shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Queen Greatest Hits」各国盤特集② ~US系~

2022-02-04 | Queen
 「Queen Greatest Hits」の各国盤には前回取り上げた17曲入りのUK系グループの他にもう一つ、曲数は2~3曲少ないものの、最新ヒット曲「Under Pressure」を収録したUS系グループがある。具体的に言うとUS、カナダの14曲収録盤と、それに「Tie Your Mother Down」を加えた15曲入りのオーストラリア、ニュージーランド盤だ。今日はそんなUS系の4枚を取り上げよう。

⑤US盤(B-16142-A10-RE 5E-564-A-10-SH-AR-RE+ / 5E-564-B-RE-ED-SP)
 私はビートルズから各国盤蒐集を始めたのでこのブログでもUS盤の音を一部の例外を除いてボロクソにけなしてきたが、クイーンのUS盤は一味違う。それも “悪くない” どころか “めちゃくちゃ良い” のだからアナログは面白い。もちろんUK盤の音も悪くはないが、少なくともこの「Queen Greatest Hits」に関する限り、曲数が少なくて音溝に余裕があるせいなのか、それとも両面に入っているSTERLING刻印のなせるワザなのか、とにかくUS盤の方がUK盤よりも遥かに力強い音がするのだ。音圧で言ったら2割増しぐらいパワーアップしている感じだし、音のクリアネスに関してもUS盤の方が勝っている。今回聴き比べた「Queen Greatest Hits」の中でもトップ・クラスと言えるサウンドだ。
 それともう一つ興味深いのがUK盤との選曲の違いだ。UK盤から「Good Old-Fashioned Lover Boy」「Seven Seas Of Rhye」「Save Me」といったポップな曲を外して「Keep Yourself Alive」というイケイケのアッパー・チューンを入れているのは何となくわかる気がするが、「Don't Stop Me Now」や「Now I'm Here」みたいなアメリカ人受けしそうなノリノリの曲まで外されているのが謎だ。どこをどう聴いてもオープニング・ナンバーのイメージしかないB⑦「Play The Game」をアルバムのラストに持って来る感覚も私には理解できない。

⑥カナダ盤(X5E-564-A / B)
 カナダ盤はUS盤と曲目曲順が全く同じなのでてっきりUS盤と同一マザーだと思っていたが、今回の特集でマトをちゃんと確認するとUSともUKとも違う独自マトだった。音の傾向はUS盤と同じくダイナミックでクリアーなサウンドと言ってよく、高中低と全帯域にわたって非常にバランスの取れた音作りだ。敢えてUS盤との違いを挙げればカナダ盤の方がやや音の重心が低く感じられることで、A③「Crazy Little Thing Called Love」なんかはスピード感重視のUS盤に対し、重厚感溢れるカナダ盤といった対比が楽しめる。私的にはUS、カナダそれぞれに良さがあって甲乙付け難いというのが正直なところだ。

⑦オーストラリア盤(♀ MX199181 5E564-1 / ♀ MX199182 5E564-2)
 オーストラリアとニュージーランドという2枚のオセアニア盤に共通する特徴はUS・カナダ盤でA面ラストに置かれていた「Under Pressure」がアルバムの締めくくりであるB面ラストにまわされ、その代わりに他のどの国の盤にも入っていない「Tie Your Mother Down」がAラスに入っていることだ。「A Day At The Races」からの1stシングルであるこの曲はブライアンが大暴れするゴリゴリの疾走系ハードロック・ナンバーで、私はこの曲が大好きなのでこの選曲はめちゃくちゃ嬉しいし、B面ラストに「Play The Game」ではなく「Under Presuure」が来るというのもアルバム全体として据わりが良い。US系のクリアー&ダイナミックなサウンドも素晴らしく、OZ盤は完全無欠... と言いたいところだが、どういうワケか「Tie Your Mother Down」がシングル・ヴァージョンではなくアルバム「A Day At The Races」のオープニングを飾る大仰なイントロ付きのアルバム・ヴァージョンが収録されており、A⑤「Fat-Bottomed Girls」→A⑥「Bicycle Race」と続いたアルバム全体の流れを分断してしまっているのが惜しい。

⑧ニュージーランド盤(5E 564 A / B)
 私にはオーストラリアとニュージーランドってほとんど兄弟国というイメージがあって、どうせOZ盤とNZ盤の中身も同じだろうと思っていたのだが、念のためにデッドワックスを見てみると全く違う独自マトでまずビックリ。アメリカとカナダの場合もそうだったが、これだから各国盤は面白い。実際に聴いてみるとこのNZ盤は他のどの国の盤よりも倍音がよく出ており、伸びやかで奥行きを感じさせるそのサウンドはクイーンお得意のコーラスワークと相まってまるで万華鏡のようなめくるめくクイーン・ワールドを出来させる。乱暴に言うとロック系の曲ならUS、ポップ系の曲ならNZの音が合うという感じだ。
 それと例の「Tie Your Mother Down」だが、OZ盤では場違いなアルバム・ヴァージョンが採用されていたのに対し、このNZ盤ではちゃーんとシングル・ヴァージョンが収録されているのにビックリ。これをさすがはNZと褒めるべきか、それともただ単にOZがアホなだけと切って捨てればいいのかはわからないが、とにかくこの一点だけをとってもOZ vs NZ対決はNZ盤の勝ちと言っていいと思う。
Queen - Tie Your Mother Down (Official Video)