shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

新春音壁祭り①

2020-01-19 | Wall Of Sound
 今年のお正月休みはひたすらレコード洗浄に明け暮れてピッカピカになった盤を聴きまくり、“おぉ、このレコードこんなにエエ音しとったんか...” と再発見した盤も少なくなかったが、そんな中でも特にインパクトが大きかったのがフィレス・レコード、つまりフィル・スペクターが60年代初めに設立した自主レーベルからリリースされたロネッツやクリスタルズのレコードだった。
 フィレス・レコードと言えば何年か前にコンプリートCDボックスが出ており、音壁マニアの私はもちろん速攻で買ったのだが、残念なことに音が薄っぺらくてガッカリ。眼前に分厚い音壁が屹立せずして何のフィル・スペクターか! 私はCDのヘタレな音を聴いて “やっぱりウォール・オブ・サウンドはオリジナル盤に限るわ...” と痛感させられたのだった。
 フィレスのレコードは1stプレスが薄い青色のセンター・レーベルで、2ndプレスになるとレーベルの色が黄色に変わるのだが、この薄青1stプレスというのは非常に数が少なく、良い状態の盤を手に入れようとするとウン万円の出費を覚悟しなくてはならない。フィレス・レーベルから出ているレコードはクリスタルズ3枚、ロネッツ1枚、ボブBソックス&ザ・ブルージーンズ1枚、それら所属アーティストたちの寄せ集めコンピ盤2枚の計7枚。貧乏コレクターの私が持っている薄青1stプレスはクリスタルズのベストとロネッツの2枚だけで、それにコンピ盤2枚の黄2ndプレスを併せた計4枚でフィル・スペクターのリアル・ウォール・オブ・サウンドを楽しんできたが、 “7枚全部を薄青1stプレスで揃えたいなぁ...” という野望(?)は常に頭から離れなかった。
 今回の “手持ち盤一斉洗浄” で久々にこれらのフィレス盤を聴いて、チリノイズのほぼ無くなった音壁に改めて感銘を受け、禁断の “フィレス熱” が再燃。試しにDiscogsを覗いてみたところ、そこでとんでもない盤を発見した。盤は「A Christmas Gift For You」という例のクリスマス・コンピ盤なのだが、何とその薄青1stプレスの、しかもあろうことかMint(←未使用のこと)状態の盤が$150で出ていたのだ!
 先ほども書いたように私はこのレコードの黄2ndプレス盤を既に持っており、VG+状態だったものを徹底洗浄してNM状態で聴けるようになったばかりだったこともあって一瞬どうしようかとためらったのだが、“MINT ORIGINAL 1963 MONO PRESSING. BLUE LABEL. UNPLAYED DEADSTOCK. Crisp and Bright Cover no wear other than crease to top right corner. Warehouse find...ARCHIVAL Condition..total time machine deal.”(1963年に出た青レーベル・モノ盤の未使用デッドストック。倉庫で発見した“記録保存用”コンディションで、まるでタイムマシンを手に入れるような超お買い得品です。)という商品説明を読んで、理性が木っ端微塵に吹き飛んだ。なるほど、time machine dealとは実に上手い表現だ。それにコレを逃せばフィレスの1stプレスをMint状態で手に入れるチャンスなんて二度と巡ってこないだろう。そう考えた瞬間、私はこのレコードをカートに入れていた。
 更に“倉庫で発見ちゅーことはひょっとして他にもあるんちゃうやろか...” という予感が頭をよぎり、そのセラーの他の出品物を検索してみたところ、私が睨んだ通りコンピ盤「Today's Hits」の薄青Mint盤も売りに出ており、クリスマス盤と同じく “倉庫で発見したデッドストック” と書いてある。この盤はこれまで黄レーベル盤しか見たことがなく、薄青レーベルなんて夢のまた夢という認識だったのだが、そのMint盤が$190で手に入るとなればそんな千載一遇のチャンスを逃す手はない。私は他の誰かに先を越される前に買わねばと大慌てでこの盤もカートに入れ、2枚まとめて速攻オーダーした。
 でっかいパッケージが届いたのはそれから1週間たったクリスマスの日で(←これホント!)梱包を解いておそるおそるレコードを取り出すと、ジャケットも盤もピッカピカ(^o^)丿 う~ん、これは確かにタイムマシン・ディールである。私は1年の最後の最後になってとんでもないお宝を2枚も手に入れることができたことをレコードの神様に感謝した。
 そしていよいよ筆おろしならぬ “針おろし” である。カートリッジを買い替えといてホンマによかったわぁ... と胸をなでおろしながらまずはクリスマス盤に針を落とす。ほぼ無音状態からいきなり濃厚一発官能二発という感じのウォール・オブ・サウンドが眼前にドドーン!と現れ、生々しいダーレン・ラヴのヴォーカルが炸裂。これは凄い... いや凄すぎる!!! 確かに黄レーベル盤の音もめちゃくちゃ良かったが、この薄青レーベル・ミント盤の音はそれすらも凌駕する巨大な音壁を目の前に打ち立てたのだ。これが “音の鮮度” というやつか... そう、例の「Please Please Me」1G盤で体験したアレと同じだ。AB両面併せて35分間がアッという間に過ぎ去っていく。続いてかけた「Today's Hits」でもクリスマス盤同様の鮮烈なウォール・オブ・サウンドを堪能し、私にとっては最高のクリスマスになった。
 アメリカ音楽の聖地メンフィスの倉庫の片隅で埃をかぶっていた2枚のレコードが、遥か離れたこの日本の奈良という地で長~い眠りから覚め、フィル・スペクターが56年前に音溝に刻み込んだウォール・オブ・サウンドを見事に再現する... そこに何か不思議な縁のようなものを感じるし、これこそまさにレコード・コレクションの醍醐味やなぁ... などと感慨に耽りながら音壁三昧している今日この頃だ。
Various Artists - A Christmas Gift for you from... - Full Album