shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベンチャーズ・カヴァー特集②「木の葉の子守唄」

2014-09-24 | エレキ・インスト
①Davie Allan & The Arrows
 私は昔、ベンチャーズに狂って “寝ても覚めてもエレキインスト” という時期があったのだが、その頃に手に入れたベンチャーズ・トリビュート盤「スウィンギン・クリーパーズ ~ア・トリビュート・トゥ・ザ・ベンチャーズ」の中で断トツに気に入ったのがこのデイヴィ-・アラン & ジ・アロウズの「木の葉の子守唄」だ。 “キング・ファズ” の異名を取るだけあって、ベンチャーズ・ヴァージョンに潜むガレージ・ロックのDNAをしっかりと受け継いだアグレッシヴな演奏が楽しめる。おバカっぽい美女とこれまたお約束のモズライト・ギターをフィーチャーした遊び心溢れるジャケット・デザインもたまらんたまらん(≧▽≦)
木の葉の子守唄


②Gerry Mulligan
 私のこの曲との最初の出会いはジャズ初心者の頃に買ったジェリー・マリガン・カルテットのパシフィック盤に入っていたこの演奏で、それまで武骨な音しか聴いたことがなかったバリトン・サックスで信じがたいソフトなサウンドを出しながら軽快にスイングするジェリー・マリガンの名人芸と「木の葉」の曲想がピッタリ合っており、幽玄の美とでも言うべきチェット・ベイカーのトランペットと対位法的に絡むインタープレイの妙味に唸らされたものだ。チコ・ハミルトンとボブ・ホイットロックという名手二人が後半部でテンポを上げて瀟洒なリズムを刻むところがたまらなく好きだ(^.^)
Gerry Mulligan '52 - Lullaby Of The Leaves


③Claude Williamson
 世間ではほとんど知られていないけど自分の中では大名演という、いわゆる “自分だけの名曲名演” を持つことはディープな音楽ファンの愉しみの一つだと思うのだが、私にとってそんな1曲がクロード・ウィリアムソンがインタープレイ・レーベルからリリースした「メモリーズ・オブ・ウエスト・コースト」(1990年)のラストに収められていたこの曲だ。ベースによるテーマ部からピアノのサビへと移行する流れが好きでついついヴォリュームを上げてしまうのだが、そこに待ち受けているのがチャック・フローレスの爆裂ドラム(笑)というワケで、アコースティック・ベースの音色を存分に楽しめてしかも軽快にスイングするという、私にとってはまさに理想的なピアノトリオ・ジャズが展開される。若い頃の押し一辺倒のプレイとは一味も二味も違うツボを心得たプレイを聴かせるウィリアムソンが素晴らしい。
クロード・ウィリアムソン


④Mary Hopkin
 私が持っているこの曲の9割以上はジャズのものだったので、メリー・ホプキンの1stアルバム「ポストカード」の中にこの曲を見つけた時は “あのメリー・ホプキンがジャズを歌ってんのか???” と不思議に思ったのだが、「木の葉の子守唄」以外にもフランク・レッサーの「インチワーム」(←ポールが「キス・オン・ザ・ボトム」で取り上げてた曲)やガーシュインの「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」、アーヴィング・バーリンの「ショウほど素敵な商売はない」といったスタンダード・ナンバーが入っており、それらがみな彼女の清楚な歌声によって瑞々しい輝きを放っていることに驚かされる。この曲の本質である “ララバイ”、つまり子守唄としての魅力をこれほどまでに引き出したヴァージョンを私は他に知らない。単なるポップシンガーにはとても出来ない味わい深い歌唱であり、そんな彼女の資質を見抜いたポールの慧眼に脱帽だ。
Mary Hopkin "Lullaby Of The Leaves" 1969


⑤Ventures
 2005年12月3日は私にとって忘れることのできない記念すべき日だ。この日、コレクター仲間で集まって「木の葉の子守唄」の聴き比べ大会をやったのだが、その時に聴かせてもらったのがこのベンチャーズ・ヴァージョンだった。当然ジャズ一色の選曲になると予想していた私にとっては意表を突かれた形で、 “何でテケテケのベンチャーズがこんなジャズのスタンダート曲をやってるんやろ?” と不思議で仕方なかった。
 ところが実際にLPに針を下ろして曲が始まると、いきなりメル・テイラーのドラム・フィルが炸裂して度肝を抜かれた。パワフルなドラムの連打が生み出すグルーヴに圧倒され言葉も出ない。トレモロを多用したボブ・ボーグルのギターもめっちゃスリリングで、これこそまさにロックンロール!と叫びたい衝動に駆られるカッコ良さである。この瞬間に “「ダイアモンド・ヘッド」や「パイプライン」といったサーフィン・エレキ・インスト専門の懐メロ・バンド” という私のベンチャーズに対する間違った認識は木っ端微塵に吹き飛び、それ以来彼らは私にとって特別なバンドになったのだった。
 とにかくこの凄まじいまでのエネルギーの奔流に身を任せて聴く快感はとても言葉では表現できない。理屈を超えた原始的なロックの初期衝動... ベンチャーズを聴くというのはつまりそういうことなのだ。この曲はCDよりもアナログLPで、それも音が拡散してしまうステレオ盤ではなく、パワーが一極集中して怒涛のように押し寄せるモノラル盤でアンプの音量を思いっ切り上げて聴きたい。
The Ventures - Lullaby Of The Leaves
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