shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

RAM [Super Deluxe Edition] / Paul McCartney

2013-07-20 | Paul McCartney
 このブログでポール祭りを再開した翌日に “ポール来日決定!!!” のニュースが飛び込んできた。5月に「アウト・ゼア・ツアー」ブラジル公演の模様を取り上げた時に “日本に来てくれへんかなぁ...” と希望的観測を書いたが、それが現実になったのだ(^o^)丿 7月の初め頃から来日の噂がネット上を駆け巡っていたので “ひょっとすると...” と思ってはいたのだが、いやはや全く感無量である。ビートルズ・ファンとして生を受けた以上はどーしても生ポールが見たい! ということでこの1週間はチケットが取れるかどうか気になって気になって仕事も全然手につかない。大阪公演は一応11月12日と決まったものの、会場の発表すらなく詳細未定だからだ。ハッキリ言ってこれでは生殺しである。とにかく今はチケット情報配信メールが届くのを一日千秋の想いで待つ毎日だ。どーかチケットが取れますように... と念じつつポール祭りも後半戦に突入。前回は「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」を取り上げたので、今日はスーパー・デラックス・エディション繋がりで「ラム」にしよう(^.^)
 平均的日本人は「ラム」と言えばまず「うる星やつら」を思い浮かべるだろうが(←でしょ?)、ビートルズ・ファンにとってはポールが1971年にリリースしたセカンド・アルバムを指すことは言うまでもない。何を隠そうポールのソロ作品中で私が一番好きなのがこのアルバムであり、“無人島ディスク” 候補を考える時にいつも真っ先に頭に浮かぶのもこのラムちゃんなのだ。このアルバムは発表当時アホなクリティック連中からボロクソにけなされていたらしく、私が音楽を聴き始めた70年代半ばでもやはりその評価は低いままで、私はそれらの酷評を読むたびに “コレの一体どこがアカンっちゅーねん? 完璧なポップ・アルバムやないか!” と怒りがこみあげたものだった。あれから40年近い年月が経ち、今回のアーカイヴ・コレクションのリマスターでようやく再評価が進んでいるようだが、何を今更と言いたい <`ヘ´>
 そんな「ラム」狂の私でもこの “スーパー・デラックス・エディション” の15,000円という価格設定にはビックリさせられた。冷静に考えればいくらボーナス・ディスクや写真集が付くとは言え「ラム」だけでビートルズのリマスター・ボックス16枚組と数千円しか違わないなんてボッタクリ以外の何物でもない。普通なら通常盤で十分と言いたいところだが、問題なのはラジオ局に配るプロモ盤用に制作され eBay では$500を下らない値段で取り引きされているという幻の “モノラル・ミックス” がボーナス・ディスクとして聴けること。これはエライコッチャである。ゼップの時にも大騒ぎしたが(笑)、私はモノラル盤が三度の飯より好きな “モノ・マニア” なので、大好きなポールの、これまた大好きな「ラム」を、大好きなモノラル・ミックスで聴けるとあっては見過ごすわけにはいかない。結局発売から2ヶ月ぐらい経ってからアマゾン・マーケットプレイスで未開封のブツを見つけ9,700円でゲット。値動きを毎日チェックしていた甲斐があったというものだ。
 このボックス・セットには例によって例の如く写真集やイラスト集といった多数のメモラビリアが入っているが、ポールとリンダが(多分)最も幸せな時間を過ごしていたスコットランドの農場での思い出を真空パックしたようなアイテムばかりで、キャンバス生地を使った手作り感溢れるボックスの中にポールのリンダへの愛が一杯詰まっているような気がする。
Paul McCartney - "RAM" 2012 Deluxe Edition Box: Inside View [HiD]


 このボックス・セットには①リマスターされた本編ディスク、②ボーナス・オーディオ・ディスク、③モノラル・ミックス、④スリリントン、⑤ボーナス映像入りDVD、の計5枚のディスクが入っているが、開封してイの一番に聴いたのはやはり③のモノラル盤。私がモノ・ミックスに期待するのは “金パロ” や “ラバー・ソウルのラウド・カット盤” のようなガツン!とくる音作りで理屈抜きに楽しませてくれるか、あるいは “ペパーズ” や “ホワイトアルバム” のモノ盤のように一聴して明らかに違うミックスで驚かせてくれるかのどちらかなのだが、この「ラム」に関しては明らかに前者だ。一つ一つのアタック音が強烈で、大音量で聴いた時の躍動感はハンパない。特に癒し系アコースティック・ナンバー「ハート・オブ・ザ・カントリー」の変身ぶりには目を見張らせるものがあった。
Paul McCartney - Heart Of The Country (Rare Mono Mix)


 敢えてステレオ・ミックスとの違いを探すと、例えばフェイド・アウトが数秒長いとか、エコーが深くかかっているとか、そういう重箱の隅をつつくようなレベルの違いしか無いように思えるが、唯一ハッキリと違いが分かったのが「ロング・ヘアード・レディ」後半のリフレイン部分で、バック・コーラスやポールの掛け声が少し違うし、エンディングで次曲「ラム・オン」のイントロがクロスフェードして入ってくるところもステレオ・ミックスとは違っている。
Paul McCartney - Long Haired Lady (Rare Mono Mix)


 煌びやかなポップ・アルバムとしての「ラム」の最大の長所はそのキメ細やかで多彩なアレンジにあると思うので、「ラム」全曲をオーケストラでカヴァーした④「スリリントン」を初めて聴いた時はポールのヴォーカルもリンダのコーラスもロックのダイナミズムも無しということで気の抜けたコーラみたいに思えたが(笑)、何度も聴くうちにそれぞれの楽曲の魅力が別の角度から捉えられているのに気がついた。特に「ディア・ボーイ」でのジャジーなコーラス・アレンジには目からウロコだったし、「バック・シート・オブ・マイ・カー」のサックスも実に良い味を出していて気に入っている。
Percy Thrills Thrillington - Dear Boy

Percy "Thrills" Thrillington - Back Seat of My Car #Thrillington#


 ハイレゾ音源のダウンロードには “Limited” と “Unlimited” の2種類あって、その方面の知識が乏しい私には “ピーク・リミッターの使用が云々” とか言われても違いがイマイチ分からないのだが、どちらもめっちゃエエ音であるということだけは断言できる。私が使ってる安物のイヤホンで聴いても瑞々しい音が楽しめるので、この音を巨大スピーカーで聴いたらきっと凄いやろなぁと思わせてくれる。
 ⑤のボーナス映像入りDVDの目玉は「ラミング」と題されたアルバム・ストーリーで、ポール自らが当時の状況を振り返りながら曲の出自を解説をしてくれるものだ。ちょうど「マッカートニー・アンソロジー」DVDの「ラム」版とでも言えばいいのか。内容は興味深い話が満載で、例えばアルバム・タイトルのramがオスの羊というのは知っていたが、動詞rammingの“強く前方に押すこと”というのは知らなんだ。それと、ポールがリンダの声のトーンに言及しているのを聞いて、前々から同じように感じていた私は我が意を得たりと嬉しくなった。世間ではリンダの評価は不当なぐらいに低いが、彼女のバック・コーラスがあってこその「ラム」であり、「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」だと思う。気持ち悪い奇声を発して夫の作品を台無しにする誰かさんとはエライ違いである。
 「ディア・ボーイ」がリンダの元夫のことを歌ったものだというのも初めて知った。そう言われてみれば歌詞の内容は十分納得がいく。また、「トゥー・メニー・ピープル」や「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ」といった曲のを引き合いに出してジョンとの “歌戦争” に言及しているのも興味深い。事実として知ってはいても実際にポールの肉声で語られると重みが違うのだ。「Quite Well, Thank You」(快眠さ)という曲を出しかけたというエピソードも面白い。
 このボックス・セット、確かに値段は高いし収納にも困るのだが、ポール・ファン、ラム・ファンとしては “ホンマに買って良かったぁ...(^o^)丿” と思える一生モノの宝箱。やっぱり「ラム」は最高だっちゃ!
RAMMING Complete HD720p
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