shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Jungle Drums / Jive Bunny Project

2014-09-02 | Cover Songs
 「スペクトル・サウンズ」をきっかけに知った “ジャイヴ・バニー・プロジェクト” のシリーズは様々なテーマに基づいて選曲されているので私のような人間にとっては非常に興味深い企画なのだが、そんな中でも一番面白かったメカラウロコ盤が今回取り上げる「ジャングル・ドラムス」だ。
 “スペクター・サウンド” や “モータウン・サウンド” とは違い、“ジャングル・ビート” というのはポップス・ファンにとっては聞きなれない言葉かもしれないが、「スウィング・ガールズ」や「東京ディズニーシー・ビッグバンドビート」でお馴染みの名曲「シング・シング・シング」のイントロで聞けるワイルドなドラム・ビートと言えばあぁアレのことか!とピンときた人もいるかもしれない。
 このドラム奏法は元々1938年にジーン・クルーパというジャズ・ドラマーが編み出したもので、彼が所属していたベニーグッドマン楽団の「シング・シング・シング」という曲で一躍有名になったものだ。私は若い頃はスウィング・ジャズを古臭いだけの年寄り音楽と思い込み完全にスルーしていたのだが、たまたま友人に勧められて聴いたベニーグッドマンのカーネギーホール・ライヴ盤に収録されていた「シング・シング・シング」でバス・タムを多用してバンド全体を根底からスイングさせるクルーパのワイルドなドラミングに大きな衝撃を受け、それ以来1930~40年代の古いジャズも聴くようになった。論より証拠、私のスウィング・ジャズへの偏見を木っ端微塵に打ち砕いたジャングル・ドラムの名演がコレ↓だ。
Gene Krupa- Sing, Sing, Sing


 “ドンドコ、ドコドン♪” と血湧き肉躍るようなリズム・パターンがインパクト絶大なこのジャングル・ビートを使った曲としては「シング・シング・シング」以外には80年代初頭に一世を風靡したアダム・アントぐらいしか知らなかったが、「ジャングル・ドラムス」という盤には12曲も収められており、 “へぇ~、こんなところにもジャングル・ビートが使われとったんや…(・o・)” と瞠目させられっぱなし。洋楽ネタでは大好きなブライアン・セッツァー・オーケストラのナンバーが2曲入っていてロカビリーとジャングル・ビートの相性の良さを再確認させてもらったが、私的に面白かったのはむしろ邦楽ナンバーの方だった。
ジャングルドラム


 曲目リストでまず目を引いたのがザ・ピーナッツの「恋のバカンス」だ。一体あれのどこがジャングルビートやねん?と思いながら聴いてみると、実に巧妙に原曲を換骨奪胎して強烈無比なジャングル・ビート・ナンバーに作りかえてあり、これがまた結構サマになっているから痛快そのもの(^o^)丿 こーゆーのをオルガンバー・サバービアって言うのかな? 私はその手のクラブ音楽には何の興味も無いが、昭和歌謡の名曲を斬新な発想で現代に蘇らせたこの「恋のバカンス」は大いに気に入っている。土屋浩美さんのドスの効いたヴォーカルがエエ味出してます...(-。-)y-゜゜゜
ザ・ピーナッツ 恋のバカンス THE PEANUTS


 70年代半ばから音楽を聴き始めた私にとって石原裕次郎という人は「太陽にほえろ」の “ボス” 役というイメージしかなかったのだが、まだ私が生まれる前の1958年に彼がリリースした「嵐を呼ぶ男」(←オリジナルは何とSP盤!!!)では白木秀雄オールスターズという現役バリバリのジャズメンをバックにゴリも殿下もロッキーも知ったこっちゃないとばかりにゴキゲンな歌声を披露しており、へぇー、ボスも中々やるやん... と認識を新たにさせられた。はせはじむ氏がジャングル・ビートの素材としてこの曲に目を付けたのはまさに慧眼と言ってよく、このカヴァー・ヴァージョンは原曲を上手くアレンジして強烈なジャングル・ビート・ナンバーに仕上げてあり、洋邦混成メドレーの中でも違和感なく聴けるところがいい。選曲を担当したはせ氏は昔を知らない若い世代にコレを聴かせたかったのだろう。
嵐を呼ぶ男


 意表を突く選曲と絶妙なアレンジが満載のこの「ジャングル・ドラムス」だが、スウィング・リズムとは縁もゆかりも無さそうなトシちゃんまで出てきたのにはビックリ(゜o゜)  ハッキリ言って今の今までトシちゃんなんて心底バカにしていてまともに聴いたことすら無かったのだが、この盤でカヴァーされている「チャールストンにはまだ早い」という曲がめちゃくちゃ気に入ってしまい、YouTubeで怖々(笑)オリジナル・ヴァージョンをチェック。トシちゃんの歌はやっぱりアレだったが、それでも曲の素性の良さは十分に伝わってきたし、この盤のカヴァーは土屋さんが歌っているので安心して聴くことができる。彼女の声は低くてハスキーなのでこの曲にピッタリ合っているし、歌唱法もめっちゃクールでカッコエエわ(^o^)丿
田原俊彦 チャールストンにはまだ早い


 山下達郎先生の「アトムの子」はまさにジャングル・ビートの王道といった感じのナンバーで、80年代以降の邦楽に疎い私は曲名を見ただけではピンとこなかったが、カヴァーを聴いて“この曲どっかで聞いたことあるなぁ...”と思っていたら何とキリンビールのCMソングとして90年代初め頃にTVでガンガン流れてた曲だった。YouTubeで探してみると、ちゃーんとありました... この根津甚八のCM、たしかに見覚えあるわ(^.^)  達郎先生は私的には音壁やドゥーワップ志向のイメージが強いのだが、このようにさりげなくジャングル・ビートを取り入れてヒット曲を出すあたりはさすがマニアの鑑ですな。土屋さんによるカヴァーはこれ1曲フル・ヴァージョンでリリースしてもいいんじゃないかと思えるぐらいの名演だ。
キリン ゴールデンビター - 根津甚八 - ♪ 山下達郎 「アトムの子」


 この「ジャングル・ドラムス」はジャケットに赤字で大きく書かれた副題「BUMPPING」のミススペリング(この場合 P は重ねないでしょ...)が玉にキズだが、内容的にはジャイヴ・バニー・プロジェクト・シリーズの中でもトップクラスの1枚だと思う。
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