shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Fly Me To The Moon / Doris Day

2012-05-04 | Jazz Vocal
 断続的に続けてきた “ドリス・デイ祭り” もいよいよ最終回。今日は1961年以降の作品ということで、まずはアルバム・ディスコグラフィー・パート3だ。

【Doris Day Discography Pt.3: 1961- 】
61 Bright And Shiny
   I Have Dreamed
62 Duet
   You'll Never Walk Alone
   Billy Rose's Jumbo [Soundtrack]
63 Annie Get Your Gun [Soundtrack]
   Love Him!
64 The Doris Day Christmas Album
   With A Smile And A Song
65 Latin For Lovers
   Sentimental Journey

1994 The Love Album (1967年にレコーディングされ、その後ずっとお蔵入りしていたもの)
2011 My Heart (1980年代半ばにレコーディングされた未発表音源集)

 1960年代の彼女はまさに歌手としての円熟期と言ってよく、ポピュラーなヒット曲よりもジャズやラテンを歌ったものに傑作が多いように思う。そんな中でも特に気に入っている5曲をピックアップしてみた。

①Fly Me To The Moon
 数多いドリス・デイのアルバムの中で私が最高傑作と信じて疑わないのが1965年にリリースされた「ラテン・フォー・ラヴァーズ」。ラテン曲集という企画自体は当時の世界的なボサノバ・ブームに便乗したような安直なものだが、ボッサの美しいメロディーと彼女のナチュラルな歌声がベストのマッチングを見せ、ドリス・デイの、いや、星の数ほど存在する女性ヴォーカル・アルバムの中でも屈指の大名盤に仕上がっている。
 A面1曲目の「コルコヴァード」からもう彼女の他のアルバムとは違う一種独特なムードに支配されていて驚かされるが、それに続くこの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。必殺のテンポ設定でこれ以上ないというぐらい物憂い雰囲気をバッチリと表現したドリス・デイのヴォーカル、絶妙なタイミングで絡んでくるピアノのオブリガート、哀愁舞い散るフルート・ソロ、バックでしっかりとボッサ・リズムを刻むギター... そのすべてが音楽的・必然的・有機的に結びつき、一体となって響いてくるこの快感は筆舌に尽くし難い(^o^)丿
 ノスタルジックな「センチメンタル・ジャーニー」やスインギーな「ブロードウェイの子守唄」とは又違ったドリス・デイのヴォーカルの奥深さを私に教えてくれたのが、他でもないこの曲なのだ。
Doris Day - Fly me to the moon


②How Insensitive
 アルバム「ラテン・フォー・ラヴァーズ」は全12曲、どれを取っても捨て曲ナシの愛聴盤なのだが、そんな中で上記の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」と並ぶキラー・チューンがこの「ハウ・インセンシティヴ」だ。まるで身をよじるかのような情緒纏綿たる歌い方ながら決してベトつかないというか、官能的でありながらあくまでもナチュラルな彼女の歌声は聴いていてとても気持ち良く、女性ヴォーカル・ファンにとってはまさに悦楽の世界である。緑の草原をバックに、彼女のブロンドの髪とナチュラルな風合いの白シャツのコントラストが目に眩しいジャケットもエエ感じだ。
 たまたま先々月のG3でこの曲を取り上げた時、plincoさんが “昔、よみうりテレビの深夜番組の映画紹介のバックでこの曲がかかってた...” とおっしゃったので早速ネットで調べてみたら、「CINAMA だいすき!」という番組のBGMとして使われていたらしく、しかも多くの方がブログで取り上げておられたのにはビックリ(゜o゜) 今とは違ってテレビ番組のクオリティーも格段に高かったということだろう。YouTube にもアップされてたので貼っときます↓
CINEMAだいすき!OP(第7集 第1夜『アトミックカフェ』) 【←冒頭の高砂殿のCMに時代を感じますね】


③Close Your Eyes
 以前「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」特集の時にも取り上げたアルバム「デュエット」は、アンドレ・プレビン・トリオの伴奏でドリス・デイのヴォーカルが楽しめるジャジーな1枚。ピアノとのデュオでスローな曲を淡々と歌うトラックはハッキリ言って苦手だが、アルバム冒頭を飾るこの「クローズ・ユア・アイズ」はピアノ・トリオがスイング全開で彼女をサポート! いきなりレッド・ミッチェルのベースがドスドスと切り込んできて、そこにドリス・デイのヴォーカルが寄り添い、やがてブラッシュがスルスルと滑り込んでくるのを待ちかねたかのようにアンドレ・プレビンのピアノが演奏に絡んでいくイントロ部分がめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 絶妙なタイミングで楽器が一つずつ加わっていくこのスリリングな瞬間こそがジャズを聴く醍醐味だ。ただ、CDは左右泣き別れの不自然なステレオ・ミックスなので、このアルバムはモノラルのオリジナル盤で聴くことにしている。
Doris Day Photos, "Close Your Eyes"


④You're Good For Me
 この「ユアー・グッド・フォー・ミー」は上記のアルバム「デュエット」でのプレビン・トリオとの一連のセッションでレコーディングされたアウトテイクで、再発CDのボーナス・トラックの1曲として初めて陽の目を見たのだが、コレがもう何でアルバムに収録されなかったのか不思議なぐらいの逸品なのだ。多分スロー主体の他の曲とのバランスを考えてのことだろうが、奮然とスイングするプレビン・トリオをバックにドリス・デイのヴォーカルが冴えわたるスリリングな歌と演奏で、この路線でアルバム1枚まるごとやってくれていたらとんでもなく凄いことになっていただろう。とにかく彼女の事をノスタルジックなイージー・リスニング歌手と勘違いしている人はコレを聴いたら驚倒すること間違いなし(^.^)  「デュエット」のCDを買うなら12曲入りの正規盤よりもこの曲を含めた5曲のボートラを含むCollectablesレーベルの再発盤(2001年)の方が断然お買い得だ。
Doris Day sings You're Good For Me


⑤My Romance
 最近 YouTube でドリス・デイ関係の映像を色々漁っていて偶然見つけたのがコレ。彼女が私の大好きな「マイ・ロマンス」を歌っていたとは知らなんだ... shiotch7一世一代の不覚である(←そんな大袈裟な...)。調べてみると1962年に公開された「ビリー・ローズのジャンボ」というミュージカル映画にドリス・デイが出演していてそのサントラ盤の中に入っていたものらしいが、これがもう蕩けるような歌声で心に沁みる名唱なのだ。たかがサントラ盤と侮って無視していた自分の不明を恥じ、慌ててアマゾンで購入した次第。ジャンルを問わずもう新譜を聴く気はサラサラないが、古い音源の中にまだまだこういう新発見があるから音楽ファンはやめられませんな。
Doris Day and Stepehn Boyd - My Romance-Billy Rose's Jumbo Movie-1962