shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「スター・トレック: エンタープライズ」

2024-01-11 | TV, 映画, サントラ etc

 12月初めに届いた「スター・トレック: ピカード」を満喫してスタトレ熱に再び火がついた私は他のシリーズ作品ももう一度見直そうと考え、「スター・トレック: エンタープライズ」をチョイスした。“スタトレ黄金時代” を築いた3部作と言っても過言ではない「新スター・トレック」、「ディープ・スペース・ナイン」、「ヴォイジャー」はこれまで何十回と繰り返し見ているが、「エンタープライズ」はそこまで熱心に見てこなかったので、じっくり腰を据えて見直すのにちょうど良い機会だと思ったからだ。
 この「エンタープライズ」という作品はカークやスポックが出てくる初代スター・トレックの前の時代の宇宙探査を描いたSFドラマで、「ヴォイジャー」が終了して間もない 2001年9月から UPNネットワークで放送が始まったのだが、視聴率が低かったせいもあってわずか4シーズンで打ち切りになったといういわくつきのシリーズだ。日本でもCSのスーパーチャンネルで放送されていたのだが、熱心なトレッキーの私から見ても当時はあまり面白いとは思えなかった。
 ところがそれから10年ほど経ってからブルーレイが発売された時にアマゾンでめちゃくちゃ安く売っていたのを見て“面白かったという記憶はないけど、腐っても鯛やし、安ぅ買えるうちに買っとこ...” と思って全4シーズン分を一気買いして見始めたところ、思っていたほど悪くはない... いや、それどころか結構面白い。もちろん何じゃいこれは?と言いたくなるようなしょーもないエピソードもあるにはあるが、シリーズ全体を通して見た場合、十分に楽しめる内容だった。
 世間からの低評価の原因として考えられるのは、登場人物のキャラの掘り下げ方が甘く、視聴者が感情移入しにくかったからではないか。後で挙げるシュランとかソヴァル大使とか、サブキャラがめっちゃエエ味出しているのに対し、肝心のクルーの魅力が乏しいのだ。特にメイウェザーとホシの扱いが雑すぎて、それぞれのクルーのキャラが立っている他のシリーズに比べるとそのあたりに決定的な違いを感じてしまう。これは俳優さんと言うよりは明らかに脚本のせいだろう。
 9.11テロを受けて番組のコンセプトがスタトレ本来のヒューマン・ドラマ路線から大きく逸れてしまったというのもファン離れを引き起こした要因の一つだろう。特にシーズン3のハードボイルドな展開はスタトレらしさが希薄に感じられ、こんなん別にスター・トレックでやる意味ないやんと思えるエピソードが少なくなかったのも事実だ。
 更に後になってわかったことだが、当初はシーズン1でファースト・コンタクトからエンタープライズ号打ち上げまでの紆余曲折を地球を舞台に描く予定だったものを、UPNが脚本に口出しして “時間冷戦” などというワケのわからんテーマをゴリ押しした結果、最初の2シーズンを迷走し、棒に振ることになってしまったのが致命的。ド素人が口出しするとロクなことはないという見本だろう。
 「新スター・トレック」→「ディープ・スペース・ナイン」→「ヴォイジャー」とそれまで続いてきた3つのシリーズがどれも大傑作だったために期待値のハードルがめちゃくちゃ上がっていたのも運が悪かった。レコードで言えば、イーグルスの「The Long Run」やフリートウッド・マックの「Tusk」、エイジアの「Alpha」のように作品としての出来は決して悪くはないのに(←私はこの3枚どれも大好きです)それぞれ「Hotel California」「Rumours」「Asia」といった偉大なる前作のせいで物足りなく感じられ、駄作扱いされてしまうという非常に気の毒なパターンだ。
スター・トレック エンタープライズ

スター・トレック エンタープライズ シーズン2


 ネガティヴな要素ばかり書き連ねてしまったが、シーズン4からはリック・バーマン&ブラノン・ブラーガのコンビが製作から外されて、マニー・コトが新たに脚本を担当しだしてやっとスタトレ本来の精神に立ち返り、バルカンの内紛やロミュランの陰謀etcを扱った傑作エピソードを数多く生み出した。ちょうど「マンダロリアン」でスター・ウォーズを救ったジョン・ファヴローみたいなもんだろう。とにかくマニー・コトが担当したエピソードはめちゃくちゃ面白いし、他のシリーズとの整合性も上手く考えられているので超オススメ。時すでに遅しで「エンタープライズ」は道半ばにして打ち切りが決まってしまったが、シーズン4は観て損はない傑作エピソード揃いなので(←ただしリック・バーマン&ブラノン・ブラーガが復帰した最終話はゴミクソ...)、「エンタープライズ」ブルーレイをどれか1枚というなら迷うことなくシーズン4を推したい。
スター・トレック エンタープライズ シーズン3

スター・トレック エンタープライズ シーズン4


 「エンタープライズ」で私が一番気に入っているのはシュランというキャラの存在だ。このシュランは、昔アコムのTV CMに出ていた “ラララむじんくん” という頭から2本の触覚が生えた宇宙人にそっくりなアンドリア人という種族なのだが、宇宙人のくせに(?)まるで昔の東映任侠映画に出てくるような漢気(おとこぎ)を見せてアーチャー船長を救うところがグッとくる。“お前に助けられた借りを返さないと夜ぐっすり眠れない” とか言ってアーチャーと共闘するツンデレぶりがたまらないのだ。信頼できる筋の情報によると、もしもシーズン5が作られていたらこのシュランをレギュラーとして抜擢するというプランがあったらしいが、それも大いに納得できるくらい大きな存在感を放っている。因みにシュランが登場するエピソードは、7「汚された聖地」、15「恩讐を越えて」、41「戦場の絆」、65「アンドリア人の協力」、76「最終決戦」、85「バルカンの夜明け」、89「ロミュランの陰謀」、90「氷窟の民」、98「最後のフロンティア」なので、未見のトレッキーはぜひ一度ご覧あれ。
Captain Archer Helped To Mediate Peace Between Andorians and Vulcans