shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Control / Janet Jackson

2009-07-05 | Rock & Pops (80's)
 先週ロスのシュライン・オーディトリアムで開催されたB.E.T.(ブラック・エンターテイメント・テレビジョン)アウォード授賞式にジャネット・ジャクソンが登場し、涙をこらえながら兄の死について語る姿をYouTube で見た。この前アップした93年グラミー賞の映像の中でプレゼンターとして敬愛する兄と仲睦まじいところを見せていた彼女だけにその心中察するに余りある。
 彼女は82年に “ジャクソン・ファミリーの末っ子” としてレコード・デビューしたが、いかにも “お子様ランチ” なサウンドで、 “マイケル以外のジャクソンは全然アカンなぁ...” というのが正直な感想だった。そんな彼女が大変身を遂げたのが86年にリリースされたサード・アルバム「コントロール」である。
 アルバムからの先行シングルとしてカットされた③「ホワット・ハヴ・ユー・ダン・フォー・ミー・レイトリー」(全米第4位)はそれまでのふやけた音作りとは激しく一線を画す先鋭的なダンス・ナンバーで、私は初めてラジオでこの曲を聴いた時にそのあまりのカッコ良さ(後半部のうねりまくるピアノなんかもう最高!)にシビレまくったのを覚えている。それもそのはずでこのアルバムをプロデュースしているのはジミー・ジャム&テリー・ルイスというミネアポリス・ファンク・サウンドを得意とする二人だったのだ。元々プリンス直系のタイムというグループのメンバーだった彼らは “80年代のギャンブル&ハフ” と言われるほどのプロデューサー・チームで、当時のミュージック・シーンでは “ダンスフロア・ヒット製造工場” として機能していた。そんな彼らの音楽的志向がジャネットの求めていた方向性とピッタリ一致し、マジックが生まれたのだろう。しかしまだこの時点ではその後の大ブレイクは予想もできなかった。
 セカンド・シングル②「ナスティ」(全米第3位)も連続ヒット、プリンス・サウンドの “一番オイシイ部分” を巧く抽出してジャネットにふりかけ、彼らの専売特許といえる分厚いリズムで包み揚げて一丁上がりという感じのサウンド・プロダクションが斬新だった。 “私のファースト・ネームはベイビーなんかじゃないわ。ジャネットよ。ミス・ジャクソンと呼んでちょうだい!” と歌う彼女にはもはやかつての “ヤング・アイドル” の面影はカケラもなく、我々はジャクソン・ファミリーから2人目のスーパースターが誕生する瞬間を目の当たりにしようとしていた。
 サード・シングル⑥「ホエン・アイ・シンク・オブ・ユー」は前2曲よりもアップテンポで軽快なノリが大衆に受け、彼女初の全米№1に輝いた。楽曲としてはそれほどのものとは思えないが、やはり時代の流れが彼女を後押ししていたように思う。アルバムも既に№1になっており、 “ジャム&ルイス&ジャネット” というトリオの黄金時代の幕開けを予感させた。
 4枚目のシングルはアルバム・タイトル曲の①「コントロール」で、 “私がまだ17歳だった頃は周りに言われるままにやってきたけど、それはもう遠い昔のこと。これからは自分ですべてをコントロールしていくわ。” という歌詞に自我に目覚めた彼女の自信が見てとれる1曲だ。メロディーよりもリズムに重きが置かれたせいかチャート上の成績は5位止まりだったが、そのサウンドの弾けっぷりがめっちゃ気に入っていて、自分的には③と共にアルバム中で最も気に入っているナンバーだ。
 5枚目のシングル⑧「急がせないで」はウエストコーストAOR風味のスロー・バラッドで、これがまた全米2位という凄まじさ。この時期はもう “出せば売れる” 状態だった彼女だが、ダンス・ナンバー以外でもヒットを出せたというのはその後のことを考えると結構大きかったように思う。
 このレコードは全米で600万枚を超えるセールスを記録したモンスター・アルバムで、彼女にとっては売り上げとかチャート成績以上に、音楽面において自らのキャリアの転換点となった重要な1枚だ。

What Have You Done For Me Lately 'Live' by Janet Jackson & The Time



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