイムズ。'60年代、チェス・レコードと契約して多くのヒット・レコードを出したシンガー。以前、このチェス・レコードを題材にした『キャデラック・レコード』という映画があった。このエタ・ジェイムズの役をビヨンセが演じて話題になった。そのエタ・ジェイムズに影響を受けたということもあって、アデルはとてもブルージィーで魂のこもった歌声が素晴らしい。
「アメリカにしてもイギリスにしてもそうなんですが、このようにアデルのような実力派のシンガー・ソングライターの作品がメイン・ストリームのチャートでNO.1になるということは、なんだかんだ言っても海外のヒット・チャートは健全じゃないかと僕は思います。話はちょっと横道にそれますが、このメイン・ストリームのヒット・チャートというものが、その国の人たちのある種の音楽文化のバロメーターだとしたら、じゃあ僕らのこの日本のヒット・チャートはどうか? と言ったときに、僕は個人的には何か違和感を感じてしまいます。日本人のアートに対する審美眼は素晴らしいと思うので、是非このアデルのような実力派のシンガー・ソングライターの作品がチャートを賑わすようになると、おもしろいんじゃないかと思います」と元春。
新しいアルバム『21』から「Rolling In the Deep」と「He Won't Go」の2曲。

・GreenPeople
環境問題に取り組むユースたちを紹介するレポート「GreenPeople」。毎週このコーナーでは環境を巡る社会活動を通じて様々なアクションを起こしている人たちを紹介。このコーナーの協力はNHKの環境特集番組「SAVE THE FUTURE」。
http://www.nhk.or.jp/savethefuture/mamoribito/index.html

今週はNPO法人「秋葉原で社会貢献を行う市民の会リコリタ」。2004年からメイド喫茶などの秋葉原カルチャーを活かした活動を行っている。
http://www.nhk.or.jp/savethefuture/mamoribito/movie/motoharu1.html

・Cafe' Risque
超絶的なテクニックを持つ素晴らしいベース・プレーヤー、マーク・イーガンのレコードから。キーボードにミッチ・フォアマン、ドラムスにビニー・カリウタが参加したインストゥルメンタル。

・Your Body Is a Wonderland
ジョン・メイヤーの「Your Body Is a Wonderland」。
「なかなか洒落たタイトルが付いてます」と元春。

・Warwick Avenue
ダフィーの「Warwick Avenue」。
「'60年代のダスティ・スプリングフィールドのような歌声が魅力的です」と元春。

続いてルーファス・ウェインライトの「Dinner at Eight」とジョス・ストーンの「Right to Be Wrong」の2曲が立て続けにかかった。

・四十代の頃
四十歳になったリスナーから「元春さんは四十代の頃、どんなことを考えてましたか?」という質問。
「そうですね。人というのはおもしろいことに、二十代のときは気持ちは十代。三十代の頃は気持ちは二十代。四十代のときには気持ちは三十代なんです。ここにちょっと空回りするわけがあるような気がします。四十代の頃というと、僕の場合は、そうですね、独りよがりに僕が僕がとかね、自分が自分がという感じでいましたね。小さなことにこだわらず、ゆっくり、ゆったりと構えたい、そんなことを感じはじめたのが四十代の頃でした。まぁ、実際は感じるだけで、あまりうまくいってなかったように思います」と元春。

・Here We Go Again
レイ・チャールズとノラ・ジョーンズのデュエット曲「Here We Go Again」が今夜のラスト・ナンバー。
彼女と再会した、馬鹿なことってわかってるけれど、また彼女の気持ちを取り戻したいんだ、と歌っている。

・次回放送
3月1日火曜日午後11時から。
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Sunday Song Book #958

2011年02月14日 | Sunday Song Book

<02月13日プレイリスト>
[「棚からひとつかみ+リクエスト」]
愛してるって言えなくたって/山下達郎 3月9日発売ニュー・シングル
COME ON IN/THE ASSOCIATION "BIRTHDAY" '68
HOW GLAD I AM/JOYCE COBB '80
DIDN'T I/DORANDO(DARONDO) '7?
STILL I GOT THE BLUES/GARY MOORE "BLUES ALIVE" '93
THANK YOU/SLY & THE FAMILY STONE '70
DOING IT TO DEATH/THE JB'S "DOING IT TO DEATH" '73
高気圧ガール/山下達郎 '83
---------------------------------------------------
■内容の一部を抜粋
・近況
新曲の曲書きでうんうん唸ってるとか。
「デモ・テープの締め切りが近くなっておりまして、実を申しますと頭がパツンパツンでございまして(笑)。何曲書こうとですね、いつ書こうと新曲作るのはけっこう大変でございまして(笑)。なので番組のほうに、ちょっとしわ寄せが来ております」と達郎さん。
そんなわけで今週は「棚からひとつかみ+リクエスト」。先週のドゥーワップ特集は好評だったので、近いうちにまた特集したいそうだが、曲書きで資料を調べる心の余裕がないから、なんかで「棚からひとつかみ」でいってみたいとか。今週、来週はデモ・テープ作り、その後は新曲のレコーディングがはじまり、それが終わったらアルバムのレコーディングという感じ。

・愛してるって言えなくたって
3月9日発売のニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」。ようやくお皿が上がってきて今日からフル・ヴァージョン。テレビ・サイズとはストリングスが入ってくる場所が違うのだという。

・COME ON IN
アソシエイションは'60年代に活躍した6人組のヴォーカル・インストゥルメンタル・グループだが、レコーディングは、この時代は、こうしたグループは大体スタジオ・ミュージシャンのオケで録音されてる。1968年の名作アルバム『BIRTHDAY』の1曲目。
「ハル・ブレイン、ジョン・オズボーンのリズム・セクションの素晴らしいグルーヴで、ひじょうに、こうアソシエイションならではのモーダルなコーラスが展開されます。わたくしの[クリスマス・イブ]という曲がございますが、これのコーダのコーラスのセオリーというのは、アソシエイションのこうしたモーダルな感じからヒントを得て作っております。もう中学、高校生のときに死ぬほど聴きました。こうしたコーラス・アレンジの奥にはカート・ボエッチャーという有名なコーラスのエキスパートがおりますがですね。カート・ボエッチャー・スクールというんでございますが、アソシエイション、[COME ON IN]久し振りにかけました。いい曲でございます。また(リクエスト)ください」と達郎さん

・ラジコ
神戸市のリスナーから、ラジオの調子が悪くて最近、サンソンが聴けてない、これからも聴き続けたいので、いい方法を教えてくださいというお便りを読んで。
「神戸市だったらラジコでいけるんじゃないですかね。ラジコでお楽しみください。ちょっとだけ音質が落ちますが、確実に聴けますので」と達郎さん。

・HOW GLAD I AM
先日のオフにレコードの整理をしていたら、いいレコードが出てきたと達郎さん。その中からいちばん気に入った一枚。
ジョイス・コブはオクラホマ出身の女性R&Bシンガー。'70年代から'80年代にかけてシングル5枚しか出てないそうだ。「HOW GLAD I AM」は1980年のシングル。ソウルチャート90位、全米チャート107位。未CD化。

・DIDN'T I
ドランドはカリフォルニアのオークランドのシンガー。シングルは3枚しか出てない。達郎さんはそのうちの1枚を持ってるそうだ。つい最近CDが出て、アーティスト名はダロンドになっていた。達郎さんの持ってるシングルはドランドだったので調べるとダロンドが本当だったとか。シングルと未発表のデモがCDになった。「転調の感じが完全にアル・グリーンですが」と達郎さん。

・STILL I GOT THE BLUES
2月6日にゲイリー・ムーアが心臓発作で静養先のスペインで亡くなった。達郎さんと同世代の58歳。ゲイリー・ムーアはシン・リジィからソロになって活動を続けてきた。日本では大変な人気があった。'90年代からブルースに凝り出し、ハード・ロック、ヘビー・メタルに縁がなかった達郎さんも好きになり、いろいろと聴いてきたという。ゲイリー・ムーアを追悼して、ブルース路線になったアルバムの表題曲「STILL I GOT THE BLUES」を1993年のライヴ盤『BLUES ALIVE』から。

・夫婦放談番外編
再来週2月27日は臨時プログラムでまりやさんをゲストに「夫婦放談番外編」。昨年末の「souvenir again」ライヴの思い出話。お便りをお待ちしてますとのこと。

・新曲インフォメーション
1月16日からスタートしたTBS系日曜劇場「冬のサクラ」の主題歌。主演は草なぎ剛さん、今井美樹さん。ニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」は3月9日発売。カップリングは「高気圧ガール」のライヴ・ヴァージョン。PERFORMANCE 2008 - 2009から「'09 LIVE VERSION」で来週オンエア予定とのこと。

・THANK YOU
リスナーからの質問で「以前ビートルズの[I'M DOWN]」を9thではじまる珍しい曲と仰ってました。山下さんの[JUNGLE SWING]にもある9thのコードとはどのようなものですか? またこのコードが使われてる代表的な曲がありましたら紹介してください」。
スタジオでギターを弾いて実演して、代表的な曲としてスライ&ザ・ファミリーストーンの「THANK YOU」のさわりを紹介した。

・DOING IT TO DEATH
ジェームズ・ブラウンにも9thの曲がたくさんある。「SEX MASHINE」もそう。その中から達郎さんが9thのコードが使われてる代表的な曲として選んだのはJB'Sの1973年のアルバム『DOING IT TO DEATH』のタイトル曲。JB'Sはジェームズ・ブラウンのバック・バンド。

・冗談は顔だけに
リスナーからの質問で「PERFORMANCE 2010では[砂の女]で"冗談は顔だけに"と歌ってらっしゃいましたが、これはどうしてですか?」。
「シャレです、シャレ。シュガーベイブのときからそうやって歌ってるんです。これが不遜だとか、そういう...シャレですよ。シャレがわかんなきゃしょうがない。21のときからこれで歌ってるんですから。あそこを"冗談は顔だけに"と歌うのが山下達郎の[砂の女]だと解釈していただければけっこうです。以来35年それでやっておりますから。次のライヴ・アルバムに入れるときも、それのヴァージョンでいきます」と達郎さん。

・高気圧ガール
「高気圧ガール」のスタジオ・ヴァージョン(1983年)がアサヒの缶チューハイ「Slat(すらっと)」のCMソングに使われている。実に28年ぶりの再登場。

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係
■今後の予定
02月20日は、「棚からひとつかみ+リクエスト」
02月27日は、「夫婦放談番外編(ゲスト:竹内まりや)」
http://www.smile-co.co.jp/tats/
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ALL FLOWERS IN TIME(FM COCOLO) #2

2011年02月13日 | 佐野元春 Radio Days

■ALL FLOWERS IN TIME #2
2011年2月12日(土) FM COCOLO 19:00 - 20:00
http://www.cocolo.co.jp/contpgm2/w_main.php?oya_id=278
出演: 佐野元春

Play List
1 ジュジュ / 佐野元春
2 アンジェリーナ / 佐野元春
3 New Age / 佐野元春
4 Strange Days / 佐野元春
5 水上バスに乗って / 佐野元春
6 荒野の何処かで / 佐野元春
7 Young Forever / 佐野元春
8 日曜の朝の憂鬱 / 佐野元春
9 シュガータイム / 佐野元春
---------------------------------------------------
■内容の一部を抜粋
2010年春からFM802の支援を受けているFM COCOLOは"WHOLE EARTH STATION"をキャッチ・フレーズにして四十五歳以上の世代を対象にした大人のためのラジオ局として生まれ変わった。土曜日午後7時からのこの枠は月代わりでミュージシャンがDJを担当する。今月二月は佐野元春をフィーチャー。

全四回放送の第二回目、今週のテーマは「RECORDING」。

・ジュジュ
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。
「今回はホーボーキングバンドと一緒にモータウン・サウンドに挑戦しました」と元春。

Q1 レコーディングを行うとき、最もこだわることはなんですか?
サウンド作りに時間とお金をかけるそうだ。'80年代は日本のレコーディング環境に満足できなかったので、海外、ニューヨークやロンドンに行ってレコーディングする機会が多かったという。そこで出会ったロックンロールの歴史を深く刻んだエンジニア、プロデューサー、ミュージシャンたちからいろんなことを学んだとか。

Q2 そんなレコーディングの中で感じる音楽の持つ力とはどんなものですか?
文化の違う人間が一堂に集まり、ロックンロールを通じてひとつになれるということ。

・アンジェリーナ
元春: 「アンジェリーナ」は僕が1980年、『Back To The Street』というデビュー・アルバムに収録した曲であり、僕の最初のシングル・カット曲ですよね。僕が聴いてきたそれまでの日本語の曲というと、3分間の中で文字量が、全体を10とすると文字の量が6ぐらいに聴こえた。でも僕は「アンジェリーナ」という曲でもって、その文字の量を倍に増やしたかったんですね。というのは僕の上のジェネレーションが感じる情報処理能力よりも(笑)、若いほうが当然情報処理能力が高いわけで、3分間ウダウダ同じようなこと歌ってられてもつまんないなという話があって、それだったらば聴き手が追いついていけないくらい情報量がいっぱい詰まった詩が書きたい。で、ロックンロールのビートに乗せてそれを歌いたい。そのへんのことを考えて作ったのが「アンジェリーナ」でした。

Q3 今まででいちばん印象深いレコーディング・スタジオはどこですか?
ロンドンのオリンピック・スタジオ。UKのロックンロール・バンドが名盤を作ってきた歴史があるので雰囲気があった。元春がレコーディングしてたときには、二階でポール・マッカートニーやティアーズ・フォー・フィアーズがレコーディングしていたという。いちばん印象深いのはまだフレディ・マーキュリーが生きていた頃のクィーンがレコーディングしてたことだそうだ。朝早くスタジオに行って、アシスタント・レコーディング・エンジニアに「クィーンのレコーディング・スタジオを見たい」って言って、まだクィーンが来る前のスタジオを見学したのだという。

Q4 1983年にニューヨークでレコーディングを行いましたが、ニューヨークに求めたものはなんだったんですか?
元春: 1980年代中盤に差し掛かる頃、僕は日本でのキャリアを一旦横において、ニューヨークにかなり長い間住むことになるんですよね。そこで誰もやったことがないサウンドを作り出したい。そういうのが僕の希望としてあった。レコーディングの方法も日本にいる限り日本でのやり方でしかないですから、やはりニューヨークに行って、インターナショナルな世界基準のレコーディングの方法をスキルとして身につけたい。こういうのがあったんですね。当時最も僕の心を捉えたのはストリート・レベルで起こっていたヒップホップ・カルチャーの炸裂ですよね。僕と同じ年格好の若い連中がみんなマンハッタンに入ってきてました。西ドイツから、東アジアから、フランスからね、カナダから、みんな集まってた。そういう連中たちがここでヒップホップ、ラップの音楽をやってるのを見て、これは面白いなと思い、僕はファーイーストから来ましたので、日本語を使ってのラップ音楽を作ってみんなのことをびっくりさせようと、そんなところから、ニューヨークでのレコーディングはヒップホップ傾向の強いアルバムになりましたね。それが『Visitors』です。

Q5 その当時、佐野さんが感じたヒップホップの魅力とは何だったんですか?
元春: ヒップホップだか何だかそんな名前はどうでもよかった。僕ははなっから言葉と音楽に興味を持ってたし、特に'60年代ボブ・ディランの楽曲を聴くと、例えば「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」などは今聴いても言葉が中心となったスキッフル・ビートのロックンロール、それをヒップホップ、ラップの様式に変えてやろうとすればできなくはないと思うんですよね。ですので僕が興味があるのはヒップホップとかロックンロールとか、そうした様式ではなく、そこで何が歌われてるのか、言葉とビートの関係はごきげんなのかどうか、そこが僕のいちばんの関心事です。

・New Age
元春: これはアルバム『Visitors』に収録した曲ですよね。当時まだインターネットはなかったんですけれども、'80年代半ば頃の話ですから。ただ社会学者なんかがいろんなことを物を言いはじめていて、いわゆる産業が中心の社会から情報が中心の社会に変わろうとしているなんてことを予見してる社会学者など出て来始めた頃なんですね。で、僕も当時二十代にあって、何かこうこれからの世界どういうふうに捉えようかなというのにすごく興味があった。地球というものがひとつ神経細胞的な広がりをもって、それが後のネットワークというふうに言われることになるんですけれども。そして国境を越えて時間を越えて人々が結びつき合う、そんな世界がもうすぐ来てるんじゃないかなという予感があり、それに伴う痛みとか、それに伴う喜びとか、そういうのを3分間のロックンロールにできないのかなぁなんて思って作ったのがこの「New Age」という曲ですね。

Q6 佐野さんがレコーディングする中で大切にしてることってなんですか?
偶然なのだという。物事を理知的に進めて行って得られる結果もわかるが、それは予想される結果。音楽を制作する現場でいちばん大切なものは1+1が3にも4にも5にもなるという公式。そのためにはレコーディングへの取り組みは柔軟でなければいけないし、子どものような心、子どものような目を持って音楽に接しないと素晴らしい偶然というのは出てこない。バンドの仲間とバカ話をしながら、そのバカ話の中から瓢箪から駒のようにいいアイディアが出てくることがある。言ってみれば遊び。そうした遊びの精神を大切にしていると元春。

Q7 曲ができてレコーディングに進む、その間のプロセスはどうなってるんですか?
詩や曲はデジタル・レコーダの中に留めておいて、他のミュージシャンと緻密なコミュニケーションが必要なものはデモ・テープを作り、その必要のない、直感的にジャム・セッションで良い結果が得られると思ったものは、頭の中で組み立てて、リハーサルでバンドにフレーズなどを指定して、アンサンブルを聴きながら段々まとめ上げてゆく、クラシック音楽でいうと指揮者のような役割をしていると元春。

・水上バスに乗って
元春: '90年代にリリースした『FRUITS』というアルバムに収録した曲「水上バスに乗って」ですよね。レコーディングには10年くらい年の違うプレイグスというバンドとやりました。深沼元昭、後に僕のサブバンド、コヨーテバンドのギタリストとして活躍してくれる人なんですけれども、その彼のバンド、プレイグスをバックに歌った曲ですね。それまで僕は十数年来、exバンドであるハートランドをバックに歌ってきたわけですけれども、そうしてハートランド以外のバンドで演奏し、レコーディングするのはこれが初めての経験となりました。

Q8 ライヴでレコーディングされたものと違ったアレンジで演奏される曲もありますが、それはなぜですか?
元春: よく'80年代、'90年代とレコードにした曲をライヴでは大幅にアレンジを変えて披露することも多かったですね。それはなぜかと言うと演奏を楽しみたかったからです。そして長い長いツアー、同じ曲を同じかたちで何回も演奏すると飽きてしまいますから、そうすると演奏のスリルというものがなくなり、そうするとライヴに活気がなくなってくるんですね。僕自身もバンドも常にその楽曲に新しい新鮮な気持ちで付き合いたかったので、どんどんツアーの中でアレンジを変えてゆくという結果になりました。

・荒野の何処かで
元春: 僕は2004年に自分のレーベルを設立します。DaisyMusicレーベルですね。で、そのDaisyMusicレーベルからの第一弾アルバムが『THE SUN』。それに続く二枚目のアルバムがこの『COYOTE』ですね。それまでのサ・ホーボーキングバンドではなく、新しいバンドを求めて、僕よりもずっとキャリアの若いドラム、ベース、ギター、キーボードを集めてのレコーディングとなりました。何を歌いたいか明確な時でしたから、『COYOTE』というアルバムは自分のキャリアの中でも、すごくうまくいったいいアルバムになりましたね。

・山下久美子からのメッセージ
久美子: 山下久美子です。佐野くん、お元気ですか? まずは30周年おめでとうございます。同じデビューということで、'80年代はいろんな場面でご一緒させていただくことがたくさんあったから、今でも思い出すことがものすごくあって、なかなか短い時間では語り尽くせなかったりする(笑)、そのくらい、ものすごく胸に溢れてしまうという、そんな感じで困ってしまうんですけれど。今回30周年を迎えたということで、今もなお佐野くんがものすごく元気で、キラキラ輝いて活躍してるってことが、すっごくうれしいです。そしてこれからも素敵に思い描いてることを、いろんな形にしてゆくんだろうなと、そんなふうに思うと楽しみでしょうがないんですけれど。あの、ちょぅど20周年のとき、佐野くんとお会いして、「これは僕にとって通過点だ」と語ってたことが、すっごい印象に残ってまして。きっと、だから今もそういう大きな通過点を過ごしてるんだろうなぁっていうふうに勝手に想像しています。そして、ちょっと余談ですが、その頃、双子の娘の一人を、一歳になったばかりの娘を連れて佐野くんのコンサート、渋谷公会堂、我々にとってもひじょうに思い出深い場所にて、佐野くんのコーサートを観に行ったことが、今もすっごい私にとっては大切な宝物のような思い出になってるんですけど。娘がすごーい楽しそうに佐野くんのライヴを最初から最後までニコニコで踊りながら観ていた姿が、なんかとっても微笑ましいといいますか、すっごく一緒に過ごせたというか、同じく空間とか時間を共有できたことが、とっても私誇らしくて。なんていっても彼女にとって初めてのコンサートが佐野元春だよって(笑)、いつか誰かに語るってことが、私はなんか今からとても楽しみでしょうがありません。そういうことも含めていろんな場面でいつも佐野くんに力をもらってるような気がしてます。是非、これからも、益々輝いて、益々真のアーティストとして、いろいろな思いを貫いてほしいなと思います。今度3月6日の大阪城ホールでのコンサート、すごく楽しみにしてます。十年ぶりでしょうか、一緒に歌えるのは。本当に楽しみにしてます。これからも是非、がんばってください。山下久美子でした。

元春: 3月6日、大阪城ホールでの僕の30周年アニバーサリー・ツアー・ファイナル。僕の友人である山下久美子さんも出演してくれるということ、うれしいですね。みなさんも楽しみにしていてください。では、ここで先月リリースした僕のニュー・アルバム『月と専制君主』から、オリジナルは1984年のアルバム『Visitors』からの一曲、「日曜の朝の憂鬱」。
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黒いカバン

2011年02月12日 | Live
昨日は大阪に雪が降りました。
積雪は三年ぶりですかね。
午前中、ちょっとした用事があって、写真は撮れなかったんですね。残念ですけれども。
そんなこんなで、午後になって、用事が済んで、ネットを見てたら、
NHKで関西ローカルですが、「第14回 熱血! オヤジバトル~中日本ブロック予選~」、やってたんですね。
全然知らなかったので見逃してしまいました~。
実はNHK大阪放送局で行われた「第14回 熱血! オヤジバトル~中日本ブロック予選~」の公開録画に参加しました。
後半にスペシャル・ゲストのライヴがあったのでメモを書いてたのですが、
ネタばれ解禁ということで公開します。

■第14回 熱血! オヤジバトル~中日本ブロック予選~
2010年12月12日(日) NHK大阪放送局T-2スタジオ
http://www.nhk.or.jp/oyaji/

司会:トータルテンボス、杉浦友紀(NHK名古屋放送局アナウンサー)
審査員:萩原健太、泉谷しげる、安めぐみ

静岡から出場したSunday Nightというバンドはクリームの「Cross Roads」を演奏したんですがめちゃくちゃ上手かったです。
ヴォーカルとギターを担当した人は学生時代にスカウトされたそうです。
このバンドは予選通過だろうなと思いました。
予想通り本大会出場となったわけですが、本人たちは意外だったらしく驚いてました。
まぁ、審査委員長の萩原健太さんに「裏のリズムが合ってない」と手厳しく批評されてたので、駄目だと思ったのかもしれないですね。

もう一組予選通過したバンドはケムルズ。
コミック・バンドで技術的には上手くはないんですが、オリジナル曲で勝負して、受けたのが評価されました。
このバンドも僕は予選通過ラインにいると思ってました。親父バンドだからこれもアリかなと、そんな感じです。

出場者の演奏が終わった後はゲスト審査員の泉谷しげるさんのライヴがありました。
僕は泉谷しげるさんが割りと好きでCDも一枚『春夏秋冬』というアルバムを持ってます。
ライヴを見たのは今回がはじめてでした。
確か5曲披露したかと思いますが、最初の曲は「野良犬」という曲でしょうか。
「旅立て女房」、「黒いカバン」、「すべての時代のせいにして」、「春夏秋冬」というセットリスト。
サポートのギターの藤沼伸一さんとデュオで「黒いカバン」のみソロでした。
まぁ吠える感じですよね、泉谷さんの場合は。パンクといっていいと思います。
生で聴く機会なんてそうそうないので今回聴くことができてよかったなと、そう思いました。

●黒いカバン



泉谷さん、この曲の最後に「海老蔵!」と叫んだのでした(笑)。

誘ってくれた友人によりますと、オンエアされたのは「春夏秋冬」のみということでした。
でもなにか象徴的ですよね。その夜にエジプトでムバラク大統領が退陣を表明したんですよ。
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月と専制君主

2011年02月11日 | 佐野元春

個人サイトに佐野元春のニュー・アルバム『月と専制君主』のレビューをアップしました。
よろしくお願いします。
http://homepage3.nifty.com/sitedoi/

今回僕はDVD付きの初回盤とアナログ盤の二組を購入しました。
後悔はしてませんが不満はあります。
アナログ盤にCDは必要なく、MP3で全曲ダウンロードできて、
初回盤に付いてたDVDがほしかった。
今度、アナログ盤を作るとき、そんなフォーマットで出してください。

ところで、1986年のアルバム『Cafe Bohemia』からはこれまで
「インディビジュアリスト」(アルバム『20th Anniversary Edition』収録)、
「99ブルース」(シングル「月夜を往け」のカップリング曲)、
「虹を追いかけて」(アルバム『The Essential Cafe Bohemia』収録)の3曲が、
すでにホーボーキング・ヴァージョンとして再レコーディングされてます。
今回の『月と専制君主』にはアルバム『Cafe Bohemia』から3曲、
「夏草の誘い」、「ヤングブラッズ」、「月と専制君主」が選ばれて
結局、アルバム『Cafe Bohemia』のほぼ半分が別ヴァージョンというか、
装いも新たにかたちを変えて登場ということになりました。
それを「代替」とみるのなら、正に「オルタナティヴ」と呼べそうです。

一方で何年も前からカヴァー・ヴァージョンのブームがありますよね。
過去に大ヒットした曲やよく知られた曲をカヴァーする風潮。
ほとんどの場合、オリジナル曲への批評性がなくて、
この場合は「オルタナティヴ」なんて言えないっす。
話が横道にそれてしまいましたが。。

それにしても三月の「All Flowers In Time」ファイナルの大阪公演ですが、
伊藤銀次さん、杉真理さん、山下久美子さん、スガシカオさん、堂島孝平さん、
LOVE PSYCHEDELICO、スカパラホーンズの出演が決まってますが、
リハーサルは大変でしょうね。それぞれのスケジュールもあるでしょうし。
僕はこの出演者の中で久美ちゃんだけライヴを見たことがないので、
密かに久美ちゃんが見られるのを楽しみにしてるんです。
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Motoharu Radio Show #068

2011年02月10日 | Motoharu Radio Show

2011/02/08 OnAir - 2nd. Week - 『月と専制君主』特集 #3
01.Kanye West:Power
02.Kanye West & Bon Iver:Lost In the World
03.佐野元春:ジュジュ
04.Elvis Costello:I Lost You
05.Robert Plant & Alison Krauss:Stick With Me Baby
06.Mose Allison:The Way of the World
07.佐野元春:日曜の朝の憂鬱
---------------------------------------------------
■内容の一部を抜粋
・特集『月と専制君主』
今回はセルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』の特集、その第三回目。

・3PICKS!
「Motoharu Radio Show」では毎月番組推薦盤3枚のCDをピックアップしている。今月2月の「3PICKS!」はダフィー『Endlessly』、カニエ・ウェスト『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』、そしてアデル『21』。どのレコードも心に響くよいソングライティングと素晴らしいサウンドがあると元春。この中から今週はカニエ・ウェスト『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』。

・カニエ・ウェスト
アメリカ、ジョージア州出身のヒップホップMC。現在33歳。その存在感を含めて今最も注目されてるアーティスト。2004年に最初のレコードを出して、以降5枚のアルバムを発表している。今夜取り上げたカニエ・ウェストの新作『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』は「僕の心の中にあるねじれた幻想の美しき闇」といった意味ありげな、ポエティックなタイトルが付いている。このアルバムはいろいろなメディアで高く評価されている。曲のアイディアとかリリックがいい、そして表現の仕方がとてもコンテンポラリーだという。音楽だけじゃなくてアルバム・ジャケットのアートワークも含めて、とてもアーティスティックな作品になっている。音楽のジャンルでいうとヒップホップになるが、普段ヒップホップを聴かない人たちにとっても楽しめる内容。カニエ・ウェストはゴシップ・ネタが多いということでも有名で、あるポップ音楽のアワードの席上で、カニエ・ウェストは酔っぱらって今人気絶好調のシンガー、テーラー・スウィフトがスピーチしているところに乱入して、場内からブーイングを浴びるというハプニングがあった。ファンにとってはたまらなく楽しいキャラクターなんじゃないかと思う、と元春。新作『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』からキング・クリムゾンの曲をサンプリングしてコラージュした曲「Power」は"俺たちは21世紀を生きてるんだ"というリリックが印象的。そしてもう1曲は現在のアメリカを皮肉っぽくスケッチした「Lost In the World」。

・ツイッター
「さて、Motoharu Radio Showでは今番組を聴いてくれている全国リスナーのみなさんがインターネット上で楽しくコミュニケーションできるツイッターという仕組みを採用しています。ここに参加したいという方は今からURLをお知らせするので是非書き取ってください。番組からツイッターのお知らせでした」と元春。
http://www.moto.co.jp/MRS/

・GreenPeople
環境問題に取り組むユースたちを紹介するレポート「GreenPeople」。毎週このコーナーでは環境を巡る社会活動を通じて様々なアクションを起こしている人たちを紹介。このコーナーの協力はNHKの環境特集番組「SAVE THE FUTURE」。
http://www.nhk.or.jp/savethefuture/mamoribito/index.html

今週はNPO法人「水のフォルム」。海や河川などの水質環境を守ろうと平成13年から化学肥料に頼らない伝統農法を広める活動を行っている。
http://www.nhk.or.jp/savethefuture/mamoribito/movie/motoharu1.html
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Motoharu Radio Show #068

2011年02月10日 | Motoharu Radio Show

・特集『月と専制君主』
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』の特集、その第三回目。アルバム制作にまつわる話などを交えて新しいアルバムの曲の紹介。聞き手は番組アシスタントの後藤さん。

・ジュジュ
NHKの音楽番組「SONGS」でも歌われた。セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』ではオープニング曲となっている。
後藤: アルバムの中の曲では僕は「ジュジュ」があんまりイメージが変わらなかったんですが、まぁ、それでもリズム・アレンジは全然違うんですよね(笑)。

元春: リズム・アレンジは、これはもろモータウン(笑)、僕のモータウン趣味を丸出しにしたアレンジですよね。ここにはモータウンの初期のサウンド・プロダクションを司ったホーランド=ドジャー=ホーランドへの敬意、それからモータウン・レーベルへの敬意ですよね、それを自分なりに(笑)、表してみたんですけれどね。

後藤: セルフ・カヴァーをするということは、佐野元春というアーティストを佐野元春という方が、本人がもう一回検証するわけじゃないですか。改めてそのアーティストを見てみてソングライターとしてどう思いました?

元春: う~ん。その自問自答が、正直言ってあるんですよね。ソングライターというのはどこか傲慢なところがあって、自分が過去に作った曲でさえも現代(いま)に鳴り響くはずだ、どっか自分が作った曲には普遍性が宿っていてほしいなんてことをね(笑)、こう願ってる、まぁ我が儘な側面があるんだけれども。果たしてそれが本当かどうかは、やっぱり聴き手が判断することですから、こうして『月と専制君主』のように、自分なりに、自分が書いた曲の強度というかね、時代を本当に超えるのかどうか、実験してみて、みんなに聴いてもらって、そしてみんないいよって言ってくれたら、うれしいんですけれどね。

後藤: 時代によってソングライティングのメソッドというか、方法論というか、やり方ってあるんですか?

元春: それはね、ソングライターひとり一人、独自のメソッドを持ってると思うんですね。ただそれぞれのソングライター、時代によってそのメソッドを変えてるってことはあんまりないんじゃないかなと思います。

後藤: 今回、歌詞がちょっとずつ変わってたりとか、イントネーションがより響くように直されたりする部分っていうのがあるんですけれど、その歌詞が持ってるグルーヴとかニュアンスとか本当に変わってないんですよね。そこがなんか新鮮に聴こえたんです、僕は。

元春: 歌詞を書いたのも僕。曲を書いたのも僕。サウンド・デザインしたのも僕ですね。だからそれを壊して作り替える自由が僕にあるということですよね。これ人の曲をそんな壊して作り替えたりしたら失礼ですけれども。自分で作ってきたものを壊すのも作り替えるのも自由。その自由さを最大に利用して楽しんで作ったのが今回のアルバムです。

後藤: いま「ジュジュ」聴いて思ったんですけれど、サウンド的にアナログ感がすごくあるんですよね。このアルバムのマスタリング・エンジニア、ゲヴィン・ラーセンの仕事をもうちょっと紹介してもらいたいんですけれど。

元春: 先週もお話したんですけれども、アナログ的なサウンドを響かせたい、これがプロジェクトの目的としてあったんですね、サウンドの視点で言うと。アナログ的なサウンドを奏でるべく、レコーディングの方法を取ったし、そのアナログ・サウンドを熟知しているエンジニアと一緒に仕事をしたし、マスタリング・エンジニアもゲヴィン・ラーセンという米国で今アナログのサウンドを作るいちばん長けた、優れたエンジニアと一緒に仕事をしたんですね。先週はゲヴィン・ラーセンが手掛けたレコードの中からトム・ウェイツとかジョー・ヘンリーのレコードをかけましたけれども、今日も彼が手掛けたレコードをいくつか持ってきました。ひとつ面白いなと思ったんですけれども、今日持ってきたこの2曲、二人のアーティストのレコードなんですが、プロデューサーが同一なんですよね。T-ボーン・バーネット。このMotoharu Radio ShowでもT-ボーン・バーネット・プロデュースのレコード、かかる頻度けっこう多いですよね。

後藤: 特集してもらったんですけれど、エルヴィス・コステロとかロバート・ランドルフとか、あとエルトン・ジョンとレオン・ラッセルのデュエット・アルバムもT-ボーン・バーネットでしたよね。

元春: なんか一風変わった世界観を持ったシンガー・ソングライターが好んでますよね、ゲヴィン・ラーセン。

後藤: Motoharu Radio Showでも「3PICKS!」に選びましたエルヴィス・コステロのアルバム『National Ransom』から「I Lost You」。

エルヴィス・コステロの「I Lost You」がかかる。

後藤: エルヴィス・コステロの「I Lost You」を聴いてもらいました。プロデューサーのT-ボーン・バーネットも素晴らしいんですけれども、この音を作るのは全部チームなんですよね。

元春: そうだと思います。ジョー・ヘンリーだとかT-ボーン・バーネット、音楽に詳しい方ですと彼らがどれくらい優秀なプロデューサーか知ってると思うんですけれども、そうしたT-ボーン・バーネットとかジョー・ヘンリーと一緒に組んでるのがこのマスタリング・エンジニアのゲヴィン・ラーセンですね。そうしたプロデューサーに好まれてるということなんだと思う。アナログ的な、自然なサウンドを作るんだったら彼だっていうことだと思うんですね。

後藤: 考えてみると佐野さんって'80年代からずっとそうなんですけれど、優秀なプロデューサーやエンジニア、スタッフと仕事をして紹介してますよね、日本のミュージック・シーンに対して(笑)。

元春: 紹介してるというよりかは僕のファンによいサウンドを届けたいと、こういう気持ちです。

後藤: もちろんそうなんですけれど、企業秘密ってないタイプですか?(笑)。

元春: あはっ(笑)。何を企業秘密にするかは人によって違うと思いますよ。う~ん、よいものはみんなでシェアしようって、そういう感じですね。特に自分がやってよい成果を得たものはみんなも使ってみたらどうって感じですね。

後藤: なんとか賞獲ったとか、何百万枚売ったとかで選んでないですよね?

元春: それは僕にも好みというものがありますから、やっぱり自分の好みに沿って、好みっていうより表現したいサウンドの傾向によって、ミュージシャン、それから技術者というのは選びますよね。

後藤: 決して肩書きとか評判とかではなく、耳で選んで「3PICKS!」を選んでるわけですよね、この番組は。それはこの後もそうしていくべきですよね。

元春: そうですね。よい楽曲の基準っていうのは人それぞれ違うと思うんですけれども、音楽番組をこうしてやらしてもらって思うのは、僕の耳で聴いたグッド・ミュージックとは何かを披露するしかないわけですから、そこの軸というのはずらすわけにはいかないですよね。

後藤: 次にかける曲は結果としてグラミーを獲ったんですが、日本ではほとんど評価されてなかったにもかかわらず、アメリカではじわじわじわと売れて、何年か前にグラミーを獲ったロバート・プラントとアリソン・クラウスのアルバムがあるんですけれど、これもT-ボーン・バーネットとゲヴィン・ラーセンの...

元春: チームで作られたサウンドですよね。ロバート・プラントは知ってる人は知ってると思うんですけれど、レッド・ツェッペリンのメイン・シンガーですよね。彼がアメリカに渡ってアメリカのルーツ音楽にとても興味を持ち、アメリカのブルーグラス界の第一人者といわれてるアリソン・クラウスと組んで一枚のアルバムを作った。このアルバムもなかなか素晴らしいアルバムでしたよね。僕も好きです。調べてみるとT-ボーン・バーネットがプロデュース、ゲヴィン・ラーセンがマスタリングと、ここでも驚きがありましたね。

ロバート・プラントとアリソン・クラウスの「Stick With Me Baby」がかかる。

後藤: ロバート・プラントとアリソン・クラウスのアルバムもゲヴィン・ラーセンの仕事だったんですけれど聴いてみてどうですか?

元春: サウンドのトーンとマナーは同じ領域だなと思いました。

ここでリスナーからのメールで、歌の中の「君」という言葉をいろいろと置き換えながら聴くとハッとするようなメッセージを感じました、というコメントを紹介。

後藤: 「君」というキーワード関して佐野さんどう思われました?

元春: キーワードというか、僕はよく自分の歌詞の中で語りかける対象として「君」というふうにすることが多いんですけれども、確かに曲を書いていて「君」という対象がすごく明確なことがあれば、自分でも曖昧なときがあるんですね。詩というのは論文ではないですから、そのように曖昧ながらもライティングが進んでいっても、かまわないんじゃないかと僕は思ってます。というのはいずれこの詩にリズムが付き、ハーモニーが付き、メロディが付いて、立体化されるわけですから、後は聴き手にその作品が届いたときに、その聴き手がどんな思いを抱いてくれるか、どんな景色を思い描いてくれるか、ここが大事だと思ってるんですね。ですので平たくいうと、曲の詩を書くときに、僕は試みようとするのは、映像が浮かびやすい詩を書きたいということですね。聴いてくれる人が自分の映画を紡いでくれるような、そういう詩だといいんじゃないかなと思ってます。

後藤: 映像といえば、先日、堤幸彦監督が佐野さんの『COYOTE』というアルバムにインスパイアされて作った『コヨーテ、海へ』という作品がオンエアされたんですけれど、あれはご本人から見てどう思われましたか?

元春: うれしいことですよ。映画というのは総合的な表現だと思うんですね。もちろんスクリプティングがあり、役者の演技があり、映像があり、そして音楽があって、ひとつのトータル・アートだと思うんですね。ですので監督が僕の音楽に刺激を受けて、そしてあのストーリーを紡いでくれたとしたら、それはとても光栄なことだなと思いました。

後藤: 言葉と映像のコラボレーションに関してもうちょっと訊きたいんですけれど。

元春: 僕は言葉と映像のコラボレーション、その表現の可能性でみてみると限りないものがあると思います。'80年代から、ミュージック・クリップですよね、宣伝用に3分間か4分間の映像をつけて、プロモーション用に映像作品を作るってことが、一般化しましたけれども、ああした表現を超えて、今後映像作家と自分の音楽とコラボレーション続けていきたいという気持ちがありますよ。

後藤: ゲヴィン・ラーセンの仕事に戻って、この人の曲も情景が浮かんでくるような感じがするんです。

元春: 音楽のジャンルでいうとジャズということになると思うんですけれども、僕は本当に優れたシンガー・ソングライターだと思ってます。これはジョー・ヘンリーがプロデュースして、そしてマスタリング・エンジニアが話題となってるゲヴィン・ラーセンということですよね。僕は昔からこのシンガーの曲は大好きで、自分の好きなシンガーが、好きなプロデューサーと好きなエンジニアでね、仕事をしたりするとやっぱりいいなと思いますよね。モーズ・アリスン、曲は「The Way of the World」。

モーズ・アリスンの「The Way of the World」がかかる。

後藤: 話を最新アルバム『月と専制君主』に戻したいんですけれど、佐野さんは今、ホーボーキングバンドとのツアー中ですよね。僕はまだ見れてないんですけれど、どんなふうに盛り上がってますかね?

元春: 順調というか、久し振りのホーボーキングバンドとのライヴですから、やっていて楽しいし、また集まってくれたオーディエンスのみなさんも楽しんでくれてると思います。2時間40分以上ぶっ続けで、ほとんどMCなしで演奏してるって感じですね。

後藤: ファイナルは来月あるんですけれど、何か企画があるんですか?

元春: 本当にもうね、ファイナルのことを考えると、僕も鼻血が出ちゃいそうな感じなんだけれどもね。30周年アニバーサリーのファイナルでしょ? 大阪と東京とコンサートがあるんですけれども、大阪はいろいろなゲストが来てくれるということで、一体どうなっちゃうんだろうって思ってる。また、東京でそれとは少し違う内容で演奏しますからね、僕自身も楽しみにしている。また、東京ファイナルは3月の12、13、二日間あると思うんですけれど、3月13日は自分の誕生日ですから、もうホント、どうなっちゃうんだろうって、今からわくわくしてます。

後藤: 言える範囲で、ゲストとかってもう?

元春: 大阪はゲストたくさんいて、あんまりたくさんいるので僕もよくわかってないです(笑)。

後藤: ははは。

元春: なんか、大きなパーティになるような感じですね。

後藤: なるほど。今回『月と専制君主』のアルバム、ホーボーキングバンドとハートランドの合体のバンドで構成された演奏だったんですけれど、改めてそのバンドでやってみてどうでした?

元春: みんなこのスタジオに集まってくれて楽しい話をしましたね。僕、30周年振り返って誇りに思ってるのは、優れたミュージシャンたちと出会えたってことですよね。exバンドであるザ・ハートランド然り、現在のザ・ホーボーキングバンド然り、メンバーがみんな演奏家としてとても優れてるということ、それだけじゃなくてね、彼らと付き合って本当によくわかることは、ソングライターである自分の詩、言葉をとても大事にしてくれることですよね。言葉を大事にして演奏してくれるということ。これがソングライターであり、シンガーである僕にとって本当に有り難いことですよね。というのはザ・ハートランドのメンバー然り、ザ・ホーボーキングバンドのメンバー然り、彼らは基本的には器楽のプレーヤーであるんだけれども、自分で曲を書いたり、自分で詩を書いたり、自分で歌ったりする人たちも多いので、そうした僕のようなシンガーの気持ちをわかるというかね、その上でのプレーだということですよね。そうしたミュージシャンと過去30年間に出会ってきた、そして今でも僕の音楽を支えてくれるということが、僕にとっては本当にうれしいことですよね。活動30年目を迎えたということで、元ハートランドから古田たかしや長田進が集まる。あるいはDr.kyOnや井上富雄や山本拓夫が、ホーボーキングハンドの連中たちがそれにジョインする。で、レコーディングもし、そのメンバーと一緒にまたロードに出る。ここが本当にね、大きな大きな喜びがあるんですよね。ともすると、30年もキャリアを積むと、過去に付き合ったミュージシャンと離ればなれになったりとか、バンド解散したりとか、往々にしてあるんですよね。もう会わなくなっちゃったなぁみたいな。でも僕らは違う。みんなそれぞれ、いい仕事をしつつ、再会すればまたいい音を奏で、そういうことができるのが素晴らしいなぁと思ってます。そうしたことを考えるとね、僕らハートランド、ホーボーキングバンド、小さなライヴハウスから、大きな大きな球場クラスのコンサートまで、ともに共有してきている。いろいろな感動の場面を僕たちは分かち合ってきた仲と言えるんですね。そして互いに互いの演奏を、ミュージシャンとしての立場をリスペクトしている。それがよくわかるんですよね、彼らといると。同じ釜の飯を食った仲という表現があるけれども、そうして長きに渡って同じ経験を共有した者どうしだから、者どうしだからこそ、奏でられる特別な表現があると僕は信じてる。ハートランド、ホーボーキングバンドとの付き合いは長いですけれど、今回の『月と専制君主』はね、そうした長い関係の中から生まれてきた特別なサウンドのように僕は感じてます。

後藤: ツアーのファイナル、楽しみですね。というわけでニュー・アルバム『月と専制君主』の中から「日曜の朝の憂鬱」という曲を紹介してもらいたいんですけれど...

元春: 後藤くんはどう感じた?

後藤: 今書かれた曲のように感じたんですよね。サウンドのこともそうなんですけれど、曲が持ってるイメージはそんなに変わってないんですけれど、やさしさ的なものというのが、より前面に出てきてる感じがして、自然に入ってきた感じたんですよね。アルバム『VISITORS』の中で最も美しいバラード曲だったんですよね。この曲はニューヨークで書いた曲ですよね。

元春: アルバム『VISITORS』に収録した曲ですよね。当時は「Sunday Morning Blue」というタイトルでした。今回は「日曜の朝の憂鬱」と表記してますけれどもね。この曲は'80年代中盤、僕がニューヨークに長く滞在してたときに書いた曲ですね。セントラルパークとかによく行ったんですけれども、セントラルパークなどを歩きながら、この曲の詩の断片が出てきたのを覚えてます。だから"汚れたベンチ"ですとか、そこに散乱している新聞とか、そうした景色というのはセントラルパークの景色ですね。

後藤: 今回のヴァージョンで気がついたことなんですけれど、英語で書かれた部分が日本語に置き換えられてるんですけれど、これはどういう意図で...

元春: 特別にこうだからという理由はないんですけれども、新しい表現をするときに、その言葉の部分も見直そうということで、後藤くん指摘してくれた通りオリジナル「Sunday Morning Blue」では"Sweet little girl"と言ってるところを、今回のヴァージョンでは"ちいさな娘"と言ったり、フックのところの"Sometimes"と歌ってるところを今回は"ときどき"って日本語に開いて歌ってみたんですね。この曲をよく聴いてくれた人にとって違和感があったら困っちゃうなと思ってたんですけれども、何度か自分で聴いてみてね、これは許される範囲かなと思い、オリジナル英語の部分を何曲か日本語で開いてるっていう部分はあります。当然リスナーにとっては英語よりは日本語で歌ったほうがリアリティを感じてもらえるはずですよね。'80年代という時代背景を考えたり、また当時二十代だったという自分の若さを考えたりすると、そこに多少の気取りがあったりだとか、'80年代というのは日本が外に外に視点が向かっていった時期です。奇跡的に非常に景気がよくなりましたから、外からの文化の輸入というものがすごく激しくありましたよね。それと同時に僕を含む新しい世代が、日本の外へ外へと視点が向かった、ですのでポップ音楽の中の言語についても、言葉についても、日本語にこだわる必要がないよ、響きというものを重視して英語がこようがフランス語がこようがいいじゃないか、そういう雰囲気がありましたよね。しかし、ソングライターの視点で冷静にもう一度この曲を捉え直したときに、この部分は日本語に開いて歌ったほうが今のリスナーに、また新しい世代のリスナーに、よりリアリティをもって響くんじゃないかなという思いがあって、今回それをやってみました。聴いてくれた人がどう思ったのか是非訊いてみたいです。

後藤: 間奏のところですごくふわっとしたハーモニカが入ってくるんですけれど...

元春: よく訊いてくれたね。僕です。

後藤: 僕、昔から佐野さんが吹くハーモニカ好きなんですよね。

元春: ライヴではときどき思いにまかせてハーモニカ吹くんですけれども、レコードで思い出すのは「スターダストキッズ」とか。それから、そんなに多くなんですよね。その中で今回「日曜の朝の憂鬱」、僕のハーモニカ・プレー、新しいラインナップが加わりました。それではこの曲を聴いてください。「日曜の朝の憂鬱」。

・番組ウェブサイト
「番組ではウェブサイトを用意しています。是非ご覧になって曲のリクエスト、番組へのメッセージを送ってください。待ってます」と元春。
http://www.moto.co.jp/MRS/
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ALL FLOWERS IN TIME(FM COCOLO)

2011年02月08日 | 佐野元春 Radio Days

■ALL FLOWERS IN TIME
2011年2月5日(土) FM COCOLO 19:00 - 20:00
http://www.cocolo.co.jp/contpgm2/w_main.php?oya_id=278

出演: 佐野元春

Play List
1 ヤングブラッズ / 佐野元春
2 SOMEDAY / 佐野元春
3 バルセロナの夜 / 佐野元春
4 誰かが君のドアを叩いている / 佐野元春
5 ラジオ・デイズ / 佐野元春
6 風の手のひらの上 / 佐野元春
7 月と専制君主 / 佐野元春
8 Night Life / 佐野元春
---------------------------------------------------
■内容の一部を抜粋
2010年春からFM802の支援を受けているFM COCOLOは"WHOLE EARTH STATION"をキャッチ・フレーズにして四十五歳以上の世代を対象にした大人のためのラジオ局として生まれ変わった。土曜日午後7時からのこの枠は月代わりでミュージシャンがDJを担当する。今月二月は佐野元春をフィーチャー。

全四回放送の第一回目、今週のテーマは「SONGWRITING」。

・ヤングブラッズ
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。
「今回はホーボーキングバンドが大好きなラテン・ロックなサウンドにアレンジしました」と元春。

Q1 初めて曲を書いたのはいつ?
十三歳ぐらいの頃で海外のシンガー・ソングライターを手本にして作りはじめたとのこと。学校の図書館にある詩集から好きなものを選んでメロディをつけたとか。

Q2 初めて曲をつけた詩は?
ドイツの詩人ヘルマン・ヘッセの「赤いプナの木」という詩が、少年だった自分の心を捉えたので、その詩にメロディをつけたそうだ。

Q3 既に楽器を使って曲をつけたのですか?
十二歳、十三歳でギターとピアノを習得していたから、ギターやピアノを弾きながらメロディを作ったとか。

・SOMEDAY
元春: 「SOMEDAY」という曲は僕にとって大事な曲ですね。レコーディング・アーティストとしてデビューした1980年。キャリアの初期の頃、僕の存在を知ってもらった、そのきっかけとなった曲です。当時、『Back To The Street』というアルバムを出して、デビュー・シングルとなった「アンジェリーナ」、それに続く「ガラスのジェネレーション」、シングルは切っていたのですが、なかなかセールスに結びつかなかった。一方僕らはバンドと一緒に全国トゥワーに出かけていって、どこの会場も、まぁ、お客さんたちが集まって熱狂してくれてるので、レコード売れなくてもいつかは売れるんじゃないかなという楽天的な気持ちでいました。しかし、一枚出し、二枚出し、三枚シングル出しても売れないということになると、レコード会社もやきもきしてきて、僕もセカンド・アルバム『Heart Beat』を作った頃には三枚目新しいアルバムを作った時点であまり売れなかったら、僕の音楽キャリアもこれでお陀仏かなって思ってたんですね。で、そんな背水の陣で制作に入ったのがアルバム『SOMEDAY』。そのアルバム・タイトル・ナンバーが「SOMEDAY」という曲。まぁ、自分で自信がありました。その当時、メッセージしたいことがうまく言葉になって出てきましたし、何といっても、それを包むサウンドがなかなかいい感じでまとまっていたので、これいけるんじゃないかなと思ってました。で、仲間のバンド、ハートランドを街の小さなリハーサル・スタジオに集めて、編曲など僕が全部して、自分で録音して、自分でミックスして、で、それをエンジニアの吉野金次さんのところに持って行き、こんなサウンドの曲をレコーディングしたいんですけれど手伝ってもらえますかって言ったら、いいですよって言ってくれたので。当時、吉野金次さんといえば唯一僕が日本の中で信頼できるレコーディング・エンジニアでした。古い音楽ファンであればはっぴいえんどなどの音楽を手掛けたことで有名ですよね。その彼と一緒に作り上げたのがこの「SOMEDAY」。もうひとつこの「SOMEDAY」というサウンドにまつわる話といえば丁度大瀧詠一さんから声をかけられていて、『Niagara Triangle Vol.2』という、このアルバムに参加がありました。大瀧詠一さんのレコーディング現場を見学する機会があって、そのときにかなり大掛かりなレコーディングだったんですけれども、そこで奏でられてるサウンドが、とても素晴らしかったんですね。僕も小さい頃よく聴いていたザ・ロネッツのようないわゆるフィル・スペクター・サウンド、ウォール・オブ・サウンドなんて言われてますよね。音の壁なんて言って、なにかオーケストラなポップ・サウンド、ロック・サウンドと言っていいと思うんですけれども、大瀧詠一さんは正にそうしたサウンド作りをしていた。僕もこうしたサウンドを作ってみたいなと思い、その大瀧詠一さんのレコーディング現場を見たことがきっかけでこの「SOMEDAY」のレコーディングということになりましたね。同じようにウォール・オブ・サウンド、フィル・スペクター・サウンドにチャレンジした僕のはじめての曲、これが「SOMEDAY」です。

Q4 ソングライティングでは言葉とメロディはどちらが先に生まれてくるのですか?
大抵詩とメロディが同時に浮かんでくる。言葉の中にはそれにぴったりのメロディがもう既にあり、良いメロディにはもう既にそのメロディにぴったりの言葉が含まれてると思ってると元春。

Q5 ソングライティングで心掛けてることは?
聴き手が新鮮なイメージを喚起してくれる、そういう表現を工夫してやってみようと常に考えてる。曲を書こうとして書くんじゃなくて、常日頃から思い付いたことをメモして、それを後のソングライティングに役立てていると元春。

Q6 詩や曲を書く場所はいつも決まってるんですか?
場所はほとんど決まってなくて、自分の生活の中でその作業はいつも自分の隣にあるものだと思ってると元春。

・バルセロナの夜
ストレートならラヴソングを書いてみたいと思い書いた曲。自分の経験が基になっているが、聴いた人が自分の歌だと思ってもらえるように、親密に思ってもらえるように、少し工夫して書いたと元春。

Q7 影響を受けたソングライターは?
ボブ・ディラン、トム・ウェイツ、ランディ・ニューマンといったシンガー・ソングライター系の作品、特に詩の世界観は欧米のシンガー・ソングライターから学んだことが大きいという。プロになってからは同時代のソングライターがどんな曲を書いたかを気にしていて、ラジオのDJをしながら同時代の音楽を聴いていたとか。

・誰かが君のドアを叩いている
出だしの"街角から街角に神がいる"は'90年代初頭、新興宗教の勧誘がすごくてウンザリしたので、それを皮肉ってそうした出だしにしたという。

Q8 自分の昔の曲を聴いて懐かしく思うことはありますか?
自分から改めて自分の曲を聴くことはないが、街を歩いていてながれてきたりすると、その当時に出会った人たちの顔や、どんな生活をしていたかを思い出すという。自分の書いた曲からいろんな思いになるのは不思議な感じなんだとか。

・風の手のひらの上
元春: '90年代、ホーボーキングバンド結成後、彼らと米国に渡り、ウッドストックでレコーディングした曲ですね「風の手のひらの上」。それまでexバンドであるハートランド、ひじょうにプレイヤビリティの高い友人たちだったんですけれども、活動十四年目にして解散ということになり、その後何年間かブランクがあるんですけれども、その後結成したのがこのホーボーキングバンド。で、バンドのメンバー全員'70年代の音楽に恩恵を受けていましたから、であるんだったらば、その'70年代米国の良質の音楽を奏でていた、その中心地でもあったウッドストックに行ってレコーディングしよう、僕からの提案にみんな頷いてくれまして、んでレコーディングした。プロデューサーにはジョン・サイモン。それからザ・バンドのメンバーですとか、ジョン・セバスチャンといった、僕たちにとっては馴染みの深いミュージシャンたちが参加してくれました。実際ウッドストックという、'70年代の米国の良質の音楽を奏でていたメッカといっていいですね、そこでレコーディングし、業界を長年生き抜いてるそうした名うてのミュージシャンたちと、言葉を交わしたり、時を一緒に過ごしたりするということは、本当に僕たちにとってよい経験になったと思います。

・杉真理さんからのメッセージ
初めて会ったのは三十六七年前のあるコンテスト会場。バックレーン元春セクションの曲のセンスがあまりにいいのでただ者ではないと思い、舞台袖で声をかけたそうだ。当時杉さんはオリジナルを二十、三十と書いてたので鼻高々だった。「佐野くん、一体何曲くらいオリジナル持ってるの?」って訊いたら、高校生だった元春は「六百曲」と答えたそうだ。桁違いの「六百曲」という発言に驚いて、杉さんは曲作りに精を出すようになったとか。この間会ったとき元春は「いつも一杯曲作ってるよね」と杉さんに言ったそうだが、あの「六百曲」発言でエンジンがかかったので責任を取ってほしい(笑)と話した。
いつも共作しようと話をしていて先延ばしになってるので、いつか一緒に曲を作ろうというメッセージを最後に残した。

・月と専制君主
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』から。
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Sunday Song Book #957

2011年02月06日 | Sunday Song Book

<02月06日プレイリスト>
[「ドゥー・ワップ特集」]
愛してるって言えなくたって(TV SIZE)/山下達郎 3月9日発売ニュー・シングル
LET IT PLEASE BE YOU/RICK & THE MASTERS '63
I WANT TO BE THE BOY YOU LOVE/THE FOUR BUDDIES '64
NEVER LET ME GO/THE SERENADERS '57
I'M SO IN LOVE WITH YOU/THE HARPTONES "LOVE NEEDS" '82
JUST TO BE WITH YOU/THE PARAMOUNTS '63
I WANNA CHANCE/THE VOWS '62
THERE'S A MOON OUT TONIGHT/THE CAPRIS '59('61)
THERE'S NO MOON TONIGHT/THE THEMES '64
DON'T ASK ME TO BE LONELY/山下達郎 "ON THE STREET CORNER 3" '99
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■内容の一部を抜粋
・近況
先週は久し振りの休みで、あちこちからの誘いを受けて飲み会や食事会に出かけ、少々飲み過ぎ、食べ過ぎの傾向になってるとか。そして一昨日、2月4日は誕生日で58歳になったという達郎さん。番組をはじめた頃はまだ三十代だったが、二十年あっという間でそろそろ還暦が見えてきた。節分の豆を年の数食べるとお腹がもたれるようになってきたそうだ。

・ドゥー・ワップ特集
今週は誕生日なので、たまには自分の好きなプログラムをやってみようかなということで久し振りの「ドゥー・ワップ特集」。ドゥーワップ・ミュージックは今から半世紀前に一世を風靡した音楽スタイルで、いわゆるコーラスの音楽、ロックンロール時代のヴォーカル・グループの音楽で、達郎さんが世界でいちばん好きな音楽スタイルなんだとか。一生懸命コレクションした中から選りすぐりで、オリジナル・シングルから板起こしで届けたい、と達郎さん。

・愛してるって言えなくたって
3月9日発売のニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」はTBS系日曜劇場「冬のサクラ」の主題歌。主演は草なぎ剛さん、今井美樹さん。今日もまだテレビ・サイズ。来週にはフル・ヴァージョンが上がってくるのでオンエアできる予定。

・LET IT PLEASE BE YOU
1950年代から1960年代にかけてのロックンロールのヴォーカル・グループのスタイルがドゥーワップ。ストリート・ミュージックからスタートして、バックコーラスが「ドゥーワー」と言ってるのでドゥーワップ。リクエストもたくさん来ているが、今回は誕生日なので、それを言い訳にして、少しおたくな感じでとのこと。割とホワイト・ドゥーワップが多めで、達郎さんのライヴの開演前にかかってる中から、いいやつを選んだそうだ。
まず最初はフィラデルフィアの白人4人組、リック&ザ・マスターズの1963年のシングル。彼らは全部で4枚シングルを出してるが、1959年のディザイアーズのヒット曲「LET IT PLEASE BE YOU」のカヴァー。オリジナルに引けを取らない出来と達郎さん。

・I WANT TO BE THE BOY YOU LOVE
ドゥーワップはブルースと同じロックンロールの創世記の音楽。ザ・フォア・バディズというとボルチモア出身のグループがよく知られているが、それとは同名異グループ。ワシントンD.C.出身で、リード・ヴォーカルはヴァン・マッコイ。「I WANT TO BE THE BOY YOU LOVE」は1964年のシングルだから、スターライターズ時代より後のグループで、ヴァン・マッコイはもう作曲家として活動をはじめてた時代だが、まだドゥーワップに色気があったのか、もろドゥーワップの作品が残っている。作詞、作曲、編曲、ヴァン・マッコイ。

・NEVER LET ME GO
ジョージ・カーの初期のレコーディング作品。セレネイダーズの1957年の「NEVER LET ME GO」。セレネイダーズはニュージャージー出身の4人組の黒人ヴォーカル・グループ。ヴォーカルはジョージ・カー。セレネイダーズ名義では6枚シングルが出てるが、これはファースト・シングル。

・I'M SO IN LOVE WITH YOU
ドゥーワップは言ってみれば今のヒップホップ、ラップのようなストリート・カルチャー。その草分けといっていいのがハープトーンズ。活動は1980年代まで続いたが、今日は1982年の名作アルバム『LOVE NEEDS』から「I'M SO IN LOVE WITH YOU」。ラウォール・シタのペンになる曲。ステレオ録音。

・JUST TO BE WITH YOU
パラマウンツはホワイト・ドゥーワップのグループ。同名のグループはいくつもあるが、このグループはニューヨークはブロンクス出身の5人組のヴォーカル・グループ。1963年の「JUST TO BE WITH YOU」は1959年のホワイト・ドゥーワップ・グループ、パッションズのカヴァー。パッションズのオリジナル・ヴァージョンは全米69位。出来はパラマウンツのほうがいいそうだ。リード・ヴォーカルはとてもきれいなファルセットを聴かせる。

・新曲インフォメーション
1月16日からスタートしたTBS系日曜劇場「冬のサクラ」の主題歌。主演は草なぎ剛さん、今井美樹さん。ニュー・シングル「愛してるって言えなくたって」は3月9日発売。カップリングは「高気圧ガール」のスタジオ・ヴァージョン(1983年)がアサヒの缶チューハイ「Slat(すらっと)」のCMソングに使われているので、「高気圧ガール」のライヴ・ヴァージョン。PERFORMANCE 2008 - 2009から「'09 LIVE VERSION」とのこと。日付、会場の情報はもう少しもたせてみようということになったとか。

・夫婦放談番外編
昨年末のまりやさんゲストの夫婦放談は、「souvenir again」大阪城ホール公演の前に収録したので、ライヴの内容には触れなかった。年明けてから打ち上げをする予定だったが、それを今月末の2月27日にオンエアすることになった。まりやさんをゲストに「夫婦放談番外編」あるいは「夫婦放談打ち上げ編」。お便りをお待ちしてますとのこと。プレゼントを用意する予定だとか。

・I WANNA CHANCE
ザ・バウスは俳優のモリス・チェスナットのお父さんがリーダーのグループだったということが最近判明した。ヴォーカルは女性でヘレン・シンプソン。作曲もヘレン・シンプソン。いかにもウェスト・コースト・ドゥーワップ然としたきれいな曲。1963年の「I WANNA CHANCE」。

・THERE'S A MOON OUT TONIGHT
カプリズの「THERE'S A MOON OUT TONIGHT」は1959年、全米3位を記録した。達郎さんは1978年にクールズのプロデュースのため、ひとりで一月半くらいニューヨークに行ってたとき、毎週日曜日に朝から晩までグリニッヂ・ヴィレッジの屋台でドゥーワップのシングルを売ってる親父の店に通っていたという。達郎さんのドゥーワップ・コレクションはほとんどその店で3ドル、4ドルで買ったものだとか。

・THERE'S NO MOON TONIGHT
レコード・コレクターズの「私の収穫この一年」という企画で選んだのがこの曲。カプリズの1959年、全米3位を記録した「THERE'S A MOON OUT TONIGHT」のアンサー・ソング。達郎さんがグリニッヂ・ヴィレッジの屋台でドゥーワップのシングルを売ってる親父の店で、カプリズの「THERE'S A MOON OUT TONIGHT」を買ったときスィームズのシングル「THERE'S NO MOON TONIGHT」を出してきたそうだ。太った親父で偉そうに「オマエ、これ知らねぇのか? カプリズのアンサー・ソングなんだぜ。これは売らない。来週、来たらリプロを持ってきてやる」と言われ、リプロを買わされた思い出があるそうだ。褪せたリプロだったので以来、三十年探してようやく昨年手に入れたとか。1964年のシングルだが、スィームズは幽霊グループで、その正体はサイアー・レーベルの立ち上げに関わったことで知られるリチャード・ゴッタラが中心になった3人組のソングライター、プロデューサー・チーム。

・DON'T ASK ME TO BE LONELY
達郎さんの1999年のひとりアカペラ・アルバム『ON THE STREET CORNER 3』から。ニューヨーク、ドゥーワップの有名なグループ、ダブズのカヴァー。
「『ON THE STREET CORNER 4』、いつになったら作れるんでしょうね(笑)。還暦までに作りたいなと思ってるんですが」と達郎さん。

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係
■今後の予定
02月13日は、レギュラー・プログラム「棚からひとつかみ」
http://www.smile-co.co.jp/tats/
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Motoharu Radio Show #067

2011年02月03日 | Motoharu Radio Show

2011/02/01 OnAir - 1st. Week - 『月と専制君主』特集 #2
Duffy:Endlessly
佐野元春 with The Heartland:月と専制君主(from ‘Cafe Bohemia’)
佐野元春:月と専制君主 - Boys & Girls Version -
佐野元春:彼女が自由に踊るとき
Tom Waits:Trampled Rose
Joe Henry:Time Is a Lion
佐野元春:C'mon
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■内容の一部を抜粋
・特集『月と専制君主』
今回はセルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』の特集、その第二回目。

・3PICKS!
「Motoharu Radio Show」では毎月番組推薦盤3枚のCDをピックアップしている。今月2月の「3PICKS!」はダフィー『Endlessly』、カニエ・ウェスト『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』、そしてアデル『21』。どのレコードも心に響くよいソングライティングと素晴らしいサウンドがあると元春。この中から今週はダフィー『Endlessly』。

・ダフィー
1984年、イギリス・ウェールズ出身のシンガー・ソングライター。現在27歳。ここ最近、イギリスで最も話題になってる女性シンガー。2008年に出したデビュー・アルバム『Rockferry』がプラチナ・ディスクを獲っている。それに続く二枚目のアルバムということで注目される中、リリースされたのが今回の『Endlessly』。このアルバムではベテランのシンガー・ソングライターであるアルバート・ハモンドとコラボレーションしている。アルバート・ハモンドはイギリス出身の伝説的なシンガー・ソングライター。よく知られた曲でいえば1970年に世界的にヒットとなった「カリフォルニアの青い空」という曲があった。このアルバムでダフィーはそのアルバート・ハモンドとパートナー・シップを組んで、一緒に曲を書き、またプロデュースしている。しかし、ダフィー自身がとても優れたソングライターで、イギリスの優れたソングライターに授けられるアイヴァー・ノヴェロ・アワーズという賞で、ダフィーは現在、最多三部門でノミネートされているということ。また、イギリスで最も権威のあるブリット・アワーズという賞で、ダフィーは最多三部門で授賞している。子どもの頃は人里離れた漁村で育ったダフィー。流行のポップ音楽は身近なものではなかったということだそうだ。唯一、お父さんが録画していて持っていた'60年代のテレビ音楽番組『Ready Steady Go』を観るのが楽しみだったということ。シンガーとしてはとてもソウルのこもった特徴のある声が魅力的。新しいアルバム『Endlessly』から「Endlessly」。

・GreenPeople
環境問題に取り組むユースたちを紹介するレポート「GreenPeople」。毎週このコーナーでは環境を巡る社会活動を通じて様々なアクションを起こしている人たちを紹介。このコーナーの協力はNHKの環境特集番組「SAVE THE FUTURE」。
http://www.nhk.or.jp/savethefuture/mamoribito/index.html

今週は「玉川大学学生環境保全委員会」。有志の学生たちが集まって平成18年から学園内や近隣の児童施設などで子どもたちに環境教育を行っている。
http://www.nhk.or.jp/savethefuture/mamoribito/movie/motoharu1.html

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Motoharu Radio Show #067

2011年02月03日 | Motoharu Radio Show

・特集『月と専制君主』
セルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』の特集、その第二回目。アルバム制作にまつわる話などを交えて新しいアルバムの曲の紹介。聞き手は番組アシスタントの後藤さん。

・月と専制君主(from ‘Cafe Bohemia’)
1986年にリリースしたアルバム『Cafe Bohemia』から。テーマがあって、バース1、バース2、後半になると世界観が変わって、ちょっとした組曲風のアレンジになってる、と元春。最後のほうはみんなに呼びかけるようなR&B的な調子になってて、今聴いてもずいぶん変わってるなと感じるそうだ。'80年代の中頃に編集していた雑誌「This」の取材でパリを訪れ、フランス五月革命に関連した物事や人々を取材していたときに、パリの友人たちとモンマルトルやカルチェ・ラタン辺りを散歩しながらいろいろな話をしたという。そのときにこの詩のテーマが思い浮かんだとか。オリジナル・ヴァージョンには「Sidewalk Talk」という副題を付けていて、サイドウォークを歩きながらお喋りするというイメージ。

後藤: 「Rock & Roll Night」をキーも変えて、全く違うアレンジでやったときに賛否両論だったという話を聞いたんですね。賛否両論の反対のほうの意見ってどう思ってますか?

元春 : それは僕の負けだなと思いますね。自分の曲をアレンジを変えてライヴなどでよく演奏しますけれども、オリジナル以上のインパクトですとか、オリジナル以上の説得力がないと、やはり聴き手はがっかりしてしまうと思うんですね。これはソングライターであり、サウンドをデザインしている自分の、アーティスティックのエゴだと思うんですけれども、オリジナル以上の表現ができると自信を持ったときにそれをやるわけなんですけれどね、ステージで披露するときにはいつもドキドキしますね。評判が悪かったらすぐに撤回しますし(笑)、いいねという評判があると、さらにそれを押し進めるようなこともありますね。

後藤: 僕はあの「Rock & Roll Night」すごく好きだったんですよね。

元春 : う~ん。「Rock & Roll Night」とか「SOMEDAY」だとか、かなりレコードでサウンドや編曲が構築的なもの、そしてすでに世界観ががっちり決まってる曲については、やっぱり壊しにくいですし、それを超える新しい編曲というのはなかなか難しいというのが正直な感想ですね。

後藤: 自分の曲に挑んだ結果を聴いてみたいと思うんですが。

元春 : 「月と専制君主」は今回、タイトル・ナンバーになってますけれども、アルバムに収録した曲が全部過去に書いた曲であるんですけれども、大体'80年代中盤から'90年代前半にかけて書いた曲です。かなり昔に書いた曲なので、自分の中ではそれらの曲に対して距離を置いて聴けるというか、自分を対象化して聴けるので、まるで人の曲をね、カヴァーするような冷静さがありましたね。これが最近の曲、例えば『THE SUN』とか『COYOTE』をカヴァーするとなると、まだ自分の中でホットな部分があるので、編曲し直すにあたって、ちょっと躊躇するようなところがありますね。

後藤: 「月と専制君主」、タイトル・トラックですが、先行してダウンロードだけで発売されたんですけれど...

元春 : そうそう。「月と専制君主」、アルバムに入ってるヴァージョン以外に先行シングルとしてリリースした、これはダウンローディングのみなんですけれども、この楽曲にシンガーのCoccoが参加してくれるという、そういううれしいハプニングがありましたね。それではその「月と専制君主」、Coccoが一緒に歌ってくれた「Boys & Girsl version」というんですが、今夜はこのヴァージョンを聴いてもらいたいと思います。

・月と専制君主 - Boys & Girls Version -

後藤: 「月と専制君主」、Coccoとのデュエットのヴァージョン...

元春 : うん。どうだったかな?

後藤: あぁ~、これはアルバムのほう以上にメッセージが伝わってきますね。

元春 : 詩が持ってる世界観、Coccoという素晴らしいシンガーが一緒に歌ってくれたことによって、さらに充実したというか、広がりをもった。だからこの曲に参加してくれたことにとても僕は感謝しています。

後藤: そもそもカヴァー・アルバムそのものは何回か出そうと思ったことがあったんですか?

元春 : 全くなかったです。

後藤: 急にですか?

元春 : 30周年ですよね。活動30年目を迎えるということだったので、なにかファンが楽しくなってくれるような、そういうレコードをプレゼントしたい、そういう思いがありましたね。その一環で今までやってなかったのでセルフ・カヴァー・アルバムやってみようかな、それがきっかけでしたね。今回は自分の新作を作るのと全く同じコストとエネルギーをかけて作りました。

後藤: Coccoとのデュエットだったんですけれど、デュエットって今までもBONNIE PINKだったり、何回かあるんですけれど、佐野さんにとってデュエット・ゲストを迎えるというのはどういうきっかけというか、気分でそういうことになるんですかね?

元春 : やはり、そこで歌われてる詩の世界ですよね、詩の内容、これが男性である僕に加えて、女性の視点といったものが加わると、ちょうど裏と表でひとつになるような、そのような詩というものが僕の中にいくつかあってね、例えば'90年代出したレコードでいうと「また明日」という曲、これは矢野顕子さんと。男性側から「また明日」と呼びかけて、女性側からも「また明日ね」と呼びかけられることによって詩がふくよかになるというか、詩が具体的になるというかね。そういうことを考えて、今回のこの「月と専制君主」も男性視点、それから女性視点、女性視点を補ってもらえるとさらに詩が膨らむかなという思いがありCoccoに参加してもらいました。

後藤: Coccoはデュエットしてみて、実際にスタジオではどうでした?

元春 : Cocco、よいアーティスト、表現者だと思うんですね。実をいうと'90年代に「This」というロックンロール・ショーケース・イベントを僕がプロデュースしてたことがあるんですけれども、そのときにちょうどCoccoがデビューしたばかりで、すばらしいシンガーが出たなと思い、出演を依頼して、彼女はそのときに僕がプロデュースしたイベントに出演してくれたんですよね。その頃から表現者としてのCoccoをときどき拝見させてもらって、素晴らしいなと思ってました。だから今回共演できてうれしく思ってます。

後藤: アルバムのほうにはさらにもう一曲。デュエット・ゲストを迎えた曲があるんですが。

元春 : あぁ、そうだね。LOVE PSYCHEDELICOとの共演ですよね。みなさんのほうがよく知ってると思うんですけれどもギタリストとシンガーのユニットですよね。その二人が参加してくれました。ではLOVE PSYCHEDELICOをフィーチャリングしたこの曲を聴いてください。「彼女が自由に踊るとき」。

・彼女が自由に踊るとき
LOVE PSYCHEDELICOとは民放のある音楽番組でボブ・ディランのカヴァーを一緒に歌ったのがきっかけとなって交流がはじまったとか。「あの世代にしては珍しくフォーク・ロックなサウンドを奏でてる。だから仲間のような感じがしてました」と元春。

後藤: (リスナーからのコメント)「佐野さん、新しいブルースをありがとう。最近、元春がとんでる兄貴に思えます」というメッセージをもらったんですけれど...

元春 : わぁ、それ(笑)。そうですか。

後藤: ブルースだっていうメッセージなんですよ。

元春 : そうだね。表現のエリアでいうと今聴いてもらったこの曲はブルース傾向が強いですよね。

後藤: それは音楽のスタイルというよりかは歌詞のほうのニュアンスですか。

元春 : そうだね。僕も音楽のその形態がブルースなのかロックンロールなのか、ソウルなのか、それはあんまり気にしてない、作ってるときにはね。ただ詩の世界ですよね。この曲も決して明るく開かれた世界というよりかは、閉ざしてはいないけれども、これから解き放たれたいという気持ちが表現されてると思うんです。男性である僕と、それからLOVE PSYCHEDELICOのKUMIさん、彼女の声が一緒になることによって、なにか一方的ではない表現になってるかなぁって自分では思ってるんですね。彼女が自由に踊るときこそ、世界が解放されるって、この気づきを3分間のポップ・ソングにしたかったというのが僕の意図でした。

(中略)

後藤: 今回のアルバムなんですけれど、マスタリング・エンジニアにジャクソン・ブラウンとかトム・ウェイツ、ジェームス・テイラーなんかの作品を手掛けてたゲビン・ラーセンを起用されてるんですけれど、すごく音がいいですね。

元春 : 今回は徹底的にアナログ的な響きにごわりました。特に今回マスタリングで仕事をしてもらったゲビン・ラーセン。彼はアナログ的なサウンドに仕上げるのが、現在いちばん優れたマスタリング・エンジニアだと思って、一にも二もなく彼に依頼しました。

ゲビン・ラーセンのキャリアを調べるとMotoharu Radio Showの「3PICKS!」で取り上げてるアーティストが多いのだという。「これは偶然ではないですね」と元春。プロデューサーのT-ボーン・バーネットもゲビン・ラーセンをよく起用しているのだとか。ここでゲビン・ラーセンが手掛けた作品の中からトム・ウェイツの「Trampled Rose」とジョー・ヘンリーの「Time Is a Lion」。

後藤: (トム・ウェイツの「Trampled Rose」とジョー・ヘンリーの「Time Is a Lion」を聴いて)やっぱり一貫してますよね。

元春 : 共通しているのはバンドが一斉に演奏してるのを録ってるということ。それからそれぞれの楽器に響きなんですけれども、そのレコーディング・スタジオのルームに響いてる音をなるべく自然に使おう、そういう傾向ですね。ですので聴いてると目の前でバンドが演奏してくれてるかのような、そしてまた、空気感を感じるサウンドですね。それについては僕の今回の『月と専制君主』アルバムもそうしたサウンドを目指しました。

後藤: それともう既にご存知の方もいると思うんですけれど、このアルバムのLPが同時にリリースされてるっていう...

元春 : そうだね。今回はアナログ的なサウンドを作ろうということで、当然ね、CDだけじゃなくアナログ盤もリリースしようということになりました。

後藤: 佐野さん、ご自分でそのカッテングされたものを聴いてどうでした?

元春 : いいアナログだなぁという感じ。で、今回はレコーデッドの時点からアナログ的な表現をと言ってきたので、最終的に盤になったときにはね、とても感慨深いものがありましたね(笑)。うれしかった。

後藤: すごく粋だなと思うのは、アナログ盤を買うとCDがオマケで付いてくるんですよね(笑)。

元春 : そこでのアーティストの主張っていうのはアナログのほうがCDサウンドより偉いんだぞということですよね。

後藤: ははははは。

元春 : CDサウンドはオマケだぞっていう(笑)、そういう主張ですね、はい。

後藤: すごくオーディオ的にもうるさい方にも是非聴いてもらいたいんですが。何度も聴かせてもらったんですけれど、そのアナログ的なサウンド、なぜこの時代にアナログなものを求めたのかっていうところをおうかがいしたかったんですが?

元春 : いくつかあるんですけれども、自分が十代、二十代、やはりアナログで育ってきたので、そこに向けてのちょっとした郷愁が(笑)、あるのかもしれないなっていうのがひとつと、それからあるときレコーディング・エンジニアとアナログとCDの音の聴き比べをしたことがあった。聴いたのはU2の『ヨシュアズ・トゥリー』。CDでリリースされましたが、最近になって重量盤で『ヨシュアズ・トゥリー』のアナログ盤もリリースされた。で、そのCDとアナログ盤をスタジオで聴き比べをしたんですね。そうするとCDのほうは音の世界観はよくわかるんだけれども、ボリュウムを上げていくと、ある限界地点を超えると耳に不快に響くという、耳障りが悪くなってくるんですね。でもアナログ盤はどんなにボリュウムを大きくしてもココロとカラダに気持ちよく響く。うん。確かに音の解像度だとか、音の質感でいうと再現性はCDのほうが確かなんでしょうけれど、アナログで聴いた楽器間とか、楽器とヴォーカルの音の滲み方、あいまいなんだけれども全体で聴くとココロとカラダにやさしく響く。どんなにボリュウム大きくしてもね。そのことがわかって、そのアナログのよさを再認識したんですね。

後藤: あっ、話は尽きないんですけれど、ちょっとまた、来週もお邪魔してもいいですかね?

元春 : もちろんです。

後藤: そのアナログをさらに突き詰めたような曲が一曲あるので、ちょっと聴かしていただいていいですか。

元春 : これは1999年にリリースした『Stones and Eggs』というアルバムに収録した曲です。かなりオリジナルと感じが違ってますけれどもね(笑)。今回、このヴァージョン、僕は個人的に気に入ってます。

後藤: かっこいいですよね。

元春 : では聴いてください。アルバム『月と専制君主』から「C'mon」。

・番組ウェブサイト
「番組ではウェブサイトを用意しています。是非ご覧になって曲のリクエスト、番組へのメッセージを送ってください。待ってます」と元春。
http://www.moto.co.jp/MRS/
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