shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Yeah ! / Def Leppard

2012-05-13 | Hard Rock
 前回の「ロックンロール黄金時代」つながりで、今日は大好きなデフレパさんだ。私は彼らの大ファンで、リアルタイムで聴いて大きな衝撃を受け80年代ハードロックの理想形と確信した「パイロメニア」、1枚のアルバムから7曲ものシングル・ヒットを出して全米だけで1,300万枚を売り上げた “ハードロック界の「スリラー」” 的存在の「ヒステリア」、80'sデフレパ・サウンドの集大成とも言える「アドレナライズ」の3部作は私にとって “超” の付く愛聴盤なんである。
 しかし残念なことに、90年代に入ってB面曲&未発表曲集「レトロ・アクティヴ」とベスト盤「ヴォールト」という2枚の企画物アルバムで過去を総括した後にリリースされた一連の作品からはそれまでのマジックがすっかり消え失せていた。「ユーフォリア」にはまだ随所に “らしさ” が感じられて結構好きなのだが、それとて上記3部作を超えるようなものではなかったし、「スラング」と「Ⅹ」に至っては、収録曲のクオリティーといい、サウンド・プロダクションの方向性といい、私が夢中になったデフ・レパードの面影はそこにはなく、 “やっぱりマット・ラングがプロデュースせなアカンのか...” “スティーヴ・クラークがおらんとエエ曲が書けへんのか...” とガッカリさせられたものだった。
 しかし2006年にリリースされた彼ら初のカヴァー・アルバム「Yeah!」で往年のサウンドが見事に復活! それまで10年間の停滞がウソのように溌剌としたサウンドを聴かせてくれているのだ。メロディーの大切さを忘れたかのような無味乾燥な楽曲が大手を振ってバッコした90年代以降の不毛のロック・シーンの中で自らが進むべき方向性を見失いかけていたデフ・レパードだったが、若い頃に聴いて育ったブリティッシュ・ロックの名曲たちをカヴァーすることによって迷いが吹っ切れ、蘇生したのかもしれない。
 そのせいだろうか、このアルバムには “悩みに悩み、考えに考えた末に作り上げました感” があった最近の3作とは違って音楽を演る悦びがストレートに伝わってくるような名演が目白押しで、そのことは「Yeah!」という肯定的なアルバム・タイトルからも伝わってくる。まぁ「イエーイ!」などというアホ丸出しのカタカナ邦題(←Yeah の正しい発音は「ィエー」か「ィヤー」でしょ?)を平気で付ける日本のレコード会社のバカさ加減には呆れてモノも言えないが、中身の方はレップス会心のカヴァー集に仕上がっている。
 楽曲は1970年代前半のグラム・ロック・ナンバーを中心に幅広く選ばれており、この時代のブリティッシュ・ロックが大好きな私のような人間にとっては言うことナシの選曲だ。しかも「ゲット・イット・オン」ではなく「20thセンチュリー・ボーイ」、「すべての若き野郎ども」ではなく「ロックンロール黄金時代」、「フォックス・オン・ザ・ラン」ではなく「ヘル・レイザー」というように、敢えて№1ヒットや超有名曲を避けながらもロック・スピリットに溢れた隠れ名曲を選んでいるあたりに彼らの拘りとロックへの深い愛情が感じられる。
 ボートラも含めた全16曲中、私が最も気に入っているのがスウィートの⑤「ヘル・レイザー」だ。彼らは筋金入りのスウィート・ファンで、「レトロ・アクティヴ」でも「アクション」をカヴァーしていたが、この「ヘル・レイザー」はそれをも上回るスリリングな展開で、いきなり “Look out!” というジョーのシャウトからパワー全開で一気に突っ走る痛快無比なロック・チューンに仕上がっている。エッジの効いたギター・リフも聴く者をロックな衝動に駆り立てる超カッコ良いトラックだ。
Hellrasier- Def Leppard


 モット・ザ・フープルの⑩「ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・ロックンロール」も最高だ。オリジナルの持っていたグルーヴ感を活かしながら、彼らの十八番であるあの重厚で美しいコーラス・ハーモニーで “デフレパ印” の刻印を押す... 何という見事なカヴァーだろう!!! ⑤と同様にエッジの効いたギター・リフがこの名曲に更なるドライヴ感を与えているし、中間部の簡潔にして明瞭なギター・ソロも最高だ。尚、有名なイントロの語りの部分は何とイアン・ハンター本人がやってくれたらしい(゜o゜)
The Golden Age of Rock & Roll


 このアルバムの中で最も意表を突かれた選曲がブロンディーの③「ハンギング・オン・ザ・テレフォン」だ。最初に曲名を見た時は “何でデフレパがブロンディーを?” と不思議に思ったが、聴いてみるとこれがめちゃくちゃエエのだ。もちろんブロンディーはブリティッシュ・ロック・バンドではないが、そんなことはどうでもよくなるぐらいにこのトラックは素晴らしい!!! ポップな原曲をデフレパ流の分厚いサウンド・プロダクションによって切れ味抜群のロックンロールに仕上げているあたりはもうさすがという他ない。ハードロック・バンドでありながら大衆の圧倒的な支持を勝ち取った彼らのポップ・センスが最良の形で活かされたキラー・チューンだ。
Hanging on the Telephone- Def Leppard


 上記が私的トップ3で、コレ以外ではマーク・ボランのグルーヴを21世紀に蘇らせた感のあるT.レックスの①「20thセンチュリー・ボーイ」、グラム色の強い選曲の中で異彩を放つフリーの⑨「リトル・ビット・オブ・ラヴ」、名曲「ロケット」の元ネタとなったジョン・コンゴスの⑫「ヒーズ・ゴナ・ステップ・オン・ユー・アゲイン」、アグレッシヴなギター・リフが唸りを上げるシン・リジィの⑬「ドント・ビリーヴ・ア・ワード」、ノリ一発の快感がたまらないイギー・ポップ&ザ・ストゥージズの⑯「サーチ・アンド・デストロイ」あたりが気に入っている。
 CDブックレットには、リック・サヴェージが「クイーンⅡ」、ヴィヴィアン・キャンベルがT.レックスの「エレクトリック・ウォリアー」、ジョー・エリオットがデビッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」の裏ジャケ(!)、リック・アレンがルー・リードの「トランスフォーマー」、フィル・コリンがイギー・ポップ&ストゥージズの「ロー・パワー」というように、70's名盤ジャケットのコスプレで得意げに(?)ポーズをとる各メンバーの写真が載っており、ご丁寧にリング・ウェアー(←アナログ・レコード・ジャケットの円形擦れ)処理まで施してあるという徹底した拘りように唸ってしまうが、このあたりにも彼らのルーツ・ミュージックへの深い愛情とそのユーモアのセンスがよく表れているし、CDを取り出したら現れる三角形のデフレパ・ロゴとプリズム光線がピンフロ「狂気」のパロディーになっているところにも彼らの遊び心が感じられて実に微笑ましい。とにかくメンバー自身が楽しんで作ったというのが手に取るようにわかるこのアルバム、デフ・レパード・ファンだけでなく70年代ロック・ファンにも超オススメの傑作カヴァー集だ。
20th Century Boy Def Leppard with Brian May Queen Live in 2006

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