shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

音壁Japan (Pt. 1)

2012-06-10 | Wall Of Sound
 デフレパ祭りも宴たけなわ(?)だった先週のこと、当ブログ最高顧問のみながわさんからいただいたコメントでこの「音壁Japan」というCDの存在を知った。これまでも “さすらいのギター特集” や “キャロル・キング特集” のきっかけを作って下さり、イエイエや昭和歌謡の祭りでも色々と貴重な情報を下さったのだが、今回はフィル・スペクター関連である。ビートルズやキャンディーズ、ドリス・デイも含め、ホンマに趣味かぶりますな(^.^)
 このCDに関して “内容はタイトルから想像出来る通りのものです” と書かれていたが、それにしても凄いタイトルだ。オトカベ = Wall Of Sound って、そのまんまやん(笑) しかもその後にジャパンを付けて読むと、まるでX-JAPAN かサッカーの日本代表(←私はトルシエ・ジャパンしか知らんけど...)みたいな響きで何とも語呂が良い。
 ジャケットがこれまた面白く、白い壁をバックに「音壁Japan」という文字そのものを図案化したかのようなそのデザインは、ブルーノート・レーベルにおけるリード・マイルスの一連の作品に通じるものがあり、右上へ向かって歪曲させたタイトル文字はリー・モーガンの「ザ・ランプローラー」を思い起こさせる。収録アーティスト名の配置も何となくジャズのコンピ盤っぽい。
 内容の方はみながわさんが仰っているようにフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドの影響を強く受けた邦楽ソングを集めたコンピ盤で、どこを切ってもカスタネットが鳴り響き、深いエコーのかかったドラムスが轟きわたるという、スペクター・ファンにはたまらない1枚だ。どの曲も判で押したように「ビー・マイ・ベイビー」のクローンみたいなイントロで始まるというのが実に面白い(^o^)丿
 数多い音壁ソングの1曲目を飾るのは本CDの目玉と言うべきシリア・ポールの①「夢で逢えたら」だ。私にとってシリア・ポールと言えば中学生の頃、毎週土曜の午後にFMでやっていた「ポップス・ベストテン」という番組のDJのおねーさんという印象が強く、このレコードがリリースされた1977年当時はまさか彼女が歌も歌っているなんて夢にも思わなかった。彼女がこの曲を歌っていると知ったのは数年前だが(←遅い!!!)、彼女がモコ・ビーバー・オリーブのオリーブだとは今の今まで知らなかった(←恥)。因みにこのCDのラストにはモコ・ビーバー・オリーブの⑰「わすれたいのに」が入っており、曲の配置までしっかりと考え抜かれてるなぁという感じである。
 プロデュースはもちろん日本におけるウォール・オブ・サウンド実践の第一人者、大瀧詠一氏。親の仇でもとるかのような勢いで打ち鳴らされるカスタネット連打といい、音壁にはなくてはならない深~いエコーのかかったドラム・サウンドといい、大瀧氏を始めとする製作スタッフはさぞや楽しかったろうなぁ... と思わせる逸品だ。そんな分厚い音壁の中でフワフワと浮遊する彼女のヘタウマ彷徨ヴォーカルがこれまた絶品で、聴き手を夢見心地へと誘う絵に描いたような胸キュンポップスに仕上がっている。
 彼女のこのシングルはそんなに売れなかったようだが、その後女性シンガーを中心に数多くのアーティスト達にカヴァーされており、まさに “記録” よりも “記憶” に残る名曲の典型と言えるだろう。尚、このコンピ盤に入っているのはアルバムとはミックスが違うシングル・ヴァージョンの方を「音壁」用にリマスターしたものだ。
夢で逢えたら ~ シリア・ポール.wmv


 私は松田聖子という歌手が大の苦手。あの声と歌い方がどうしてもダメなのだ。まぁルックスが全然好みでないことも大きいけれど...(笑) ただこの②「一千一秒物語」は曲自体の良さとスペクター流のストリングス・アレンジのおかげでストレスなく聴けてしまうところがある意味凄い。
 佐野元春の③「SOMEDAY」の元ネタはブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」だが(←間奏のサックス・ソロなんかモロにクラレンス・クレモンズしてます...笑)、フィル・スペクターを超リスペクトしているスプリングスティーンの作品中でもとりわけスペクター色の強い曲を模しただけあって、孫コピー(?)にあたるこの曲でも正調ウォール・オブ・サウンドが楽しめる。まぁ音壁云々を抜きにしても、この人の説得力溢れる歌声にはついつい引き込まれてしまうのだが。
 この「音壁Japan」で初めて聴いた曲の中で断トツに気に入ったのが須藤薫という女性シンガーの④「つのる想い」だ。この人のことは名前すら知らなかったが中々雰囲気のある歌い方で、その伸びやかな歌声は小西康陽一派が作り上げたコテコテのウォール・オブ・サウンドに見事に溶け込んでいる。それにしてもこのイントロ、もう笑うしかおまへんな(^.^) 3分32秒から炸裂する“ウォウ ウォウ ウォウ~♪” はヴェロニカへのオマージュか???
つのる想い  須藤薫


 ミポリンの⑤「世界中の誰よりきっと」が大ヒットした1992年当時、私は邦楽を全くと言っていいほど聴いていなかったが、この曲だけはテレビか何かで耳にしてそのあまりの素晴らしさに感激し、速攻でCDシングルを買いに走った覚えがある。「ビー・マイ・ベイビー」そのまんまの “ドン・ド・ドン♪” というドラムから始まり、カスタネットが鳴り響くというイントロは音壁アイドル・ポップスのお約束だが、この曲のキモは何と言っても3分間ポップスの王道を行くようなそのキャッチーなメロディー展開に尽きるだろう。中でもサビのハモリ・パートが好きで好きでたまらない。私にとっては90年代邦楽ポップスの中でも三指に入る大名曲だ。それにしてもミポリンってホンマに美人やなぁ... (つづく)
中山美穗 Miho Nakayama 世界中の誰よりきっと
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