ミュージック・スクエア

2007年06月18日 | 佐野元春 Radio Days

ミュージック・スクエア
2007年6月13日(水) NHK-FM 21:10-22:45
DJ:間宮優希
GUEST:佐野元春

Playlist
君が気高い孤独なら / 佐野元春
荒地の何処かで / 佐野元春
黄金色の天使 / 佐野元春
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■内容の一部を抜粋
・晴れ男
「ライヴとかで雨が降っていても僕がステージに立つと雨がぴたっと止んだりとか、よくありますね」と元春。

・服装
「スタジオにいる時とか自分の場所にいる時はラフです。お出かけする時とかは最近はパンツ、ジャケットが多いですね」と元春。

・君が気高い孤独なら
ミュージック・ビデオのダイジェスト版約90秒がアルバム『COYOTE』の特設サイトで公開されている。
元春「僕が街をずっと練り歩くというストーリーで、僕が生まれ育ったのは東京の下町なんですけれどね、日本橋とか浅草とか上野とかね、その辺を舞台にしてます」
間宮「いろいろな世界というか自分の想像する世界というのがあのミュージック・ビデオからも感じることができます」
元春「あれモノクロということもあって、モノクロというのはカラーよりも自分が入っていきやすいというかね、自分で色を付けていくので、カラーよりかは僕なんかは親密な感じがして好きですね」

・コヨーテ、荒地を往く
特設サイトに「コヨーテ、荒地を往く」という佐野元春によるテキストが公開されている。
"この荒地に立って嘆く君のため息が僕の音楽となる。この荒地のどこかで君の声が聞こえている。「コヨーテ」は僕にとってささやかな虚空の手だ。その虚空の手を光にかざしどこまでできるかわからないが唄ってみた。"

・コヨーテ男
「前作の『THE SUN』は自立した世代の人たちの男性女性が主人公でした。テーマにしたのは日常のすごさとかね、日常の尊さ、そうしたものをそれぞれの曲の主人公を通じて、曲にしてみたんですけれどね。今回の『COYOTE』というアルバムはいろいろな人の人生が歌われているわけではなくて、コヨーテ男、コヨーテと呼ばれる男、僕が作ったキャラクターですけれどね、その彼が全体の主人公となっている、そういうアルバムなんですよね」と元春。

・コヨーテ
間宮「コヨーテという動物を見たことも?」
元春「僕はあります。米国にいた時にボストンの郊外でコヨーテを見て。僕はコヨーテというのは山間部にね、生きてる動物かなと思ったんだけれども、意外と街中にふらっと出てくるらしいですよ。で、日本の動物でいうと柴犬に近い、柴犬にすごく似ている。コンパクトで目がちょっとつり上がっていて凛々しい感じがするね」
間宮「それを見たところからはじまったんですか?」
元春「そう、コヨーテはなんか心にずっと引っかかるものがあって、大体、物の本を読むとネイティブ・アメリカの人たちにとって、コヨーテというのは力の象徴であったり、なんかこう生き残ってゆく、サバイバルしてゆくということについて、とても知恵の働くそういう動物だって物の本に書いてあるんですよね。だから、いつか、コヨーテをテーマにした音楽作品を書いてみたいなって思ってました」

・『COYOTE』を聴いて
「ポップ音楽を聴く楽しみのひとつは、曲を聴いて自分なりのストーリーを紡げたり、自分なりの景色がその曲を聴くことによって思い浮かんだりね、そういう楽しみがあると思うんです。ですから僕もソングライターとして、聴いてくれた人が何か景色を描いてくれるような曲を書きたいなと常々思ってるんですね。ですから今回のこの『COYOTE』も映画のように作ったといいましたけれども、アルバムを聴いていただいて、ご自身の映画をまた紡いでくれるとうれしいですね」と元春。

・新しいバンド
元春「ホーボーキングバンドはライヴにレコードにこの10年間一緒にやっていますね。ですから、僕たちはよきミュージシャン仲間であると同時に、仲間、友人たちというそういう関係ですね。で今回の『COYOTE』アルバムは、そのホーボーキングバンドにちょっとお休みしてもらって、僕の音楽を多感な頃に聴いていたミュージシャンたちに集まってもらって、それでレコーディングしたんです。だからやっぱりホーボーキングバンドのサウンドとは違いますよね。すごく面白い」
間宮「その人選はどのようにされていったんですか?」
元春「ほぼ10年来、レコードにライヴによく聴いてきたミュージシャンたちですね。ミュージシャンとしてのポテンシャルがひじょうに高い連中ですし、それから自分で曲を作りもし、歌いもするという、そういう彼ら。僕もソングライターなのでそういうミュージシャンたちとのコラボレーションというのが結果がすごくいいんですよ」
間宮「教えていただけますかメンバーを」
元春「ベースが高桑圭、彼はグレート3、そして今はカーリー・ジラフというユニットでやっていますね。そしてギターが深沼元昭、彼は元プレイグス、最近新しいバンドをまた彼は作って、GHEEE(ギー)というバンドですけれど、がんばってますね。それからドラムスが小松シゲルくん。彼はノーナ・リーブスというバンドに在籍しています。彼のドラム、僕は大好きですね」
間宮「ノーナ・リーブスというと、イメージがなんとなく、ドラムが違ったんですが、今回聴くとまた全然違った小松さんのドラムがブワッーと聞こえて...」
元春「そうなんです。ノーナ・リーブスでの彼のドラミングももちろん素敵だけれどね、ミュージシャンとしてのポテンシャル、彼はひじょうに高いですね。今回のレコーディングでも自分が叩いたことのないようなリズムとかにチャレンジしてくれたんだけれども、僕がいいなぁと思う...、僕はシンガーですのでドラマーとのコンビネーションがとても大事なんですけれども、歌いやすかったです」
間宮「その小松さんが言われるには、ドラムのセッティングがまだしてる段階で、佐野さんがもうパーカッションかなにか、パパパッと叩き出して、[一緒にこの音弾いてくれる]みたいな(笑)、ことがもうはじまり、[あっ、いつの間にかレコーディング]っていう、そういった楽しみというか、知らないうちにセッションができ、音ができというのが佐野さんの今回のレコーディングだったと仰ってますが...」
元春「そうですね、まぁレコーディングというのは仕事じゃないですしね、遊びですから、何か段取ってやろうというものとも違うと思うんですよね。誰かがドラムを叩き出して、それに反応して誰かがパーカッションを叩き出して、もうその延長線上でいい感じになったら、じゃあレコーディングしようかっていうことですから、あんまり段取りって好きじゃないですね」
間宮「じゃあもうレコーディング・スタジオに入ったと同時に、もう佐野さんの中にはいろいろな構想が...」
元春「スタジオというのはとても神聖な場所です。僕たちミュージシャンたちがそこに入れば、化学実験じゃないですけれども、自動的にいろいろな反応が起こるんですね。演奏してないときも。しかし僕たちはたまたま年齢が少しずつ違うけれどもミュージシャンとしてレコーディング・スタジオに入った限りはクリエィティブにいかにスパークするかというのが一番大事になってきますね」

・コーラス
「今回はさっき言ったメンバーによるバンド・サウンドですよね、僕を含めて。僕も今回は楽器をたくさん弾いています。すごいのは全員ソング・ライターで、全員シンガーだということ。歌のツボを心得ている。深沼くんのハイ・トーン・ヴォイスと僕の声は、ハーモニーということでいうとね、とても溶け合いがいいんですよね、かっこいいというかね。だから深沼くんには今回ずいぶんいろんな曲で歌ってもらっているし、小松くんもいろいろと歌ってくれていますね。それとステージで一緒にやっているTTシスターズという、フィーメールの二人組も、女性コーラスですけれど、バッキングやってくれてます」と元春。

・呼吸
元春「女性、男性関わらず、この曲は自分にひじょうに近い人が、精神的に神経的にプレッシャーを受けている状態、そこに音楽がどれくらい役に立つのだろうか、ということを思いながら歌っている曲ですね。聴いてもらわないとわからないです、これは。解説すると野暮になりますからね」
間宮「女性のファンのことも考えてらっしゃる、というメッセージもありましたが...」
元春「僕の音楽ファン、半分男性、半分女性、地球もそうですよね。大体ね。常に振り返ってみると、ソングライターとして、曲を書くモチベーションというか、動機というか、女性がとても僕に影響を及ぼしているということもあるんじゃないかと思うんですよね。そして、僕ももうすでに16歳じゃないですから、いろいろな経験もしています。その年代、その年代で女性に対する敬意とか、女性に対する思いとか、女性に対する見方、接し方というのは、少しずつ変わって行ってるような気がしますね。ただ僕は音楽でもって、表現することができます。できますっていうか、音楽しかできないんですけれども(笑)、音楽やることで、そうした彼女たちに何か感謝の気持ちを伝えたりとか、なにか自分の思いを伝えたりとか、できてよかったなぁと思いますね」
間宮「女性というものを意識した上でのことになりますと、ラヴ・ソングという言葉がありますが...」
元春「"愛"ですよね。"愛"、"友愛"、いろいろな感情があると思います。どのポピュラー・ソング、どのロックンロール曲も、一言で言っちゃえばみんなラヴ・ソングですね、はい」
間宮「そのラヴ・ソングというものを今回意識したところも...」
元春「いや、それは意識しない。よい愛の曲を書こうとして、よい曲ができたためしはないですから」
間宮「ほう~~。そういった意識を逆に働かせない? 思った世界をそのまま投じているという...」
元春「ソングライターとして、食事をしたり、眠ったりしているのと同じ感覚で、毎日曲を書いたりだとか、詩の断片を探ったりするんですよね。これもよく友人に言うんですけれど、僕はどうもソングライティングだとか、レコードを作ったり、曲を書くことは、自分の仕事ととは思ってない」
間宮「さっきも遊びって仰ってましたが(笑)」
元春「そうなんですよ。何か生活の延長であり、いつまでもそうであってほしいなっていう願いもありますね」
間宮「いつまでもそう思えることが羨ましくもあり素晴らしいなと思うんですね。そう思えなくなってしまうっていうのが、何かどこか日常にできてしまう、ってか、作ってしまうんでしょうか? 自分で」
元春「どうなんでしょうか。僕の場合は自分の近しい人、それからファンの人たちですよね、[あぁ、今回とてもいい曲書いてくれたね]って褒められれば、すぐうれしくなって、こんな曲もあるんだけれどって、そんな感じでずっと続けています」
間宮「佐野さんの曲を聴くことで、自分自身で雁字搦めにしている日常を解き放ったってもらえる部分があるのかなって思います」
元春「いい曲っていうのはそういう力がありますよね。だから僕は自分が悲しいだとか、自分が怒ってるだとか、自分が誰かのことを愛してるだとか、そういう曲は1曲も書いたことがないですね。自分のことはさておいて、自分の目の前の人がどうしてるんだということが気になって、そこから詩ができて曲ができます」
間宮「だから自分のほうにも置き換えることができるというのがあるのかもしれませんね」
元春「お嬢さんの日記のような歌詞ではなくて、ストーリーテリングというかね、物語を僕は書いていきたいと思います」

・世界は誰の為に
今回の『COYOTE』ではアコースティック・ギターのほかピアノもオルガンも弾いている元春。しかし実はDr.kyOnも何曲かに参加している。
「Dr.kyOnはハモンド・オルガンのプレイで日本一ですから、ここぞと思う曲は彼に登場してもらいます」と元春。
その中の1曲が「世界は誰の為に」で、この曲はセッションで一瞬にして作り上げられたという。

・セッション
元春「10年来知っているミュージシャンたちですので、彼らがよく聴いてきた音楽、彼らが好む音楽は大体僕もわかるんですよね。だから彼らの演奏表現とあまりかけ離れていると上手くいきませんから。詩にしても曲にしても、彼らが聴いてくれた時ね、グッとくるような、そんな曲を持って行きました。その結果、彼らとってもいい演奏してくれた。彼らから僕はとってもいいものをもらったし、僕からも彼らに何かいいものをあげられていたらいいなと思いますね」
間宮「ホーボーキングバンドとはまた違ったイメージというか、この作品で成し得た技というか、世界が出たのかなと、今ふっと改めて思わせていただきましたが...」
元春「レコーディングが全部終わった時、彼らは僕に感想をいいましたね。[佐野さんとセッションしていると子どもに戻れる]なんて訳のわからないことをいってました」
間宮「訳がわからないことじゃないですけどね(笑)。たぶん私たちもそうなんじゃないですかね? 先程のモノクロの映像もそうですが、そういったイメージが音にあるというか...」
元春「音楽自体、人々の心を解き放ったり、和らげたりするそういう力があります。また人々の心を強くしたり、けしかけたり、いろいろな力がありますよね。僕や今回の『COYOTE』アルバムに参加してくれたミュージシャンたちは、その音楽の力っていことを見くびってない。力があるからこそリスペクトして、それで何が表現できるのかを真剣に考えている連中ですよね。で、一緒に今回仕事をして僕も学ぶことが多かったです」

・コヨーテ、海へ
間宮「映画のクライマックス、来てます~」
元春「クライマックスですよね。7分ぐらいの曲というと、過去の曲でいうと『ロックンロール・ナイト』とか『ハート・ビート』ってありますけどね、久し振りに長尺の曲となりました」
間宮「"目指せよ、海へ"という言葉が最後に響くんです」

・黄金色の天使
間宮「12曲目にエンド・ロールかなと」
元春「『コヨーテ、海へ』というのが言ってみればこの『COYOTE』という映画のハイライト。で、この曲が終わって、よく映画館などでは映画が本編が終わると、俳優さんの名前がロール・アップしてエンディングになりますよね、その時にかかってる曲としてイメージした曲があります」

■リクエスト・お便りの宛て先:
〒150-8001 NHK-FM ミュージック・スクエア リクエスト係
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