shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベンチャーズ・カヴァー特集③「パイプライン」

2014-09-28 | エレキ・インスト
①Stevie Ray Vaughan & Dick Dale
 「パイプライン」のカヴァーで真っ先に頭に浮かんだのが、アネットとフランキー・アヴァロン主演の映画「バック・トゥ・ザ・ビーチ」(1987)のサントラ盤に入っていたこの演奏。「ミザルー」で一世を風靡したディック・デイルと我が最愛のギタリスト、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが共演しているのだからこれはエライコッチャである。 “キング・オブ・ザ・サーフ・ギター” と “テキサス・ハリケーン” のギター・バトルは何度見ても鳥肌モノで、ピンクのスーツを着てトレードマークであるゴールドのストラトを弾きまくるディック・デイルもカッコイイが(←バッハみたいなバロック・ヘアーにはワロタ...)、偉大なる先輩を立てながらも野太い音で歌心溢れるソロを聴かせるレイ・ヴォーンのプレイに惚れ惚れする。一音一音に魂がこもっているというか、説得力が違うのだ。ギターを弾くために生まれてきた男、スティーヴィー・レイ・ヴォーン会心の名カヴァーだと思う。
Stevie Ray Vaughan & Dick Dale - Pipeline (1987)


②ザ・タイマーズ
 “エレキでテケテケ” の代名詞とも言える「パイプライン」を何とアコギでパンキッシュに演奏しちゃったのが忌野清志郎率いるザ・タイマーズだ。これは彼らが1989年末の年越しライヴ「ロックンロール・バンドスタンド」に出演した時のもので、CDやDVDでオフィシャルにリリースされていない貴重な演奏だ。始末書持参の全共闘スタイルでのライヴというのもインパクト絶大だが(←コレをNHKの衛星放送で生放送してたんやから凄いわ...)、そういった演出が霞んでしまうぐらいメンバー全員ノリノリのプレイで楽しませてくれるところが◎。何よりもアコギでこれだけのグルーヴを生み出せる彼らの演奏技術の高さに唸ってしまう。鉄パイプで武装して「パイプライン」という彼らのユーモアのセンスも大好きだ。因みに pipeline というのは大波が作り出すパイプ状の水のトンネル空間を意味するサーフィン用語なのだそうだ。
ザ・タイマーズ パイプライン 1990


③Johnny Thunders
 パンクな「パイプライン」といえばもちろんこの人、ジョニー・サンダース。ニューヨーク・ドールズ脱退後の1978年にリリースしたソロ・アルバム「ソー・アローン」の1曲目に入っていたのがこのカッコ良い「パイプライン」だ。ファッション重視で音楽的中身のない有象無象のロンドン・パンクとは違い、ニューヨークのパンク・ロッカーの演奏からは50~60年代ロックンロールへの愛情やリスペクトがしっかりと伝わってくるので聴いてるこちらも安心して音楽に浸ることができる。このジョニサン・ヴァージョンもソリッドなギターが唸りを上げる痛快無比なカヴァーに仕上がっていて言うことナシだ。この人は筋金入りのジャンキーで、下に貼り付けたライヴ動画の冒頭でも「パイプライン」を演奏する前にステージ上でつかみ合いの喧嘩をする生々しいシーンが映っていて驚かされるが、ヘロヘロにラリッていながらもアグレッシヴに「パイプライン」を弾き切ってしまうところが凄いと思った。
Johnny Thunders - Pipeline (live)


④Chantays
 カヴァーがオリジナルを凌駕したビートルズの「ツイスト・アンド・シャウト」や「ロックンロール・ミュージック」の場合と同じく、「パイプライン」というとどうしても “ベンチャーズの曲” というイメージが強いが、この曲の元々のオリジナルはシャンテイズというカリフォルニア出身の若者5人組から成るインスト・バンド。デビュー・シングルとして地元のマイナー・レーベルからリリースされローカル・ヒットしていたこの曲に目を付けた大手のドット・レーベルが権利を買い取って全国展開したところ全米4位まで上がる大ヒットとなったということらしい。残念ながら彼らはこの曲以外はヒット曲に恵まれず、いわゆるひとつの “一発屋さん” で終わってしまったが、サーフ・インストの大スタンダード・ナンバーとして様々なミュージシャンにカヴァーされているこの曲のオリジナル・アーティストとして音楽史にしっかりとその名を刻んだだけでも大したものだと思う。
The Chantay's - Pipeline (Lawrence Welk Show 5/18/63)


⑤Ventures
 今回の特集をするにあたってシャンテイズのオリジナル・ヴァージョンとベンチャーズのカヴァー・ヴァージョンをじっくり聴き比べてみたのだが、同じ3分足らずのエレキ・インストでありながら注意深く聴くと両者の微妙な、しかし決定的な違いが見えてくる。チープなノリが魅力のシャンテイズに比べてベンチャーズの方が明らかにギターの音に鋭さがあり(←コレめっちゃ大事!)、巨大な波のうねりを表すトレモロ・グリッサンドの “テケテケテケ” 奏法も太くて粘っこい。メル・テイラーが生み出す圧倒的なグルーヴもシャンテイズとは比べ物にならないくらい凄まじい。こういった違いの一つ一つが積み重なって一方を歴史の巨人になさしめたのだ。
パイプ・ライン Pipeline'65 【Resize-HQ】 The Ventures
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